
他から強制される目的を持たない活動のことを、
カントは「目的なき合目的的行動(=自由意思による活動)」と表現した。
たしかに、誰からも強制されずに「自分のやりたいこと」をやれる時間は楽しいひとときだ。
では、売上を達成するという組織の目的を達成して初めて安定的な収入を得られる企業活動において、個々人は自由意思にしたがって活動できるだろうか。もちろん難しいだろう。「興味のあることには一生懸命だが、興味がないことにはモチベーションがあがらない」という言葉をよく若手社員から聞くが、それは組織に属している限りある意味当然なのだ。
経営者は、社員に対してきちんとした義務を果たす責任がある。
そのために、社員の自由を預かる部分もある。では、自由を拘束することは規律でがんじがらめにすることと同義なのだろうか。
そのような状況でも、モチベーションを保たせるためには何が必要なのだろうか。
かつて英国のパブリックスクールでは、
寄宿舎生活で規律を学び、スポーツマンシップによって帰属意識を培いながら、エリートとしての生きる姿勢を作りあげたという。(参考文献:『自由と規律』岩波新書 池田 潔 1976)
現代の企業活動で考えれば、自由な考え方や行動によって活力を生み出すことがより一層求められている。しかし、“統制”の部分も必要である。それは権威(パワー)を使ってやる場合もあるかもしれないし、メンバーの合意を得ながら一つの方向にまとめていく場合もあるだろう。リーダーは、個々の力を引き出すことと、規律を学ばせるタイミングを見極める必要があるのかもしれない。