オバマ大統領との日米首脳会談が野田首相の初舞台となる。注目されるのが、普天間基地を辺野古に移設する日米合意であるが、100%不可能な約束をするのは、オバマ大統領の信頼を裏切ることにはならないか。首相は大統領に率直に現況を説明し、共通認識に立った可能性を探るべきではないか。

  日米首脳会談は、21日、国連総会が開かれているニューヨークで行なわれる。約1時間の予定だという。政府高官というから、藤村官房長官は、日米首脳会談について、「オバマ大統領との個人的関係を築く大事な会談になる。個別課題より日米関係全般についての認識について意見を交換することになる」と述べている。普天間基地については、日米合意を履行する方針で一致するという。

  野田首相は16日の参院本会議で、普天間基地について、「日米合意に従って全力で取り組む。日米首脳会談もこの方針で対応する」と述べている。同日、政府が普天間基地の移設に関する関係閣僚会議を開いたのは、21日の日米首脳会談の前に、日米合意推進の新内閣の姿勢をアピールするのが狙いだという。

  ところが、基地のある沖縄の実情は、政府が考える状況と全く違っている。2年前、鳩山首相が米軍基地の海外移設、少なくとも県外移設を公約してから、県民が基地建設反対へ変わった。基地建設を許可する仲井真知事が建設反対派に転向した。政府は沖縄振興予算で反対派の切り崩しを図るが、通用しなくなった。日米合意の名護市辺野古への普天間基地移設に賛成しているのは、地主、建設業者、利権を貪る政治家ぐらいなものである。普天間基地問題は完全な手詰まり状態になっている。日米合意の履行は100%不可能になったとみられている。

  米国でも上院軍事委員会のレビン委員長(民主党)とマケイン筆頭理事(共和党)、ウェブ東アジア・太平洋小委員長(民主党)の3名の有力議員が、日米合意の普天間基地移設案を、「非現実的で実行不可能である。その上、普天間基地の海兵隊をグアムに移転する計画は費用がかかり過ぎる」として、見直しを求めている。13日には、レビン委員長が、カーター国防次官に、日米合意の見直しにつながる空軍嘉手納基地への統合案の検証を要請している。

   しかし防衛省は、中江防衛次官が、仲井真知事に辺野古沖の埋め立てに向けたアセスメントの結果を年内に出す方針を伝え、基地建設の条件が整いつつあること示しているが、知事は一川防衛相に「県外の滑走路を探した方が絶対に早い」と応じない構だ。

  21日の両首脳の会談では、鳩山政権以来の日米関係の修復を図ることも目的である。日米合意の履行をもって日米の信頼関係を深化するものとするのは、おかしいのではないか。なぜなら、100%不可能だからである。
  一部の米上院議員は「非現実的」と見破っているが、不可能なことを最も知っているのは、日本政府である。実行できないとわかっていることを、できるが如く装うことはウソである。オバマ大統領を騙し、信頼を裏切ることになるのではないのか。

  作家で元外務省分析官の佐藤優氏は「外務官僚や防衛官僚は沖縄の抵抗力を過小評価している。もし機動隊を導入するようなことになれば、瞬間に沖縄は島ぐるみの闘争になる。沖縄の状況を正確に把握すれば、首相はオバマ大統領と約束できないはずだ」と述べている。

  また、東京新聞の社説が、「沖縄を問居直せ」と題して、「21日のオバマ大統領との会談は、厳しい現状に対する認識を共有し、新たな可能性を探る出発点とすべきだ」と述べている。日米会談で事態を正直に分析し理解を求めるべきだと考えるのだが。新首相ならではの選べる道ではあるまいか。