1960年安保闘争以来の最大規模に膨れ上がる反原発再稼働のうねり
消費増税法案では小沢・鳩山、原発再稼働では民衆、2つの反乱に揺れる野田政権
静かに広がる「紫陽花革命」?!
◆29日夕6時から夜8時までの間、首相官邸前から霞が関に通じる道路(通称国会通り)は人の波に埋まった。関西電力大飯原発3,4号機の再稼働決定の撤回を野田佳彦首相に求めるデモである。午後6時過ぎから車道に人があふれだし、7時半前後には首相官邸前から財務省に続く道路800メートルは押し寄せる人で路面が見えなくなった。機動隊の装甲バスが二重の車列で防壁をつくって、首相官邸を守備した。再稼働に反対する市民グループ「首都反原発連合」が6月初めからツイッターなどでITをつかって呼びかけている金曜・官邸前デモだが、この日は過去最大だった前週22日の4万人(主催者発表)に比べ、3倍を超える規模に膨れ上がった。前週は官邸内にいた野田首相は「(デモの)声はよく聞こえていました」と感想を漏らしていたが、同夜は、ゆっくり眠れただろうか。
12階建ての衆議院第一議員会館の階上から様子を取材していた若い報道関係者は「写真でしか見たことはないですが、60年安保って、こんな風だったんですかね。生まれてから、こんな光景を目にしたことがなかった。強烈っすね」と驚愕の声を発していた。1960年の日米安保条約改定反対闘争は現在73歳前後の人が学生時代で、労働組合、学生団体、市民団体のデモが連日、国会を取り巻いた。最大高揚期は条約批准案件が国会で自然成立をする前の同年5、6月のことだった。
同じ紫陽花の季節、52年の時空を超えて、2012年6月29日夜、国会南通用門前――。「総評」「労組」「全学連」の旗に変わって、思い思いのカラフルなプラカードやのぼり、小旗が薄暮の空間に彩りをそえる。
8時過ぎ、デモに加わっていた再稼働消極派の民主党議員が紅潮した表情で議員会館の自室に戻ってきた。「すごい人の集まりだ。野田総理は、いつまで持つだろうか。日本もいよいよ『紫陽花(あじさあい)革命』の号砲が鳴ったか」。息をはずませていた。
瑣末な処分話に拘泥する首相
◆一夜明けた30日昼、野田首相は帝国ホテルにいた。読売国際経済懇話会で講演のマイクに向かいあった。「同じ党にあって消費税上げざるを得ないと国民を説得しようと頑張っている人がいる、隣(の選挙区)には同じ党なのに私は反対だと言っている人がいる、おかしいじゃないですか」と、民主党内で消費税増税法案に反対・棄権した議員にたいする強い姿勢を表明した。週明け早々の民主党役員会で処分問題を発議するとも言いきった。原発再稼働決定と同様に、強気の姿勢で正面突破をはかる構えの野田首相である。
10万人を超える「安保改定阻止」の声の嵐の中で、私は、「国民のなかの声なき声を信じている」と条約批准の自然成立まで強硬路線で突き走ったのは1960年6月当時の岸信介首相であった。岸首相は、しかし、安保改定批准成立後、間をおかずに辞任表明した。
野田首相が政治生命をかけると言いつのる消費税増税という政策課題は、岸首相のそれに比べると、所詮は税率を上げるか下げるかという、いかにも政治生命をかけるには矮小なテーマであるが、野田首相は、消費増税と原発再稼働を思惑通りにレールに乗せられるのか。首尾よくレールにのせた場合は岸首相の先例にならって、潔く退陣表明へ向かうのだろうか。野田首相が党内反対派の処分云々など言及するのは瑣末な話だ。
15万人のうねる世論の前に、あまりに小さく見える野田首相の存在である。