父方の祖父が木工所をやっていたらしい。幼い頃に様子を見ているのかも知れないが、全く覚えていない。確か一度家が火事で焼けてしまい、やめてしまったとか、そんなことだった様に思う。物心ついた頃の祖父は、もう木工はやっていなかった。
父親は地方公務員で、木工とは無縁だったが、家の勝手口のところに日曜大工で小さな納屋みたいなのを作ったりしていたので、多少の素養はあったのだろう。まあ昔の人は、今で言う日曜大工なんてみんなやっていたのかも知れないが。
その家に住んでいた頃は、風呂が薪（まき）ストーブで、その薪割りを父親がしていた時だったと思うが、「この木は「たも」の木と言って、弾力性があってスキーなんかに使われるんだ」などと教えてくれた。スキーに「木」というのもいかにも時代を感じてしまうが、もう30年以上も前の話である。
何年か前に初めて知ったのだが、この「たも」の木というのが、テレやストラトなどに使われるアッシュのことである。ギターに使われるアッシュは主に北米産なので、厳密に同じ種ではないと思うが、同類ではある様だ。薪を割ったあとの切り口の木目が、正にアッシュだった様な気もするが、それはあとになって作られた記憶かも知れない。
そんなことがどれくらい関係あるのかは分からないが、たぶん幼い頃からの木との色んなふれ合いや関わりがあって、木や木目にとても惹かれてしまう、今の自分が作られてきたのだろう。