安倍首相の戦後70年談話が世界から注目されたのは、日本が経済的にも軍事的にも無視できない大国になった証拠だ。それにしても、70年談話が必要だったのか。疑問を抱く人も少なくない。

70年談話は必要だったのか
  著者の私見だが、,最も積極的だったのは安倍首相だ。理由は20年前に当時の首相が発表した戦後50年の「村山談話」を糺そうとしていた。中国に平身低頭したと言われた村山談話を修正すべきだと考えたからではないか。しかし、それを察知した中国の反対もあり、外交上の配慮から、それは果たせなかったようだ。

異例の長文
  安倍首相が談話を読み上げた時間は25分、字数は3400字、村山談話や小泉首相の戦後60年談話に比べ3倍近い長文だ。2月から首相の私的有識者懇談会で練り上げた報告書がたたき台となっているが、「タカ派からハト派まで納得させる」内容を盛り込んだので長くなったそうだ。

間接的表現
  中国が求めた村山談話の核になる「侵略」、「植民地支配」、「反省」と「お詫び」の文言については、「わが国は、これまで繰返しその気持ちを表現してきた。こうした歴代内閣の立場は今な後も揺るぎないものであります」と安部首相自身の発言ではなく、歴代内閣の立場を継承する形になっている。
  また韓国が求める慰安婦問題についても、「戦場の陰には名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことを忘れてはならない」としているが、慰安婦と言う表現を避けている。

「意外に融和的」ワシントン・ポスト
  海外のメディアが一斉に取り上げているが、アメリカの有力紙ワシントン・ポストが社説で好意的な取り上げ方をしている。「安倍首相を批判する人たちが考えていたよりもはるかに融和的な内容で、国粋主義的な要素も少なかった」と指摘。「近隣諸国から上がっている懸念に対して、『苦難の歴史を胸に刻む』、『未来へと語り継いで行かねばならない』と述べて歴史認識を変えるつもりはないことを保証した」として、談話を評価する論調になっている。

「右派の納得を」フランクフルター
  これがアメリカのニューヨーク・タイムス紙になると、「安倍氏自身の新たな謝罪を示さなかった」と批判している。英国のフィナンシャル・タイムス紙は「永遠に謝罪を続けるつもりはないことを支持基盤である右派に暗示した」と鋭く切り込んでいる。またドイツのフランクフルター・アルマイネ紙は「様々なキーワードを使ったが、一方でナショナリストにも納得させようとした」としている。全般的に安倍首相の「お詫び」に慎重な姿勢を指摘した論調が目立った。

3大紙が対立、「旧体制の名誉回復」朝日
  国内のメディアも、日本を代表する朝日、讀賣、毎日の三大紙の論評は大きく分かれた。これまでも反安倍的な朝日は、「安倍首相相の談話を出した動機は歴史を自分の味方にするいためだ」と決めつける。過去の日本の侵略戦争は「アジア解放が目的だったとは言い難いが、それに挑戦したかったのだろう」という。だから、「侵略」、「植民地支配」や「お詫び」の「表現が間接的になる。「あえて談話を出すのは歴史から教訓を受け取るより、歴史認識を変えたいという考えがあるからだ。旧体制を少しずつ名誉回復する姿勢だ」と談話から安倍氏の歴史観に立ち入った評論である。

「村山談話をオブラート」毎日
  毎日も同じく反安倍的論調だが、「歴史認識や和解への意欲は必ずしも十分ではない。村山談話をオブラートで包んだような表現になっている。支持基盤である右派勢力に配慮しつつ米国や中国などの批判を招かないようにしたためだ。結果として誰に向けて、何を目指したのか。不明確になった」としている。

「謝罪の歴史に区切り」讀賣 
  二紙に対して、かねて親安倍的な読売は、がらっと論調が変わる。20年前に「侵略」と「反省」を明記した戦後50年の国会決議に当時1年生議員の安倍氏を含む多数の自民党議員が「賛成できない」と採決を欠席したことを紹介。「自民党でも保守的とされる安倍氏が村山談話と同じ表現を用いた意義は大きい」とした。安倍氏が談話で最も強調したことは「先の世代の子どもに謝罪を続ける宿命を背負わせないことだ」と高く評価。「安倍談話で謝罪の歴史に区切りをつけなければならない」としている。

野党は懐疑的
  各党も予想外の談話に戸惑ったようだ。民主党の岡田代表は、「今までの政治家安倍晋三の歴史観とは明らかに異なる。大きく考え方を変えたのか」と意外な内容に懐疑的だ。他の野党も一様に疑心暗鬼だが、与党の公明党は大心配していただけに、山口代表は「安倍首相の強い責任感が表れている」と安堵の表情を隠せないようだ。

米は歓迎、中韓は控えめな批判
  各国政府は、アメリカは過去の談話の継承を歓迎しているが、中国と韓国の反応を気にしているようだ。中国は外務省が14日深夜に木寺駐中国大使を呼んで、「戦争責任の明確な説明と誠意ある謝罪」を求めたが、日中関係に影響を与えないように「強烈な不満」など強い批判は避けたようだと言われている。
  韓国も朴大統領が「残念な部分が少なくない」と、折から「光復節」の演説で述べているが、「歴代内閣の立場は揺るぎない」としたことに「注目する」とも述べている。両国とも安倍談話の間接的表現には批判的だが、「関係を壊す程でもない」と困惑したようだ。

  それにしても、穿った見方をすれば朝日新聞の評論のようになる。安倍談話がどのように評価されるかわは、その国の事情にもよるのではないか。