読書覚書2012年2月「邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ」北森鴻 浅野里沙子 | PERFECT PERSONAL WORLD

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〈ミステリ〉


「邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ」(新潮社)北森鴻 浅野里沙子


北森さんが遺されたノートを元に、浅野さんが結末を書き継いだ、民俗学者・蓮丈那智シリーズ、最終作。雅蘭堂・越名集治や冬狐堂・宇佐見陶子も出ていて、冬狐堂シリーズの「狐闇」を蓮丈那智シリーズの側から扱った続編とも言える内容。もっと言えば、北森さんの歴史小説「暁の密使」の続編とも言える。
それぞれのシリーズの登場人物との再会や、彼等を繋ぐ「あの人」の消息を伝聞という形で伝えてくれて、本当嬉しかった…!


タイトルにもあるように、今回のテーマは邪馬台国。いわゆる、位置論争(推論は示されているけど)より、民俗学から見た「邪馬台国はどういう国だったのか?」という横軸と、雅蘭堂の手によって那智の手に渡る「阿久仁村遺聞」の謎が縦軸となって物語が展開。

多少、邪馬台国は詳しいので(小学生の頃の夢、考古学者…)、作中で触れられている説や作品は、どれなのかあらかた分かった(^_^;)
「北森さんが考える邪馬台国」に興味があったので、例えば「魏志倭人伝」の解釈や邪馬台国比定地が自説(というほど固まっないけど)とは違うし、北森さん説に納得した訳ではないけど、十分に楽しく読めた。

作中に出てくる説の殆どが、かつての蓮丈那智シリーズで扱われていたものに、再び光を当てたもにだったり、一度だけお会いすることができた、名張市の講演会・なぞがたりなばりで語られたお話で、結果として、最後にして北森さんの総決算だったんだと思うと…
なぞがたりなばりで、「皆さんビッグニュースですよ!末盧国の場所が特定されたんです」と目を輝かせて仰っていた北森さんの姿が忘れられなく…


正直、事件と物語の結末は「狐闇」を繰り返しように思えたが、浅野さんの後書きによると、北森さん遺された構想ノートには「阿久仁村遺聞」の暗号の解き方しか書かれていなかった(酔鴻忌で浅野さんから「綿密な構想ノートを書かれる北森さんが、最近の物になるとノートの記載が少なくなっていた」とお聞きして、悲しく…)そうで、その中から、十分に北森さんらしい解決とこの物語の結末を着けてくれた浅野さんに、感謝を。
北森さんのお弟子さん筋で、婚約者の方だけのことはあって、北森さんの文章との違いは感じませんでした。


それでも、北森さんだったら、どういう結末を書いてくれたのだろう?この先にどういう物語を書いてくれたのだろう?と思ってしまう…「阿久仁村遺聞」の暗号の解き方の素晴らしさから、間違いなく、北森さんの最高傑作になっていただろうと思うから。

この本を読んだことで、北森さん未読作品はあと二作ほど…正直、もっと後になって「邪馬台」は読もうと思っていたけど、酔鴻忌でお会いした人達と北森さんお話をしていて、「読むなら今!」という気持ちに…それでも、残り未読本には当分手を付けれそうにない…



「黄金の灰」(創元推理文庫/東京創元社)柳広司


トロイア遺跡発掘したシュリーマンと夫人のソフィアを主人公にした、柳広司さんのデビュー作。発掘された黄金のを巡る怪事件。
柳さんの歴史ミステリは、どれもクオリティが高いのだけど、デビュー作でこれだけの作品を書かれていたことにビックリした…。

他の作品もそうなのだけど、扱っている時代の空気感の再現の見事さ、今作なら犯行動機の深淵さが見事。爽やかな結末も好き。

あと、シュリーマンが思っていた以上にエキセントリックに描かれていて(笑)昔、シュリーマンの自伝を読んだことがあったので、見方が変わりそう(笑)



「グラン・ギニョール城」(創元推理文庫/東京創元社)芦辺拓


森江春策シリーズ。
現実パート=森江春策と作中作「グラン・ギニョール城」=ナイジェルソープが交差していき、現実と虚構が一つになっていき…という部分は読み手としては盛り上がったし、「グラン・ギニョール城」の古城を舞台とした設定や不可能犯罪も魅力的で、森江春策シリーズでは屈指の面白さ!

なのだけど、語られている不可能犯罪の真相トリックの一つが、どうしても?な部分があって残念。



「真夜中の探偵」(講談社)有栖川有栖


探偵ソラシリーズ第二作。

今回の舞台は大阪。第二次世界大戦後、日本が南北に別れたという、架空の世界観ながらも地理部分は、現実に準拠している為、大阪の街の様子がリアルで、流石は有栖川さん!

有栖川さん自身が「シリーズ化を意識した、これまでとは違う書き方」みたいなことをUstream配信のミステリジョッキーで語られていて、これまでのシリーズより、「引き」が意識されていて、そこが新鮮。

また、探偵への一歩を歩き出した純の初々しさや、時折、故郷友人を想う孤独感、一人暮らしの生活感等リアル。

トリックや犯人も、それ程凝ってはいないように思えるけど、動機はこの世界観ならではで、この先のシリーズで、どうこの「探偵行為が禁止された世界観」を活かしてくれるのかが楽しみ!


シリーズ三作目の「論理爆弾」の舞台は福岡なので楽しみ!ぜひ、サイン会を(笑)