☆ 星、五つです。
名優ブルーノ・ガンツが、まるでヒトラー本人かと見間違うほどの熱演です。死の直前に妻になるブラウン嬢もまた本人そっくり。一昨年山口智子さんが向田邦子さんを演じた短時間ドラマでは、親族が「山口さんに邦子が(霊的に)乗り移った」とまで言わしめたそうで、ヒトラーの親類がいたらやっぱり乗り移ったって言うかなって思いました。
こんなくだらない感想は終わりにして、さて本題。12日間という短く凝縮されたナチ降伏直前の映画です。12日間が長い長いいちにちのようにも見え、じっさいひとびとは朝も昼も夜もなく、暮らしていたんだろうなという印象です。ヒトラーのいた地下要塞では、食べ物にも衣服にも困らず、物資は満ちあふれていました。お酒もあるし、ごちそうもあるし、ヒトラーの秘書をしている女性たちはドレスを着てお化粧もできる。戦争の暗い影を紛らわすかのように、爆撃音に負けじと狂った宴を繰り広げていきます。作中主人公の女性が、パーティーのさなか目の前の現実にひどく困惑し、吐き気をもよおすシーンがあります。周りに溢れるは笑い声とダンス・ミュージック。華やかなシャンパンボトルの弾ける音。なんだコレ、なんなんだコレ、って感じ。まさに狂っていく課程ってこんなふうに不安定な感覚なのかもしれないと思い、背筋に冷たいものを覚えました。
ひとは虫けらのように殺され、遺体はゴミのように処理され、誰もが猜疑心にかられ裏切り傷つけ合い、それでもなお消えない情熱は間違った方向へ向かっていく。
当たり前のことなんだけど、殺すとか殺されるとか、例えばそれがエライひとの命令であっても国のためであっても世界がケンカしていても、絶対しちゃいけないんだ。
「ハイル!ヒトラー」
あなたは偉大なひとだったけれど、なんて孤独で過酷で悲惨な人生。黄泉の国で、第三帝国は築けたのでしょうか?

とても意外だったのは、まだヒトラーの側近が生きているということ。一昨年、昨年に亡くなったりもしていますが、釈放されて生きながらえているひとも多いみたい(スタッフロールの前に詳細アリ)。たった50年、なんですね。そんな短い時間の中で、また新しい火種が生まれてたりするっつーのは…。
なんだか哀しくなってきました。