<十字架背負う>
◆「あの人は消費税に思いつめているね。本当にこれが葬られたら信を問うかもわからん。十字架を背負っているという感じがした」 24日午後7時半、野田佳彦首相との18分ほどの面談を終えて首相官邸玄関ホールにでてきた石井一参院予算委員長(民主党)は、こうもらした。石井氏は、首相の不退転の決意を代弁した。
首相と電話で話す間柄にある政治評論家は「俺は絶対に退かない。小沢は党を割って出ていけない」と語っていたとも証言している。だが、野田首相の決意は固いとしても、その固い決意を、実際の国会運営の次元に落として、実行していけるのか。固い決意の実現を裏付けるだけの環境が整っていないのが実際だ。野田首相は3月政局を、どうやって乗り切るつもりか。
<宣戦布告?>
◆攻める小沢一郎元代表は3月決戦に向けて着々準備を重ねてきた。昨年暮れに自らが会長におさまる「新しい政策研究会」(新政研)を130人規模で立ち上げ。会合のたび冒頭に会長発言をして発信し、存在感をアピールしている。2月に入ると共同通信、朝日で単独インタビュー応じた。4日配信の共同通信インタビューで小沢氏は、社会保障と税一体改革へ突き進む野田内閣にたいして「社会保障の方はどこかに行って増税の話ばかりしている」、政権交代時のマニフェストの実現に取り組まずに増税するのは「国民を愚弄する背信行為だ」と厳しい批判を加えた。そのうえで野田内閣が3月末に提出し、早期成立をめざす消費税増税関連法案の採決では「反対する」と明確に語った。野党が内閣不信任案を出した場合に、どう対応するかについては「その場になってみないとわからない」と含みを持たせた。小沢氏の宣戦布告の狼煙(のろし)であった。
<密約文書>
◆小沢「3月戦略」を解説する「今後の政局について」のタイトルの文書が永田町に流布されている。作者は平野貞夫元参院議員とされる。平野氏は小沢氏の知恵袋といわれた時期がある。また平野氏は秘書役をつとめた前尾繁三郎衆院議長(京都)の関わりから、谷垣氏とも古い関係がある。平野氏は両者の接点になりうる存在であるのは確かだ。全文を以下に紹介する。
今後の政局について(自民党谷垣総裁代理と小沢一郎代理の密談内容)
2月1日の午後、東京都内で自民党総裁の谷垣禎一衆議院議員の代理人と小沢一郎衆議院議員の代理人(平野貞夫元参議院議員)が面談し、野田内閣への対応について相談した。
谷垣氏側からは、今国会の適当な時期、おそらく3月中に自民党と公明党の共同提案で内閣不信任決議案を提出する見通しであると話された。谷垣氏側によれば、現在、大阪都実現と徹底した行政改革実施を主張し、躍進している橋下徹市長が率いる大阪維新の会が東京都知事の石原慎太郎氏と呼応して新しい国政政党結成の模索しており、これらの新勢力が衆議院選挙で大躍進すれば、自民党、民主党ともに大きく議席を後退させる恐れがあるため、早めに解散総選挙に持ち込むことも検討課題だとのことであった。
小沢氏側からは、現在は震災復興や原発災害の解決、更には低迷した日本経済の建て直しもままならず、国難の時期であり党派間の都合で解散総選挙を追求することはかえって国民から不信感を持たれかねないとの考えが述べられた。その上で、次のようなプランが提案された。
(1) 衆議院で2012年度予算案審議と採決が終わるタイミング、おそらく3月4日前後に内閣不信任決議案を提出する。
(2) 内閣不信任決議案を自民、公明と共に小沢グループの議員賛成により衆議院で可決させる。
(3) 内閣不信任決議案可決を受けた場合、野田佳彦首相は衆議院を解散するか、内閣総辞職するかについて10日以内に決定することが求められる。
(4) 一方、衆議院で2012年度予算案が可決され、参議院に送られて審議が開始されると、国家運営に支障を来たさないために予算審議を優先しなくてはならず内閣としては衆議院解散で総選挙に打って出ることはできない。
(5) 結果として、野田内閣は3月半ばまでに選挙なしで総辞職することになり、小沢一郎グループが造反することから民主党政権は崩壊する。
(6) 小沢グループは新党を結成し、当面、自民、公明と提携して次期総選挙(2012年秋を予定)までの間、予算案成立や震災復興、原発対策に必要な法案成立をはかるための「選挙管理内閣」を連立して構成。谷垣総理、小沢官房長官体制で進む。
(7) 以上の過程で、完全な政界再編を行い、国家の建て直しにふみだす
――上記文書は2月20日過ぎに一部に出回った。内閣官房当局も重大関心を向け内容の真贋について精査したが、政局情報の一つという処理がされた。とはいえ小沢氏―谷垣自民党総裁との間で、野田政権転覆の謀議が交わされたという話である。北村滋内閣情報官の野田首相に対する24日夕の定例ブリーフィングで文書の中身に触れたのではないかとの見方もある。3月政局は
<大幅譲歩も>
◆「小泉純一郎首相における竹中平蔵に当たるような存在が、野田総理の近くにいない。それが惜しまれる」。野田首相が私淑する総理経験者が最近、漏らしている言葉だという。たしかに世論を駆り立てる舞台回しができる人材がいまの首相官邸には見当たらない。
首相官邸として手をこまねいて、まったく動いていないわけではない。首相周辺では、民主党がマニフェストで掲げた最低保障年金、年金一元化、歳入庁という年金抜本改革3公約を全面撤回し、お詫びすることで、自公両党がいう「年金を含め社会保障の全体像を示せ」の要求に対する回答とする、それと引き換えに自公両党に与野党協議入りを受諾してもらう、という筋書きなども検討されている。
ただ肝心の世論の「増税の野田政権」離れがあまりにも急激だ。さらに橋下徹大阪市長が代表をする大阪維新の会を筆頭とする第三勢力の「遊撃隊」的な動きが、永田町の動きに不確実性を加味している。誰も決定打を持っていない、いまの政局である。誰が勝利者になるかわからない。
◆「あの人は消費税に思いつめているね。本当にこれが葬られたら信を問うかもわからん。十字架を背負っているという感じがした」 24日午後7時半、野田佳彦首相との18分ほどの面談を終えて首相官邸玄関ホールにでてきた石井一参院予算委員長(民主党)は、こうもらした。石井氏は、首相の不退転の決意を代弁した。
首相と電話で話す間柄にある政治評論家は「俺は絶対に退かない。小沢は党を割って出ていけない」と語っていたとも証言している。だが、野田首相の決意は固いとしても、その固い決意を、実際の国会運営の次元に落として、実行していけるのか。固い決意の実現を裏付けるだけの環境が整っていないのが実際だ。野田首相は3月政局を、どうやって乗り切るつもりか。
<宣戦布告?>
◆攻める小沢一郎元代表は3月決戦に向けて着々準備を重ねてきた。昨年暮れに自らが会長におさまる「新しい政策研究会」(新政研)を130人規模で立ち上げ。会合のたび冒頭に会長発言をして発信し、存在感をアピールしている。2月に入ると共同通信、朝日で単独インタビュー応じた。4日配信の共同通信インタビューで小沢氏は、社会保障と税一体改革へ突き進む野田内閣にたいして「社会保障の方はどこかに行って増税の話ばかりしている」、政権交代時のマニフェストの実現に取り組まずに増税するのは「国民を愚弄する背信行為だ」と厳しい批判を加えた。そのうえで野田内閣が3月末に提出し、早期成立をめざす消費税増税関連法案の採決では「反対する」と明確に語った。野党が内閣不信任案を出した場合に、どう対応するかについては「その場になってみないとわからない」と含みを持たせた。小沢氏の宣戦布告の狼煙(のろし)であった。
<密約文書>
◆小沢「3月戦略」を解説する「今後の政局について」のタイトルの文書が永田町に流布されている。作者は平野貞夫元参院議員とされる。平野氏は小沢氏の知恵袋といわれた時期がある。また平野氏は秘書役をつとめた前尾繁三郎衆院議長(京都)の関わりから、谷垣氏とも古い関係がある。平野氏は両者の接点になりうる存在であるのは確かだ。全文を以下に紹介する。
今後の政局について(自民党谷垣総裁代理と小沢一郎代理の密談内容)
2月1日の午後、東京都内で自民党総裁の谷垣禎一衆議院議員の代理人と小沢一郎衆議院議員の代理人(平野貞夫元参議院議員)が面談し、野田内閣への対応について相談した。
谷垣氏側からは、今国会の適当な時期、おそらく3月中に自民党と公明党の共同提案で内閣不信任決議案を提出する見通しであると話された。谷垣氏側によれば、現在、大阪都実現と徹底した行政改革実施を主張し、躍進している橋下徹市長が率いる大阪維新の会が東京都知事の石原慎太郎氏と呼応して新しい国政政党結成の模索しており、これらの新勢力が衆議院選挙で大躍進すれば、自民党、民主党ともに大きく議席を後退させる恐れがあるため、早めに解散総選挙に持ち込むことも検討課題だとのことであった。
小沢氏側からは、現在は震災復興や原発災害の解決、更には低迷した日本経済の建て直しもままならず、国難の時期であり党派間の都合で解散総選挙を追求することはかえって国民から不信感を持たれかねないとの考えが述べられた。その上で、次のようなプランが提案された。
(1) 衆議院で2012年度予算案審議と採決が終わるタイミング、おそらく3月4日前後に内閣不信任決議案を提出する。
(2) 内閣不信任決議案を自民、公明と共に小沢グループの議員賛成により衆議院で可決させる。
(3) 内閣不信任決議案可決を受けた場合、野田佳彦首相は衆議院を解散するか、内閣総辞職するかについて10日以内に決定することが求められる。
(4) 一方、衆議院で2012年度予算案が可決され、参議院に送られて審議が開始されると、国家運営に支障を来たさないために予算審議を優先しなくてはならず内閣としては衆議院解散で総選挙に打って出ることはできない。
(5) 結果として、野田内閣は3月半ばまでに選挙なしで総辞職することになり、小沢一郎グループが造反することから民主党政権は崩壊する。
(6) 小沢グループは新党を結成し、当面、自民、公明と提携して次期総選挙(2012年秋を予定)までの間、予算案成立や震災復興、原発対策に必要な法案成立をはかるための「選挙管理内閣」を連立して構成。谷垣総理、小沢官房長官体制で進む。
(7) 以上の過程で、完全な政界再編を行い、国家の建て直しにふみだす
――上記文書は2月20日過ぎに一部に出回った。内閣官房当局も重大関心を向け内容の真贋について精査したが、政局情報の一つという処理がされた。とはいえ小沢氏―谷垣自民党総裁との間で、野田政権転覆の謀議が交わされたという話である。北村滋内閣情報官の野田首相に対する24日夕の定例ブリーフィングで文書の中身に触れたのではないかとの見方もある。3月政局は
<大幅譲歩も>
◆「小泉純一郎首相における竹中平蔵に当たるような存在が、野田総理の近くにいない。それが惜しまれる」。野田首相が私淑する総理経験者が最近、漏らしている言葉だという。たしかに世論を駆り立てる舞台回しができる人材がいまの首相官邸には見当たらない。
首相官邸として手をこまねいて、まったく動いていないわけではない。首相周辺では、民主党がマニフェストで掲げた最低保障年金、年金一元化、歳入庁という年金抜本改革3公約を全面撤回し、お詫びすることで、自公両党がいう「年金を含め社会保障の全体像を示せ」の要求に対する回答とする、それと引き換えに自公両党に与野党協議入りを受諾してもらう、という筋書きなども検討されている。
ただ肝心の世論の「増税の野田政権」離れがあまりにも急激だ。さらに橋下徹大阪市長が代表をする大阪維新の会を筆頭とする第三勢力の「遊撃隊」的な動きが、永田町の動きに不確実性を加味している。誰も決定打を持っていない、いまの政局である。誰が勝利者になるかわからない。