韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は27日,軍事境界線のある板門店の韓国側施設「平和の家」で,「完全な非核化」を通じて「核のない朝鮮半島を実現する共同の目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名した。
 両首脳は,年内に朝鮮戦争(1950~53年)の終戦を宣言し,現在の休戦協定を平和協定に転換するため,協定当事国の米中などを交えた会談を推進することで合意。南北共同連絡事務所を北朝鮮の開城に設置することも決定。文大統領が今年秋に平壌を訪問することや,5月以降,軍事境界線周辺の非武装地帯での敵対行為を禁止し,緊張緩和を図ることで一致した。
 南北首脳の初対面にはサプライズがあった。金委員長が軍事境界線で出迎えた文氏と握手を交わし,徒歩で境界線を越え,北朝鮮指導者として初めて韓国側に入り,その直後,金委員長に誘われる形で,文氏も短時間,軍事境界線の北朝鮮側に足を踏み入れたのだ。この一歩により、金委員長の国際社会での評価が大きく変わったように思える。
 安倍晋三首相は22日,北朝鮮による拉致被害者家族会に出席し,「南北,そして米朝首脳会談の際に,拉致問題が前進するよう私が司令塔となって全力で取り組んでいく」などと決意を述べ,文氏が南北会談で拉致問題を取り上げることに自信を持っていた様子であったが,北朝鮮による日本人拉致問題への言及はなく,肩透かしにあった格好になってしまった。
 拉致家族問題に関しては,米のトランプ大統領も重大な関心を持っているが,北朝鮮との平和的な会談を求める国際社会の流れの中で,実利主義のトランプ大統領が米朝会談でどこまで拉致問題に踏み込んで話し合いを行うのか不確定要因がある。拉致問題は自国の問題として,日朝会談を実現させ,安倍首相が直接,金委員長と会談する中で当事者として要請することが望ましい状況になってきてるが,北朝鮮ペースの今の外交の動きに日本が入っていけないのが現状のように思われる。蚊帳の外の国に司令塔は難しいのではないか。