◆1年後に迫る東京都知事選挙だが、ここにきて国政与党の民主党はめぼしい候補者がまったく不在の状況だ。他方、ポスト石原の都政を引き続き維持したい自民党も、有力候補に乏しい。民主、自民両陣営とも候補者が白紙という奇妙な事態に陥っている。
 民主党は、昨年8月の総選挙で政権交代する前までは、都知事候補が目白押しだった。菅直人衆院議員は、ポスト石原の都知事をうかがって、数年来、「石原周辺と誼(よしみ)を結ぶ行動が目立った。政権交代が実現しない状況では、中央政界での自らの先行きに限界が見えてきたためだ。海江田万里衆院議員も、選挙区のライバルの与謝野馨氏と毎回、死闘を演じる激しい選挙に厭戦気分を抱き、都知事への転身が取りざたされていた。小宮山洋子衆院議員らの名前も浮かんだ。自民党は舛添要一参院議員、猪瀬直樹副知事、石原伸晃衆院議員、小池百合子衆院議員らが浮上していた。自民党を離党した鳩山邦夫氏も、その1人だった。総選挙―政権交代をうけて下馬評に浮かんだ名前は、すべて、消え、現在に至っている。
◆ライバル不在を見届けて、俄然、活発な動きを見せているのが当の石原慎太郎知事だ。17日に都内四谷にある与謝野馨氏の事務所に足を運び、その足で平沼赳夫氏にも会った。前後して、ブレーンらと会合を重ねた。『文芸春秋』で谷垣禎一総裁批判を展開し、新党構想を打ち上げた与謝野氏との会談は、表向き法人税分割問題がテーマとされたが、額面どおりに受け取る向きはない。そもそも財務大臣経験者といえいまや野党の非主流の与謝野氏に税制問題を話しても、埒(らち)はあかない。一連の石原氏jの行動のテーマは都知事選問題と見るのがもっぱらだ。ライバル不在なら4選も望めるかもしれない、と石原氏が考えても不思議ではない。
開会中の東京都議会で、築地市場移転問題、新銀行東京乱脈経営問題、東京五輪招致失敗問題など3期11年、石原都政の積年の膿(うみ)を攻め立てられ、石原氏は、苦しい。このまま推移すれば来年4月の任期満了時は、失政に塗れて、追われるような退陣となりかねない。
◆そこで秘策。与野党ともに有力候補がいない,この時期に、知事を辞任して、参院選前にも知事選をセットし、自ら4選出馬する、知事選を通じて過去11年の都政の禊(みそぎ)を果たし、そのうえで、4期目の中途で再び辞める、という名誉回復のシナリオがあると民主党都連首脳は警戒する。
石原周辺は問題のシナリオを否定する。しかし、任期前の辞任の可能性は認める。ずばり、有力候補空白の有利な状況の間隙を狙って長男・伸晃氏へ知事の座を禅譲するシナリオを描いている、と見る向きが自民党都連の一部にある。野党に転落した自民党だ。将来の総理総裁をめざしていた伸晃氏が中央政界で脚光を浴びるポジションにつくのは当分、見込めない。「首都の総理」の座も、すわり心地は悪くはない、という親心というわけだ。
 世の中、そんなにうまい話があるはずがない。春の夜の夢想にも似た奇抜なアイデアではある。