出ベンゾ記

出ベンゾ記

ベンゾジアゼピン離脱症候群からの生還をめざして苦闘中。日々の思いを綴ります。

さて、目白にある日本女子大学のキャンパスを見てきたが、今回で終わりになる予定だ。


例により、案内図を掲げる。




前回、最後は、図の護国寺門のまえにある七十年館を見た。


図には、その奥まったあたりに樟溪館という建物が載っている。






これがその樟溪館である。

どうも惹かれるものがない。

取り上げる気はなかったのだが、調べると佐藤功一設計とある。

佐藤功一は早大建築学部の創設者で、大隈講堂や日比谷公会堂の作者だ。


玄関ホールにその片鱗が残っているようだが、外装は愛情や尊敬が感じられない、かなり粗雑な修復がされているのではなかろうか。

そう思って、創建時の写真を探すと次のようなものが。



モノクロの写真がそれで、なんと驚くまいことか、短辺にある窓がすべて塗り込められてしまっているではないか。

モヤモヤした気分で門を出ると、いきなりこんな景色に出くわした。


ピンクの建物は、案内図にある第一体育館だ。

しかし、その向こうの廃墟じみた古ビルは何だろう。



守衛所がある。



ポン女の寮の入口だ。



しかし、こんな廃墟にイマドキの女子大生が暮らしているものだろうか。


じつはここは閉鎖中で、新しい寮は別に新築したそうだ。


そして、この旧館は1927年竣工の明桂寮。これもまた佐藤功一の設計である。

モニュメンタルな作品で知られる佐藤の、集合住宅の作例というべき遺産だろう。

なんとか修復して、保存してもらいたいものだ。


大きな窓が美しい。





内部の記録もわずかだが残っている。



そしてこれは創建当時か。左下のテラスに腰かける女性が見える。

さて、このシリーズはこれにてお仕舞い。

明桂寮の保存、お願いします!


さて、前回は、正門の左右に配置された、建学者・成瀬仁蔵関連の建物を見た。


便利なので案内図を今回も掲げておく。




現在の正門からの眺めはこうだ。案内図の八十年館が正面に見える。




下は創建時と思われる。



そしてこれが、1951年落成の旧泉山館。本校舎という位置づけだった。


このスタイリッシュな建物を壊して、現在の無個性なビルを建てたわけだが、私はもったいないと思うばかり。



道標の後ろが、八十年館だ。

これはほっといて、40年後の百二十年館に飛ぶ。







恐ろしいような超現代美。

設計は妹島和世だ。



日本のプリツカー賞受賞者中、唯一の女性で、世界でも2人しかいない受賞者の一人だ。

日本女子大学卒。

今でこそ、同校には建築デザイン学科が置かれているが、妹島の時代は家政学部の下部組織だった。

卒業後は、やはりプリツカー賞受賞者となった伊東豊雄の事務所で研鑽を積んだ。

正門と目白通りをはさんで対峙する、新図書館なども妹島の仕事だ。





さて、裏門(護国寺門)に近づくと、七十年館が目に入る。





1974年竣工。いかにも70年万博を通過してきた時代を感じる。シンプルモダンではなく、直線的でありながら装飾的でもある。

こういう建物も貴重になってきた。

設計者が分からないのがもどかしい。

以下続く。





学習院の長い長い煉瓦塀が途切れて、先日、失火で焼けた旧田中角栄邸にたどり着くと、目白通りを隔てた正面あたりが、1901年創立の日本女子大学目白キャンパスだ。日本最初の女子大学だという。




目白通り沿いの正門。

左手に見えるのが、創立者・成瀬仁蔵を顕彰して1984年に建てられた、成瀬記念館。




比較的新しい建物だが、古典のエッセンスはよく捉えられている。


設計は、横浜の大佛次郎記念館などを手掛けた浦辺鎮太郎。

この記念館の右手には、大学には似つかわしくないような日本家屋が。




これは、成瀬(下)が没するまで暮らしていたという家で、1901年に建ったというから120年を超えている貴重な建物だ。


さて、この2つの建築に対面するように、正門右手に見えるのが、成瀬記念講堂。



創建時には煉瓦壁に覆われていたが、関東大震災で被害を受け、木造に改修されたそうだ。


じつは撮影時に、ここで隈研吾を囲むシンポジウムのような集まりがあった。そこに紛れ込んだというわけだ。



1906年竣工。設計は渋沢栄一邸「晩香盧」などで知られる田辺淳吉。


木骨トラス構造の見事な作例だ。

2階バルコニー席は、なんとなく西部劇のサルーンを思い出させる。


そして、正面のモニターの裏には、高村光太郎作の成瀬仁蔵像が据えられているそうだが見えず。

光太郎の妻・智恵子はここの卒業だそう。


平塚らいてうとか、高橋留美子とか、多彩な卒業生が名を連ねる。




控えめだがステンドグラスもある。

以下続く。