溜まってしまったので、まとめて。
篠田先生ら、ずっと応援している先生方に名作が目立ちました。
〈ミステリ〉
『桜の園 神代教授の日常と謎』(東京創元社)篠田真由美
建築探偵スピンオフ・神代教授シリーズ第二弾。表題作「桜の園」は、神代教授の同僚、大島教授の「桜館」と呼ばれる洋館と、そこに住む親類の老女三人に纏わるトラウマの物語。
「花の形見に」は、神代教授の亡き母君の過去を巡る物語。
「桜の園」に関しては、神代教授より、大島教授の方にスポットライトが当たってる感。建築探偵本編「桜闇」と同様、篠田先生の描く桜は、どこか儚げで美しい。
「花の形見に」は、詳しく書くとはネタバレになってしまうので、物語の収束が見事と。
それにしても、篠田先生は洋館や海外を舞台とした物語を書かれる方だけど、神代教授シリーズには、日本の懐しい景色を感じてしまう。
『厭魅の如き憑くもの』(ミステリーリーグ/原書房)三津田信三
『凶鳥の如き忌むもの』(講談社ノベルス/講談社)三津田信三
怪奇小説家・刀城言耶シリーズ。民俗ホラーと本格ミステリの融合が、高い評価を得ている様子。
『厭物』は、設定や登場人物の配置が複雑過ぎて、メイントリックのインパクトが弱かった気が。『凶鳥』は反対に、トリックのインパクトが強かったし、分かりやすかった。
両作とも、戦後間もない?くらいの時代を舞台にして、民俗学を取り入れてるせいか、蘊蓄が多い。何となく京極夏彦の作品に近いものがあるが、決定的な違いは、京極作品は、膨大な蘊蓄が作品世界に有機的に結び付いてるのに対して、三津田さんの作品には、それを感じられず、「この蘊蓄は、なくても良いのでは?」と思ってしまうこと。
あと、何となく探偵役のキャラクターに愛着が持てなかった。
『千一夜の館の殺人』(光文社文庫/光文社)芦辺拓
天才科学者が残した100億の遺産と、研究成果のディスクを巡っての連続殺人。
個人的に、移動中に読書がしやすい「文庫」という形態が好きで、親本を我慢して、文庫待ちするというパターンが多いけど、今作を読んで、何故親本をすぐに読まなかったかと後悔(泣)
近年のミステリは、ミステリそのものに、他のジャンルの小説の要素を取り入れてる物が多い。
その要素を入れることで、物語として優れていても、ミステリとしての謎解きのインパクトが弱いなら、ミステリにする意味がないと思ってる。
今作は、遺産を巡る連続殺人に、「千一夜物語」をモチーフにした暗号、そして○トリック……
と、古き良き本格ミステリのガジェットを取り入れた上に、トリックもシンプルかつ、インパクト大!
こんなミステリが読みたかった。
そして、作中、森江探偵とある人物との出会いに目頭が熱くなった。
まさか、こういう形で再会できるなんて……
個人的なベスト10って、決めるのは嫌いだけど、間違なく、最高のミステリ!
『BG、あるいは死せるカイニス』(創元推理文庫/東京創元社)石持浅海
全人類が女性で、一部が男性になる世界での連続殺人。
石持さんの作品とは、相性が悪いのか、論理的な解決を楽しみつつも、物語の結末が、いつも抵抗ある。
『少女探偵は帝都を駆ける』(講談社ノベルス/講談社)芦辺拓
この本を書いてくれた芦辺拓先生に感謝したい。
ミステリを読み始めた頃に出会った『殺人喜劇のモダンシティ』。昭和初期の大阪を舞台とした、女学生・平田鶴子と新聞記者・宇留木昌介の冒険譚。スリリングな物語かつ、結末の切なさに、胸が熱くなった。今も大事に本棚にある本。
まさか、続編が読めるとは思わなくて、一報を聞いた時、凄く嬉しかった。
今作は短編集。どの作品にも、その時代ならではのトリックが使われていて、取材の精密さに頭が下がる思い。
芦辺拓先生といえば、名探偵・森江春策シリーズが代表作だが、この平田鶴子、宇留木昌介コンビも育ててもらいたい。昭和初期の大阪の魅力や、森江シリーズにはない、バディ物としての魅力も十分に優れていると思ったから。
『少年は探偵を夢見る 森江春策クロニクル』(東京創元社)芦辺拓
その森江春策探偵の、小学生からの事件の短編集。ジュブナイル有り、青春推理有りと、広がっていく作品世界が魅力。
個人的には『街角の断頭台』が見事と思った。
〈ホラー〉
『Another』(角川書店)綾辻行人
新本格の旗手によるホラー。実は書いてる現在、読了したばかりですが、いや、面白かった!
ゾクッとする部分もあれば、ミステリ的な謎解きもあるし、流石は綾辻行人!主人公が中学生ということもあって、青春小説、ジュブナイルの要素も。実は、ホラーの怖さ、ミステリの衝撃と並んで、青春小説としての切なさにジンときた。
あと、意外と中学生のキャラクターがリアルで、綾辻さん、ジュブナイルも書ける気がした。
〈直江兼続関連〉
『花に背いて 直江兼続とその妻』(幻冬舎文庫/幻冬舎)鈴木由紀子
九月の越後行きの折、読書。
話には聞いていたが、既存の上杉・直江小説のパクリだらけ!特に『一夢庵風流記』とか。
もしこれを大河原作にしてたら、盗作疑惑で叩かれてたんだろうな。
親本発刊当時は、直江公では無くて、お船さんが主人公というのは新鮮だったんだろうけど、「利まつ」のまつぶりのでしゃばり方とか、ちょっと抵抗が。
『直江兼続と妻お船』(PHP文庫)近衛龍春
これまた、お船さんの視点の小説。『花に背いて』があくまで良妻として、お船さんを描こうとしているのに対して、こちらのお船さんは、嫉妬もするし、兼続や信綱を疑いもする。近衛さんの、これまでの架空戦記物でのお船さんは、兼続の師匠的な存在だったので、そういう意味でも新鮮。
根本的に、近衛さん自体、中世上杉家に詳しいこともあって、『花に背いて』よりも、背景がしっかりしていて読み応えがある。
『義風堂々!! 直江兼続 前田慶次 月語り』3巻 (新潮社) 原作・原哲夫/堀江信彦 漫画・武村勇治
3巻は、兼続出生の秘密編。
巻末の「歴史群像」編集長のコラムによると、この漫画オリジナルの兼続の出生、ギリギリ史実に状況証拠を求められるとか(笑)
まぁ、多分漫画でしか許されない設定だと思う。火坂さんとかが小説でやっていたら、総スカンだろうし(笑)
漫画だと、絵にした時点で説得力が伴うから。