北朝鮮は,新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」(推定射程約2500~4000キロ)を「発射待機状態」と周辺諸国を威嚇して,朝鮮中央通信や機関紙を介して「無慈悲な核攻撃で応える」など相変わらず揺さぶり続け,国際社会の注目を集めている。
北朝鮮は15日,金日成主席の誕生日「太陽節」を迎えた。国内ではスポーツ,文化など多彩な行事が展開され,祝賀ムードに包まれている。和やかな雰囲気とは対照的に,外に向けてはムスダンを「発射待機状態」とし,威嚇姿勢を緩める気配はない。
これに対処として,ケリー米国務長官が12日からアジア歴訪を始め,韓国の朴槿恵(パククネ)大統領を皮切りに,翌13日には中国の習近平国家主席,さらに日本の岸田文雄外相と矢継ぎ早に会談した。
来日中のケリー国務長官は15日,アジア初歴訪の締めくくりとして,都内の東京工業大学で演説し,北に対して「非核化への真剣な交渉を行う用意がある」と訴えた上で,国際的義務の履行に向けて意味のある行動を取るよう忠告。北への対応で米国と日中韓は「一致している」と北を改めて牽制した。
北朝鮮情勢に詳しい研究者は「北としてはケリー国務長官がアジアを歴訪している最中にミサイルを撃つと緊張を想定以上に高める可能性がある。とりあえず様子見しているのだろう」と分析している。
発射濃厚とされた10日からすでに5日が過ぎた。撃ちそうで撃たないのはなぜか。
「ミサイルを道具に国内の反乱軍をあぶり出し,粛清するのが金正恩氏の狙い」との観測も流れている。
また,「そもそもミサイルでの威嚇は,政権基盤を固めるための造反者あぶり出し工作だった可能性がある」「対外的な緊張感が高まれば,米韓との全面戦争を回避するため,金正恩氏を退けるクーデターの発生も予想される。クーデターは中国の力をバックに企てられる公算が大きい。外部と呼応する勢力をあぶり出すため,あえて日米韓を相手に強硬な姿勢をみせていたとも考えられる」との分析もある。
反乱の芽を未然に摘み取るのは,正恩氏の父や祖父も得意だった。
金日成主席の存命中,デマの死亡情報で動き出した勢力が粛清されたことがあった。金正日総書記は平壌からわざと長期間離れ,反対勢力の動きを見極めていた。独裁国家がよく使う手段で,体制維持には定期的に行う必要がある。
若い正恩氏の場合,死亡説は現実的ではないし,平壌を長く不在にすると収拾不能なクーデターに発展する危険もある。そこで,今,正恩氏が反乱分子をあぶり出すには,対外的な緊張感を高めるしか手段がないのではないか。
現在までのところ,実際に粛清が成功したかどうかは不明だが,正恩氏の第1書記就任1年を祝う会で,金永南(ヨンナム)最高人民会議常任委員長は「東北アジアの力関係を変えた」と,正恩氏の功績を過去形で表現した。これはすでに結果を出したという意味である。
すなわち,もはやこれ以上の成果は必要なく,ミサイルも発射しないというサインだとも読み取れる。
もっとも,25日の朝鮮人民軍創建記念日に国威発揚を期して発射するとの見方があるほか,1998年の「テポドン1号」発射では事前に何の通告もなく行われ,国際社会を驚かせている。
緊張は当分解けそうにない。