米国はてぐすねひいて待っていたようだ。ハワイで野田首相を待っていたオバマ大統領は、日米首脳会談で、日本のTPP交渉参加を「日米関係を深める歴史的機会になる」と歓迎したが、「すべての参加国は、協定の高い水準を満たす準備をする必要がある」として、日本の広い分野での貿易自由化を求めたのである。

  アメリカの正体を現したのは、米通商代表部のカーク代表である。枝野経済産業相との会談で、「牛肉の輸入制限、自動車市場の貿易障壁、簡保や郵貯の優遇措置の3点に特に関心がある」と指摘。重点的に取り上げる意向を明らかにしたという。
  郵貯と簡保は、前政権のブッシュ大統領が、アメリカの保険業界の意向を受けて、小泉政権下で市場開放しようとして果たせなかったが、再び持ち出してきた。これがアメリカの本音である。アメリカでは議会は業界の代弁者であり、業界の手先になって働くのが米政府の通商代表部である。
 
  国内では、TPP参加をめぐって「国論を二分する」大騒動となったが、日本の参加は「拙速」でも「国会軽視」でもなく、はじめから決まっていたことなのだ。アメリカから「TPPのテーブルを空けてある」と言われたら、「ノー」と言えないのが日本の立場なのである。普天間基地で鳩山首相を辞任に追い込んだ背後にアメリカの影があったように、TPP参加を拒否したら野田内閣も鳩山と同じ運命をたどることになる。これがアメリカの核の傘の下のいる日本の宿命である。

  米国の主導するTPPに参加するのは、日本を含めて10カ国だが、経済規模では世界一位のアメリカと三位の日本の両国のGDP合計が全体の91%を占めており、事実上の日米二国間の貿易協定「日米FTA」だと呼ばれている。野田首相はTPP参加を通じて日本がアジア太平洋地域のリーダーシップを握るという野望を持っている。アメリカとの一対一では適わないが、アメリカを除いた各国と連携する、「窮鼠猫を咬む」戦術もある。

  アメリカはTPP交渉を、ほとんど実現が不可能な普天間基地問題を絡めてくる違いない。大統領選挙を控えてアメリカの業界筋に実績を見せたいオバマの意図が見え見えである。TPP交渉は日本外交の試金石となるようだ。

  しかし、米国産牛肉の輸入条件を緩和する方向で検討していることを、野田首相は日米首脳会談で、オバマ大統領に伝えたというから、手回しによいことだ。現在、「月齢20ヶ月以下」としている米国・カナダ産の牛肉輸入条件を「30ヶ月以下」に緩和するというものだが、消費者の安心を確保するため、十分な説明を求める声があるというから、野田首相の勇み足になることも。