入れ歯を外したマミーが、ずいぶん老けちゃったように思えた。いつもはシャキシャキしてるけど、本当はずっと具合悪かったんだろうな。心配かけたくないから、いっぱい我慢してたんだとおもう。
予定より30分早まって、12時に手術室へ行った。最初、車椅子に乗ってたのに
「座ってられない」
って言い出して、ストレッチャーで移動。ウチの親の場合は、手術室へ入る直前まで一緒にいさせてくれたけど、ここの病院は大きいからか、エレベーターでお別れ。なんとも、心細くなる瞬間。
麻酔をかけるのに1時間はかかる、っていうことと、手術は4時間で終わらせたい、ということを言われていた。体力的にも長時間の手術は難しいし、あまり長い時間だと輸血がまぬがれないから、と。
若いひとなら、輸血しても肝臓がきちんと機能するから肝炎とかにかかる確率が少ないらしいんだけど、肝臓もガン細胞が巣くっちゃってるマミーには、かなり危険なことらしい。
病院の売店で買った、どうやったらこんなに不味くなるんだろう、っていうぐらい味がなくてパサパサのおにぎりをひとつ食べて、デイルームのお茶を飲んで、やることないからまたお茶飲んで、胃の中が水分だらけになった。
夕方、1階に降りてケータイからmixiを見たら、男トモダチから「手術が無事に成功しますよ~に」ってメッセージがきていて、すごく感動した。
あまり余計な心配かけるといけないから、手術のことってホームページにちょこっと書いただけで、ほとんど誰にも言わなかったの。
それなのに、手術の予定日を覚えていてくれて、励ましの言葉を送ってくれるなんて、なかなかできることじゃない。まして、自分とは関係のないことなのに…。
ひとを思いやる気持ちって、あったかい。
本当に、ありがたいな、とおもいました。
何も情報がないまま、ひたすら待つのってつらい。
マミーはもっと大変だけど、やっぱ、闘病って本人だけの闘いじゃないんだな。わたしだって、微力ながら一緒に闘っている。
不安な気持ちがふくらんでくるたびに、小説をひらいた。
よしもとばななの『デッドエンドの思い出』
精神的に弱っているこころに、優しく、静かな安らぎをくれた。
予定時刻をとうに過ぎて、看護師さんが呼びにきたのは22時直前。医師から説明を聞いたら、腫瘍がMRIで撮った時より大きくなっていて、時間がかかったそうだ。脳が腫れたりするから、外した頭蓋骨は元に戻さないらしい。
ICUでほんの少しだけ面会をした。俯せで手術していたマミーの顔は、かえるみたいにパンパンに腫れていて、話す言葉もろれつがまわっていなかったけど、とにかく、無事、終わった。
火曜日までに合併症や水痘症が出なければ、一般病棟に戻れます。