<範囲>まえがき(p5-14)、自己決定言論(p249-286)
【テーマ】内容を2000字で要約
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当事者が意識する「選べない」という不自由感を前提とする「狭義の不自由」としては、「外的な選択制限」と、「選択原則の不在」が問題になる。前者の不自由克服が「消極的自由」に相当し、後者の克服が「積極的自由」を意味する。前者と後者の関係が、「自己決定権」と「自己決定能力」の関係に、相当している。
消極的自由は、積極的自由の「論理的前提」だ。すなわち、多様な選択肢の中から自由に選んでよい「がゆえに」、混乱せずに選べるかどうかが問題化するという「論理関係」がある。自己決定能力は、多様な選択肢を前に自由自在に選べる内的原則を獲得しているかどうかに関わる。
基本的人権(基本権)的思考は、対立的思考の克服の上に成り立っている。「尊厳(自尊心)ある者のみ自由に生きうる(自由を行使できる)」という形で論じられてきた中で、消極的自由に、積極的自由の不在を理由に制約を加えられるかどうかについても議論されてきた。
「自由」な振る舞いを支えている尊厳リソースとして「精神共同体(民族・国家)への合一」を重視するか「自己表出の他者による承認」を重視するかによって、立場が鋭く分岐している。先進諸国の基本的人権(基本権)の思想は、後者への「価値合意」を前提としている。
後者の立場から言うと、自由な自己表出の積み重ねの結果得られる自尊心こそが尊厳の本質で、「経験的成果」だ。各国の憲法における「尊厳維持は不可侵の人権だ」という条文は、尊厳を支えるために、万人に自己表出やそのための資源が保証・確保されなければならないという価値合意の表明だ。
比較的恒常的な社会関係の中での自由な自己表出可能性が尊厳(自尊心)の前提になるとして、しかし自己表出へと自由に踏み出すためには一定の尊厳(自尊心)が前提になるという「前提循環」ないし「交互的条件づけ」がある。
「自己決定能力が低いことを理由に自己決定権に制約を加えることはできない」が、他方、複雑な社会は「自己決定のリスクを乗り越えるに足る最低限の尊厳(自己信頼)を保護することを政治システムに要求する」ようになる。
低年齢の男女が売買春市場に参入することの是非をどう議論するかが問題として浮上していることも、背景の一部にはこうした社会的合意がある。刑法が規定している性的同意年齢は、「自己決定能力の中核になる尊厳を保護する」という法理によって合理化されるべき、「保護規定」だと考えなければならない。
性に関わる規制的な立法措置には、個人的法益保護を規定するものの他に、社会的法益保護を規定するものがある。一つは、「公序良俗」「善良な風俗」という統合シンボルを持ち出すもの。もう一つは、性別役割分業に加担して「家父長制的差別」を補強するもの。この両者は、互いに結びつきながら、あるべき「共同体の秩序」について、明示的にあるいは暗黙に言及している。
性に関わる規制的立法の全ては、個人的法益の保護を目的とするべきだ。
わが国における議論は、「売春」の是非、「低年齢の性」の是非、「低年齢の売春」の是非、そして「性虐待」の是非の問題を、混同させている。性虐待は人権侵害であることが明瞭で、議論の余地はない。
半数以上の男が女を買った経験がある社会で性別非対称性を克服するには、少なくとも単純売春(非管理売春)は合法化すべきだ。売買春が一般的な現状や、買わない限りセックスができない性的弱者の存在を覆い隠し、いい売春/悪い売春(性サービスの売買と人格の売買を混同した性虐待など)の違いを論議・教育できないなど、売春禁止の弊害は大きい。
性の低年齢化の速度と母娘間格差の大きさは、急速な近代化プロセスで、元々の伝統に反する「良妻賢母」教育がなされてきた、というネジレによる。人々を「国民化」すること、女性を再生産労働に従事させること、に貢献した近代化支援機能は、もはや用済みだ。「青少年」の性的自己決定権を認め、当たり前に性交することを前提にした教育や青少年行政を推し進めるべきだ。
青少年が行う売春には、当事者が青少年であることによる危険が伴うと推定される。交渉力の不十分、問題解決能力の不十分、性的感受性が固定化する可能性、によるものだ。自己決定範囲の制約という形で、政治システムは「自己決定権」に事実上制約を加えざるを得ない。したがってそれがいかなる意味かをその都度再検討し、見直す必要がある。青少年の「自由な自己決定に基づく試行錯誤」を支援することを理由に尊厳の初期値設定の保護を行う以上、青少年の「自由な自己決定に基づく試行錯誤」を全面的に支援しなければならない。
しかし、青少年の性や売買春を忌避する人々の中には、自らの「性的実存不安」を、自らと異なるタイプの性的行為をする者に対する否定的な攻撃によって、癒そうとする向きも少なくない。売買春についての法的措置が、そのような愚挙と結びついてはならない。
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