あれから何年くらい経ったのかな。あの頃の私は、自分でもビックリするほどカラまわりしながら君を追っかけていた。ふりむいてもらいたくて、気にかけてもらいたくて。私が必死で話せば話すだけ、紡ぐ言葉は私の素顔から遠ざかり、格好悪いところを隠そうとしてばかりだった。きっと、君から見た私の笑顔は平べったいお面のようだったんじゃないかな。ただの憶測でしかないけれど。
いつの間にか連絡が途切れ、逢えない日々が増えていき、それでも心のどこかに君がいた。二人で過ごしたほんのささやかな時間を、オルゴールを空けるようにそぉっと取り出しては眺めて抱きしめて、壊れないようにまたしまいこんだ。そうして思い出すたびに“もしもあの時、私の想いを伝えていれば…”いつも思考の迷路、ある意味迷い慣れた行き止まりに立ちすくんだ。私はまるで通い続けた通学路のように当たり前の道順としてその行き止まりへ辿り着く。
今になってやっと分かるのは、その思考の袋小路は私にとって、とても安全で、穏やかで、隠れ家であったということ。勇気を出して一歩踏み込まなくても、思考の袋小路はやがて、すてきな妄想の世界への入口と変わる。拒絶されるつらさも痛みもなく、可能性はいつまでも無限に、果てしなく続く。そして夢を見て、現実に帰るのだ。変わり映えのしない、日常へ。
なつかしい君からの手紙をもらって、いつまでもこんなんじゃダメだなって、思った。無様でも、格好悪くても、飛び込んでみるよ。
本番、用意、ドン!
※ショートストーリーとしてお読みください。