<圧勝の野田官邸は太平楽>

26日投票の自民党総裁選は、形勢がほぼ固まった。町村信孝元官房長官の緊急入院のハプニングが起きたものの、候補者5人のレースで石原伸晃幹事長、石破茂元政調会長、安倍晋三元首相の上位3人の争いに異変はない。5日間を残す選挙戦だが、安倍優位の情勢が形成されつつある。

総裁選規定で、地方票と国会議員票を含めた第一回投票で過半数を獲得する者が出なかった場合は、国会議員による決選投票で決着がつけられる。現時点の党内情勢を総合すると第1回投票は石破、安倍、石原の順。決選投票(国会議員票 20日時点で谷畑孝衆院議員が離党―日本維新の会参加表明のため198)で安倍170前後、石破130弱で決着がつきそうな雲行きだ。

安倍が当選すれば、自民党では初めての総裁経験者の返り咲き。次の総選挙で自民党が第一党に復帰した場合、吉田茂以来、戦後初の首相経験者の首相復帰となる可能性が濃厚になった。

自民党内における安倍待望論は、ひとえに総裁候補者の政治的力量が未知数で非力なことが理由だろう。安倍復活への期待感よりは、他の候補4人が信頼性にかけることから、「この際、5人のなかでは総裁総理を一度経験している安倍を選んでおいたほうが無難」という判断が大きい。国会議員票で安倍圧勝の勢いだが、積極支持票は多くない。他方、古屋圭司、衛藤晟一ら安倍「親衛隊」は改憲タカ派急進派ともいうべきスタンスで政治的な幅に欠ける。菅義偉、中川秀直らベテラン組が控えるが、経済政策はともかく政治路線はかならずしも安倍とピタリと重ならない。安倍陣営の「隠し球」とされる存在が小泉進次郎衆院議員で、背後に父・純一郎元首相の指南があると指摘される。いまだに小泉人気にすがる安倍陣営にこころもとなさを感じるという党内の受け止めもある。

野田官邸は、安倍当確の流れに複雑な思いだ。官邸内には安倍晋三を嫌う空気が強い。ただ、「石破も細かいし大局観がない」「石原伸晃はおやじバカだ」と酷評もあり、安倍の登場を覚悟している。安倍自民党に対抗するための秘策として「首相が谷垣禎一現総裁を一本釣りして、副総理兼財務相を要請したらどうか」といったアイデアが浮かんでいる。そのこころは「野田総理―谷垣副総理なら、安倍晋三総裁の自民党に選挙で勝てるかも知れない」というのである。

一触即発の尖閣、竹島をめぐる中韓両国との領土問題、オスプレイ配備運用開始など緊張する内外課題に緊張した対応が求められてれいるにもかかわらず、いかにも軽い政局話が口の端に乗る野田官邸内の浮薄さこそ、政治の危機そのものといえる。