「瓦礫処理」改造
◆「今回の内閣改造は、閣内の問責閣僚2人、問責予備閣僚2人を更迭する瓦礫処理が第一の目的。瓦礫処理で整地したところに、土俵つくりのため俵(たわら)を埋め込んだのが自民党の防衛問題ブレーンである森本敏拓殖大大学院教授の防衛相起用だ。社会保障税一体改革(消費税増税)の修正協議と言う土俵の上に自民党にのってもらうためだ。ひとえに自民党による、自民党のための、内閣改造だ」。民主党中堅議員は吐き捨てるように語る。民主党内では、解散総選挙の見通しについて、「今夏の暴発解散2割、来年夏の任期満了8割の可能性」が、今回の内閣改造で「真夏の暴発解散3割、任期満了7割」へ、暴発解散の可能性が高まったとの見方も聞かれる。
裏返せば、野田佳彦首相は内閣階改造を通して、政権の先行きについて選択の幅を狭めたということができる。閣僚の任免権を握る首相が閣僚を一部ないし大半を入れ替える内閣改造を断行する狙いは、首相主導による政権浮揚に最大の狙いがある。今回の野田首相にとっても、同様なはずであった。内閣改造で政権基盤を弱めるのであったら、なんのための内閣改造だったかということになる。小泉政権後の安倍、福田両政権では内閣改造後、ひと月前後で、政権が幕を下ろす例がある。内閣改造が政権生命を縮めるケースが目を引く。野田首相にとって政権9ヵ月で2度目の内閣改造である。野田第2次改造内閣は安倍、福田の先例に倣(なら)う可能性が濃いとの指摘が永田町では少なくない。
一点突破の危さ
◆野田首相は、4日夜の第2次改造内閣の初閣議で、この内閣の「基本方針」を示した。12項目の基本方針は概ね今年1月13日の第一次改造内閣発足時に示した内容を踏襲しているが、第1項目には筆を加えている。前内閣の基本方針がかかげた「政権交代の意義を実感してもらえるよう、国民目線に立った政治の実現に『正心誠意』まい進する」に続けて「また、先送りできない課題に対し決断していくことを通じ、政治に対する国民の信頼確保を図る」と書き込んだ。消費税増税法案の成立を期す野田首相の「不退転の決意」を盛り込んだのだ。つまり、今回の内閣改造を通じて、野田政権は消費税増税一本やりのシングル・イシュー(単一政策実行)政権へ完全に移行した。消費税増税へ向けた「特攻隊」態勢を組んだということだろう。
想起されるのは小泉純一郎政権の「郵政選挙」である。「郵政民営化是か、非か」の二者択一を国会と有権者に迫って、解散総選挙へ打って出て、刺客騒動という荒療治を展開しながら、小泉首相は与党を大勝に導いた。野田首相は、自身の「消費税増税」へ向ける「闘志」を、7年前の「故事」に重ねて、その実現を夢見ているのかもしれない。歴史は繰り返すという言葉が当てはまる場合もあるが、「歴史は繰り返す、1度目は悲劇、2度目は喜劇として」の言葉もある。賭けごとでは「1点張り」は、儲けは多いが、外れた場合の損も、それ以上に大きい。政治に一点張り、一点突破ほど危険なことはない。
民意との乖離
◆内閣改造に先立って前日3日、野田首相は小沢一郎民主党元代表との2度の会談に臨んだ。会談を終えた野田首相は内閣改造の断行を宣言するとともに、反対の態度を変えなかった小沢氏への対応を聞かれ「党の方針として一体改革法案を出した。党の方針として、いろんな方のご意見を踏まえてまとめてきたものだ。小沢先生のご意向を踏まえてということはあり得ません。できるだけ野党の皆さまにご理解いただくように努力するのが基本です」と言いきっている。時間をかけた民主党の党議決定を踏まえた消費税増税法案だという立場を強調した。
野田首相のこの決意が、「基本方針」の第一項目に書き加えられたというわけだ。
だが、野田首相の論理にはすり替えがある、と指摘するのは元細川首相特別補佐の田中秀征氏である。「野田さんのやり方は『自民党は民主党より正しかった』と言っているようなものだ。総選挙で民主党に投票した人は、身の置き所がないだろう」「この分だと、民主党は自民党から次々と条件をつけられるに違いない。自民党の社会保障政策までのまされたら、マニフェストの根幹に触れるだけに、政権交代の意義が失われ、世論はいよいよ失望するだろう」「問題は、野田さんにそうした世論が見えていない点だ。増税を悲願とする財務省に引きずられ、首相が世論から乖離してしまっている」(以上、朝日5日付)。非自民党の立場が鮮明な田中氏の立場を割り引いても、2009年総選挙で非自民票を獲得して政権を得た民主党政権の本質を踏まえれば、その指摘は正鵠を得ている。政権の正統性という議会制民主主義の基本原理に照らして、この時点で野田政権の再評価する意味はある。
野田首相の今回の内閣改造劇は、正統性を見失った政権の「断末魔の叫び」の響きを持つ。