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くろみずぎの怖い話ブログ

怖い話だけを紹介します。

236 :長文スミマセン1/8:03/02/14 17:18
私はずっと母親と二人で暮らしてきた。
父親は自分が生まれてすぐにいなくなった、と母親に聞いた。
祖父や祖母、親戚などに 会ったことはない。そんなものだと思っていた。
それが異常な境遇だということに気付いたのは、ずっと後になってからのことだった。

いつ頃のものかはわからないが、姉がいた記憶がある。
夢のようにかすかな記憶なので、本当のものなのかはわからない。
ただ、小さい頃、母親にそのことを話すと、なぜか酷く叱られた。

その頃は引っ越しばかりしていた。同じ場所に1年いることは無かったと思う。
母親に理由を聞くと、「追いかけられているからだ」という答えが返ってきた。
「何に追いかけられているのか」と尋ねると、「とても恐ろしいもの」だと。
「どれだけ逃げ回っても、必ず追いかけて来る」「黒いやつが真っ先に見つける」とも言っていた。

引っ越しの仕方も奇妙だった。
朝起きると、いきなり母親は荷物をまとめて、家を出る準備をしている。
家財道具など無いに等しいので、準備などすぐに終わる。
すると、近所への挨拶などもなしに、その足で家を出てしまうのだ。
まるでその場の何かから逃れるような、慌ただしい引っ越しだった。

母親は行く先々で、いわゆる霊能者に会っていた。
霊能者達は何か呪文のようなものを唱えたり、私達に様々な指示を与え、それに従うように命じたりした。
しかし、効果は無かったのか、私達の引っ越しは延々と続いた。

ある霊能者は最後にこんなことを言った。
「あなたに憑いているものを祓うのは、私には無理です。
 ひょっとすると、祓える者などいないかもしれない」


237 :長文スミマセン2/8:03/02/14 17:20
小学校4年生になった頃、私と母親はある寺に転がり込んだ。
そこの住職が、悪霊祓いで地元の評判を取っていたからだった。
私達はその寺の隅にある離れで生活を始めた。
毎日早朝から座禅を組んだ。お経も覚えさせられた。
時には水垢離や護摩の煙を浴びたりもした。
住職は私達のために毎日のようにお経を唱え、お祓いの儀式を繰り返していた。
母親はそれに安心したのか、もう引っ越すこともなく、寺に留まり続けた。

中学生になり、私はようやく一所で生活するという事に慣れ始めた。
学校の友達もできて、人並みに勉強もした。部活も始めた。
そうなると、寺の生活が疎ましくなってきた。
そのことを母親にこぼすと、母親は物凄い剣幕で怒った。
昔の自分なら、その剣幕に驚いて母親の言うことに従っただろうが、
その頃の私は丁度反抗期に当たっていたせいか、そんな母親の態度に反発した。

・母親は妄想に取り憑かれているだけだ。
・霊など存在しないし、だからここでしている事なんて何の意味もない。
・この寺の住職は、私達を自分の霊能力を宣伝するダシに使っているのだ。

当時の私の考えはだいたいこんな感じだった。
学校や世間で得ることの出来る様々な意見や知識は、私のそんな思いを裏付けるものが多かった。
私の中に芽ばえた『心霊的なもの』に対する反発心は、日々ふくれあがる一方だった。


239 :長文スミマセン3/8:03/02/14 17:22
高校3年生の冬、夜中に母親の声で目が覚めた。
廊下へ出ると、母親の部屋の前に住職と住み込みの坊主がいて、中を覗き込んでいた。
母親は半狂乱になって何かを訴えていた。
「黒いやつが来た」「もうダメだ」「大丈夫だと思っていたのに」「また逃げなければ」
そんなことを錯乱気味に口走っていた。
私はまた始まったと思い、「いい加減にしろ!」と母親を罵倒した。
住職はそんな私を怖い目で睨み付けたが、何も言わなかった。
私はうんざりして部屋に戻り、眠ってしまった。

次の日、学校から帰ってみると、離れの前の中庭に護摩壇がしつらえてあった。
驚く私の目の前で、白装束に身を包んだ母親が、住職と一緒に護摩壇のすぐ側で、一心不乱にお経を唱えだした。
時折水を浴び、また護摩壇に向かう。それを何度も何度も繰り返していた。
私も最初は呆気にとられてその光景を見ていたが、すぐに馬鹿馬鹿しくなってしまい部屋に戻った。
しかし、部屋にいても、外からはお経や掛け声が聞こえてくる。
心底うんざりした私は、寺を出ると友達の家に泊まりに行った。

次の日の朝。寺に戻ってみると、驚いたことに母親はまだ同じ事を続けていた。
私は母親を止めようとしたが、住職やほかの坊主に阻まれ、
あまつさえ「昨日は何処へ行っていたのか」などと詰問された。
呆れかえった私は、なおも詰め寄る住職を無視して部屋に戻り、学校に行った。

そんな事が3日ほど続き、疲れ切った母親はぶっ倒れて、自分の部屋で寝込んでしまった。

次の日、母親は部屋で首を括って死んだ。
私は悲しみと同時に怒りを感じた。
母親を自殺にまで追い込んだのは、この寺のせいだと思った。
素人の母親が荒行を3日も続けたことにより、心身共に疲労困憊して精神に異常を来し、ついに自らの命を絶ってしまった。
その時の私はそう確信した。
葬儀が終わった後、私は住職を捕まえて、母親に対する仕打ちを非難し、
寺での生活について口汚く罵った挙げ句、半ば飛び出すように寺を出た。


240 :長文スミマセン4/8:03/02/14 17:23
高校を中退した私は、職を変えながら各地を転々として過ごした。
大型免許を取ってからはトラックの運転手を始めたが、一所に落ち着くことはなかった。
幼い頃の引っ越し三昧が、尾を引いていたのかもしれない。

そんな私にも転機は訪れた。
勤務先の会社でバイトの女の子とウマが合い、付き合っている内に子供が出来た。
すでに同棲はしていたし、その頃は好景気で私の稼ぎも安定していたため、
いっそのこと結婚してしまおう、ということになった。
私が天涯孤独の身であったことが、向こうの親には気がかりだったようだが、
子供が出来たという既成事実と、それまでの堅実な暮らしっぷりもあって、結婚はスムーズに決まった。

やがて子供が生まれ、私もこの地で腰を落ち着けていることを実感するようになった。
長距離のドライバーだったので、家を空けることが多かったものの、
休日に妻や子供と戯れている時などに、かつて味わったことのない家族の温もりを感じた。
その頃の私は、この幸せがいつまでも続いて欲しいと切に願っていた。


241 :長文スミマセン5/8:03/02/14 17:24
ある日、不意に夜中に目が覚め、何だか嫌な感じがして眠れなくなった。
隣では妻と2才になる子供が眠っている。
しばらくその姿を見ている内に、何か視線のようなものを感じて天井の隅に目をやった。
そこに濃い影ができていた。
部屋は豆球の明かりでほんのり明るいのだが、その一角だけが光が届かないかのように真っ暗になっている。
目を凝らしてみると、その奥で何かが蠢いているようにも見えた。
不意に母親の言葉を思い出した。
『黒いやつが真っ先に見つける』『黒いやつが来た』
私はバカげた考えを振り払おうとしたが、上手くいかなかった。
眠れぬままに、そこを見つめながら朝を待った。
影は外が明るくなると次第に薄れていった。私は寝不足のまま仕事に向かった。

翌日の夜も影は現れた。
相変わらず、そこからこっちをじっと見ているような視線を感じる。
その夜も眠れなかった。

次の日は仕事が休みだったため、私は病院へ行った。
医者は「ストレスからくる幻覚だろう」と言い、「しばらく仕事を休んではどうか?」と提案した。
私が「それはできない」と言うと、薬を出してくれた。

薬を飲んだにもかかわらず、夜中にまた目が覚めた。
部屋の隅を見ると、黒い影がまたこっちを見ている。
気のせいか、前の日よりも大きくなっているように見えた。
ふと、背中に気配を感じて振り向くと、茶の間に鎧姿の武士が立っていた。
面当てで顔は見えないが、こっちを見ている気配は感じる。
すんでのところで悲鳴を堪えた。
「幻覚だ、幻覚なんだ」と必死で自分に言い聞かせながら、妻と子供の方を見た。
妻の布団の上に、白い着物を着た老婆が座ってこっちを睨んでいた。
私は意識を失った。


242 :長文スミマセン6/8:03/02/14 17:25
私の幻覚は日に日に酷くなっていった。
鎧武者や老婆だけではなく、小さい子供や犬のような獣も見えるようになった。
医者に相談しても、「幻覚だ。とにかく仕事を休め」と言われるばかりだった。
「あなたの母親や寺の古い記憶が、類型的な幽霊の姿を作り出している可能性もある」とも言われた。
確かにそう言われればそんな気もする。
私はまた薬をもらって病院を出た。

仕事を休むことを考えながら自転車を漕いだ。
家の近くの大通りにある横断歩道で信号待ちをしていると、
正面から妻が子供を前に乗せて、こっちへ向かってくるのが見えた。
買い物に行く途中のようだった。
妻は私を見つけると、笑って手を振った。
それ見た子供も、こっちに向かって手を振っている。
二人を乗せた自転車は、そのままのスピードで交差点を横切った。
信号はまだ赤だった。
私の目の前で、妻と子供は直進してきたトラックに轢かれた。


243 :長文スミマセン7/8:03/02/14 17:26
そこから先の記憶は酷く曖昧だ。
病院や警察関係者、妻の両親、いろんな人が目の前に現れたけれど、
何を話しかけられ、何を話したのか、全くといっていいほど憶えていない。

気がつくと夜で、私は自宅の寝室で3人分の布団を敷き、自分の場所に横たわって、
妻と子供の居ない布団をボンヤリと眺めていた。不思議に涙は出なかったと思う。
天井を見ると影があった。だが、そんなことはどうでも良かった。
振り向けば鎧武者や老婆もいるのだろう。
それがどうした、というような気持ちだった。恐怖など感じなかった。
また、空の布団のほうを見た。
妻の布団にあの老婆が座っていた。
その時、初めて感情がこみ上げてきた。物凄い怒りと悲しみだった。
何でお前がそこに居るんだ、と。
そこに居て良いのは妻と子供だけだ、と。
ここに居て欲しいのは家族だけなんだ、と。
妻や子供、母親と父親、いたかどうかもわからない姉。

私は叫んだのかもしれないし、暴れたのかもしれないけれど、
朝が来ると部屋はそのままで、足下には3組の布団が整然と並んでいた。


244 :ラストです8/8:03/02/14 17:27
あれから10年以上の時が過ぎた。
私は相変わらず長距離ドライバーをしながら、全国を転々としている。
今年で36になるが、未だに独身だし、結婚するつもりもない。
死ぬまでこの暮らしを続けようと思う。

相変わらず心霊現象には否定的だ。
あの時の事も偶然と幻覚の所産だと、そう思いこんでいる。
死後の世界や怨念なんか信じていない、信じたくもない。
死にさえすれば、意識や感情、思い出も何もかもが無くなるのなら、こんな楽なことはない。
けれど、もし、本当に死後の世界があって、私が幽霊になったなら、
あの世で私の家族を奪った霊を見つけだし、ぶん殴るつもりだ。
672 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/16 19:30
何年か前になるけど、駅で電車を降りて改札に向かう途中で、女の人にぶつかった。
女の人はそのままホームに向かって行った。
そのまま改札に向かおう としたら足元に携帯が落ちてて、ちょっと蹴飛ばしてしまった。

多分、さっきの女の人のだろうと思って、後を追ってホームに行ったら、丁度電車が入ってきた。
女の人は列の先頭にいた。が、急にフラッと前に倒れて、線路に落ちていった。
あっと思ったときは間に合わなくて、もうだめだと思ったが、ブレーキ音も悲鳴も聞こえない。
それどころか、誰もこのことに気付いてない様子・・・。

電車を見送って呆然としてると、突然後ろから声が!
我に返って振り ると、駅員だった。
駅員は「大丈夫ですか?」と一言。
「ええ、ちょっとボーっとしてたみたいで・・・」と答えると、
駅員は「いえ、手から血が出てますが・・・」
見ると、拾ったはずの携帯電話は無くなり、指 が切れて少し出血してました。

849 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/17 18:00
今から十数年前に、私の身に実際に起きた出来事です。

その日、私は仕事が遅くなり、自宅のアパートへ帰り着いたのは夜10時前でした。
早速風呂へ入ろうと思いましたが、あいにく共同風呂のボイラーが故障中で、2,3日は入れないという事だったので、
近所の銭湯へ行くことにしました。

そこの銭湯は営業時間が10時までで、
そのせいか、番台には婆さんが座っていましたが、脱衣所には他に誰もいませんでした。
私は何であれ終了間際の雰囲気が大の苦手なので、風呂場に入るなり、猛スピードで頭を洗い始めました。

カラカラと、風呂場のガラス戸が開く音がしました。誰かが入ってきたようです。
足音が私のすぐ後ろを横切って、湯船の方へ向かいました。
ザァー、ザァーと、湯を浴びる音が聞こえてきました。
頭の泡を洗い流して湯船のほうをチラっと見ると、確かに誰かが入っています。
ただ、極端に目の悪い私には、湯船の人影はボンヤリとしか見えませんでした。
と、その男がこっちに声を掛けてきました。
「・・・しかし、この辺りもえらい変わっていまいましたなぁ」
どうやら、久しぶりにここらへやって来た人のようです。
それをきっかけに、私とその人影はしばらく言葉を交わしました。
細かい内容は忘れましたが、確かこんな事を言っていました。
「古い友人がここらに居りましてな。そいつに大きな借りがあったんで、それを返そうと思って・・・」
一緒に湯に浸かりながら、5分ほど話を続けたのですが、
営業時間の事が気になった私は、先に風呂場を出ることにしました。

脱衣所へ出て驚きました。いつの間にか電気が消え、真っ暗になっています。
番台に座っていたはずの婆さんも居ません。
もう閉めたんかな?そう思い、慌てて服を着ました。
帰り際に風呂場の方を見ると、さっきの人影が今まさに出てくる様子で、
こっちへ近づいくるのが、ガラス戸の曇りガラス越しにボンヤリと見えました。


851 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/17 18:06
外へ出ると、表にパトカーが一台止まっていました。
なんやろ?立ち去ろうとした私に、警察官が話しかけてきました。
「おい、こんなとこで何してるんや?」
「何て、風呂入りに来ただけですやん」
警官は妙な顔をしました。
「風呂って、今日はここ営業してないぞ」
「え、でもさっき僕入りましたよ、おばちゃんに金払ろて・・・」
「おばちゃんって、ここの婆さんか?」
私が頷くと、警官は背を向け、背広の男を呼んできました。
その男は私に向かって言いました。
「ここの銭湯の爺さんがね、今日の昼1時頃に灯油かぶって自殺しよったんですわ。
 すぐ通報があって、私ら1時半にはここへ来ましてん。
 あんたがさっき、番台におった言うたお婆さんな、
 可哀想に、わしらが着いた頃には気ぃ狂てしもて、今病院ですわ」
私はあ然としました。
「そんなアホな。一緒に・・おじいさんも入ってたんですよ」
「おじいさん?」
「そういや、まだ出てきてないみたいですね・・・」
そう言って、私は警官達と一緒に銭湯の中に入りました。

やっぱり脱衣所は真っ暗でした。あの人影はどこにもいません。
風呂場のガラス戸を開けると、湯気がモワっと出てきました。
「おい、これ見 てみぃ」
警官の一人が床を指さしました。
見ると、泥だらけの足跡が湯船まで続いています。
その先の湯船の外に、子供用の古い靴がきちんと並んで置いてありました。

一応これで終わりです。
なんだか良くわからない話を長々とスミマセン。
あったことをそのまま書くと、こうなってしまうんです。
自分的には、これが今までで一番洒落になってない体験です。
148 :経験者:2001/08/ 07(火) 05:04
この事件がおこるまで、俺は心霊現象肯定派だった。
でも今は肯定も否定もしない。

今から12年前、俺は仕事の都合で部屋を引っ越す事になった。
その部屋は会社が用意したもので、引っ越し等も全て業者にまかせ。

引っ越しが完了して、初めてその部屋に入った。
ドアを開けたその瞬間、すごい線香の臭い。そして今まで感じたことのない寒気。
これはかなりやばいかもと自問自答しながらも、奥の部屋に荷物を置いた。
間取りの確認をするように俺は部屋を見渡し、取りあえず自分の寝る場所と、くつろぐ場所を決めた。
この部屋の間取りは2Kで、玄関を入るとすぐ左手に4畳半の台所、そして奥には6畳間がふたつ。
手前の6畳間をくつろぐ場所に、奥の部屋を寝る場所と決めた。

荷物の整理をする間もなく、俺は追われている図面書きを始めた。
普通ならこんな嫌な感じのする場所で仕事などする気にはなれない。
でも、当時の俺は駆け出しで、他のことを考える余裕など一切なし。とにかくひたすら図面を書いてた。

それから3時間が経過して、腹が減ったなと思い時計を見ると11時半。
飯食ったら寝なきゃ。そう思い台所に向かおうとした瞬間、俺の体は凍り付いた。


149 :経験者:2001/08/07(火) 05:05
ガラス戸の向こうに誰かいる。
曇りガラスのために誰なのかは分からない。
ただ直感的に、人じゃねーよなと思い、開けるべきかほっとくべきか・・・でも腹は減っている。
それに今、ここの部屋の主は俺じゃん。自分にそう言い聞かせて開けることにした。
嫌だなと思いながら、俺はガラス戸をひいた。
そして次の瞬間思った。やめときゃよかった。
目の前にいたのは、身長180ほどの男。
季節は8月なのに黒いコートをまとい、眼球の飛び出した目で俺を見ている・・・
あまりに目が怖いので、俺は視線を下にそらした。
すると首からはおびただしい血。やばいかもと心の中でつぶやいてると、耳元で声がした。
「ここは俺の部屋なんだけど、あんた誰」
そう言われた瞬間、俺はガラス戸を引いていた。
どうすりゃいいんだよ。
助けを呼ぼうにもまだ電話は引いてないし、今と違い当時は携帯など普及もしてなかった。
逃げるしかない。でもガラス戸引けば男が立ってるし・・・
だからといって、この部屋ではさすがに寝れん。やっぱ出ていくしかない。

仕事道具と軽い身の回り品をまとめて出る準備をして、
俺は恐る恐るガラス戸を引き、男とは目を合わせないようにしながら男の横をすり抜け、
玄関の扉を開きながら、思わず「失礼しました」と言いながら扉を閉めていた。我ながら情けなかった。


150 :経験者:2001/08/07(火) 05:06
その日は仕方なく、駅前のカプセルホテルに泊まることにした。

翌日、会社に向かい、アパートを借りた担当にそれとなく聞いてみた。
担当は「駅からも近いし、部屋数の割に値段が安かったから」。理由はそれだけらしい。
俺は担当の前で大きくため息をつきながら「そうですか」。それしか言えなかった。
『変なのが出るんで部屋を代えてくれ』などとは言えない。
言ったところで誰も信じないだろうし。

この事件に遭うまで自分は色々な現象を体験したが、怖いと心底思った事はなかった。
でも今回は心底恐ろしかった。
一人ではとてもあの部屋に戻ることはできない。
そう思い俺は、中学からの親友の二人に連絡をとり、相談に乗ってもらう事にした。

仕事が終わってから喫茶店で落ち合うことにして、俺は喫茶店で二人を待っていると、先にBがきた。
Bは俺と同じで、多少の霊感のある奴だった。

しばらくしてAがきた。
AはBとは違い心霊現象とは無縁で、筋金入りの否定派で、
科学で証明できない物は起こるはずがないと、いつも俺達のことを否定する奴だった。

俺は二人に昨日起こった事を一部始終話した。
反応は俺の予想どおり、Aは「アホかっ」の一言。
Bは神妙な顔で、「お前がそこまで怖がるのは初めてだな」。
そう言い終わるとBは、「わかった。今日一緒に行って調べてみるか」。
Bの言葉を聞いてAは、
「俺のほうは、行けるとしても明日からだな。今日はこの後、彼女んとこ行かなきゃ行けないからさ」
俺とBは了解した。


151 :経験者:2001/08/07(火) 05:07
それから30分ほど話してからAは出ていき、俺とBも喫茶店を出てアパートに向かうことにした。

そして問題のアパートに到着し、玄関の前に立った途端Bは一言、「こんなの初めてだよ」。
すでにBの顔からは汗が吹き出していた。
俺は鍵穴に鍵をさしながらBに、「開けるよいいか」。Bは俺を見てうなずいた。
昨日と同じように線香の強烈な臭いが鼻をついてくる。Bも「すごい臭いだな」と言いながら部屋に上がった。
昨日の事もあり二人とも土足だった。

俺とBは台所を抜けて、すぐに6畳間に向かった。
6畳間に入るとBは、「お前の言う通り、台所普通じゃないね」と、俺のほうを見ながら呟いた。
部屋に入るまでの道すがら、俺とBはどういう対処法でいくか相談していた。
所詮素人に出来る対処法などたいした事はなく、
前の部屋で使用していたお札をガラス戸に貼り、清めの塩を台所の4角に盛ることにした。

二人で怖々と台所に塩を盛り、奥の6畳間に戻る。
ため息混じりにBは、「効けばいいけどな」と呟いた。俺としても効いてくれれば言う事はない。
昨日得体の知れない奴が出たのが11時すぎ。
また同じ時間に奴は現れるのか、そう思いながら時計を見ると、まだ9時10分すぎ。
その時、自分の中ではまだ何も起こらないだろうと思い、Bと雑談をしながら気を紛らわせようとした。


152 :経験者:2001/08/07(火) 05:08
5分ほど経っただろうか。
その時、いきなりガラス戸が揺れ始め、しだいに激しくなり、もの凄い音でガラス戸を叩く音へとかわった。
二人ともガラス戸を見つめながら後ずさりをして、部屋の奥へ奥へと進んでいた。
奥に行くと叩く音はピタッとやんだ。
二人で顔を見合わせた次の瞬間、今度は二人の背後の窓がいきなり開いた。
鍵も開けてないのに何故?そう思いながら今度は、二人ともガラス戸の方にたじろいだ。
思い切り開いた窓を見つめながらBは、「なあ、これ洒落にならねーよ。部屋から出たほうがいいよ」。
そう言った瞬間、ガラス戸の上の窓が割れた。
そうなると当然、二人の視線は割れたばかりの窓に移る・・・
割れた窓の向こうには、昨日俺が見た奴の目が二人を睨んでいた。眼球の飛び出したあの目で。
俺はBに「逃げるしかねーぞ」と言いながら逃げる場所を探した。
でも、どうしても出口は玄関のみ。あとはいきなり開いた窓しかない・・・行くしかない。
ここは二階。飛び出しても大怪我はしないだろう。
部屋の電気を消し、先にBを出してから、自分も下を確認せずに飛んだ。
無事部屋から出た二人は、大通りに出てタクシーをつかまえ、一目散にBの住むアパートに向かった。

部屋に向かう途中のタクシーの中で、二人は会話をする事もできないほどおびえていた。

Bの部屋に到着し、落ち着こうと思い煙草に火をつけた。
そしてBも落ち着いたのだろう、ひきつった笑いで「あの部屋どうすんの」と聞いてきた。
「無理。あそこでは住めない」
俺はそう答えるしかなかった。
その晩は二人とも、これ以上の会話はなかった。

一晩Bの部屋で過ごし、その日が土曜日という事もあり、週末をBの部屋にいる事にした。
二人とも会話もないまま昼飯を食っていると、Bの部屋の電話が鳴った。
Aからだった。今からBの部屋に来たいという。きっと昨日の話が聞きたいのだろう。
Bはそう言いながら受話器を置いた。


153 :経験者:2001/08/07(火) 05:12
それから2時間程経過したころ、Aはやってきた。
Aはやけに嬉しそうに、「二人ともここに居るって事は逃げたの」。
そう言うといきなり真顔になり、「情けなさすぎないか」。
それを聞いたBは怒りだし、「見えねー奴にはわかんねーだよ」。
今にも掴みかかりそうなBをなだめ、
俺はAに、
「俺達二人が、簡単に逃げ出したことあったか?
 他の奴がビビって逃げ出しても、俺達は逃げたことなんてねーんだぞ。お前もそれはよく知ってんだろ。
 その俺達二人がここにいる。それだけで理解できねーか」
俺もかなり切れそうになるのを押さえながらまくしたてた。

そして落ち着いた所で、昨日のことをAに説明し、俺は二度とあの部屋には戻らない事をAに告げた。
するとAは、
「仮に戻らないとしたら、新しい部屋を借りなきゃいけないんだろ。
 そしたら、自腹で借りる事になるんじゃねーの。
 馬鹿げてる。何で起こるはずのない現象にビビって、そんな無駄金を使う必要があんだよ」
今度は逆にAのほうが切れそうだった。
その時、俺は思った。見えない人間、理解しない奴にしてみれば、どれだけ馬鹿げた事か。
居るはずのない物に対しておびえ、挙げ句の果てには逃げだそうとしている。Aには理解できるわけないか。


154 :経験者:2001/08/07(火) 05:14
話が進んでいくと、Aは俺に向かいながら、
「俺が確認する。それだけの事が起こるなら、俺にも見えるはずだろ。そしたら俺も納得するよ」
Aのその言葉を聞いたとき俺は、あれだけはっきりした現象が起きたんだ。
いくらAに霊感がなくても、少しは何かを感じ取れるかもしれない。
もしAに見る事ができたら、逃げ出す気持ちも分かるだろうと。
でも、それが全ての間違いだった。

それから三人は、9時頃に俺のアパートに着くように、調整しながら向かうことにした。
それでもBはかなり嫌がっていたのだが・・・

8時40分。思ったよりも早く着いた。心なしかAは楽しそうだった。
階段を上り部屋の前に着いた時、Aの表情が変わった。それはまるで喧嘩の前の表情だった。
俺はAに「喧嘩でもしそうな顔だな」と言うと、
Bは「やめねーか。やっぱ、今までと違いすぎんだよここは」。
Aはそれを聞いて、「いつものBはどうしたよ。喧嘩の時はそうじゃねーだろ。いつものお前らしくもねー」。
そう吐き捨てるように言いながら、「ならお前はここにいればいい。開けるよ」。
Aは俺に相づちをうち、ドアを開けた。
何事も無いかのようにAは台所をすぎ、6畳間に進んでいき、俺もその後を追い部屋に入った。


155 :経験者:2001/08/07(火) 05:15
「何ともねーじゃん」
俺を見ながらAは笑い出した。
しかしAの笑いもそこまでだった。
笑っているAを見て俺はたじろいだ。
Aの背にしているガラス戸の向こうで、あの得体のしれない奴がまたここを見ている。
すでに言葉にならない俺はAの背後を指さし、それに気づいたAもガラス戸に視線を移した。
きっと見えたであろうAは、俺のほうに後ずさりしている。
後ずさりしてきたAの肩が俺の肩とぶつかる。
俺は必死に声を出し、「窓から逃げるぞ」。そして二人で窓に向かった。
窓は昨日のままで開いている。
二人が動いた瞬間、今度は逆に窓が閉まってしまった。
行き場を失った二人は、そこに立ちすくむ事しかできない。
立ちすくして居ると、Aの様子がおかしくなってきている。
いきなりおびえながらその場に座り込んでしまい、「やめてっ、やめてくれ」と叫びながら、何かを振り払おうとしている。
Aは何を見ているんだ。
そう思い、Aの振り払おうとしている場所を俺は目を凝らして見ようとしたが、俺には見えない。
俺に見えるのは、ガラス戸の向こうに居る奴だけ。Aはまったく別のものを見ている。


156 :経験者:2001/08/07(火) 05:16
俺は必死にAをなだめた。でもどんどん酷くなっている。
Aの普通ではない声を聞いて、Bが玄関を開けてくれた。
とっさに俺はBに「そこの盛り塩をここに投げろ」と叫んだ。
Bは塩を取り、一直線に投げてくれた。
その瞬間、得体の知れない奴は消えた。
そして俺はAを担ぎ上げて玄関に向かい、何とか部屋を後にした。

Aを担いだまま階段を下り、一旦その場に降ろし、Aの様子を見た。
だが、Aのおびえは止むことはなかった。
Aの様子を見て、俺は病院に連れていくことにした。
しかしBは、「医者には何て言うんだよ」と泣きそうになりながら言った。
でも「俺達にはなにもできない。だから連れていこう」と、Bをなだめながらそう言うのがやっとだった。

大通りに出てタクシーをつかまえ、「○○病院まで急いでくれ」。
そう運転手に告げると、運転手はAを見ながら「他のタクシーにしてよ」。
それを聞いたBが怒りだし、「てめー乗車拒否すんのかこら」。
そう言って、運転手の座っている座席を後ろから思い切り蹴りつけ、
運転手も二人の殺気だった顔をみて観念したのか、「分かりました」。
そう言いながら○○病院に向かってくれた。


157 :経験者:2001/08/07(火) 05:17
病院に着き、俺はAを抱えながら急患受付に向かい、事情を医者に説明した。
すると医者は疑わしそうに俺を見ながら、
「取りあえず安定剤で落ち着かせましょう、一晩たてば落ち着くでしょうか」と言いながら処置室に向かった。
そう聞いた俺とBは安心し、一晩病院で過ごすことにした。

病院の待合室で俺とBは仮眠を取らせてもらい、朝が来るのを待っていた。

医者に肩を叩かれて俺は目を覚ました。
医者は俺に「どうもおかしな事になった」と告げると、
「昨日の事をもう一度詳しく聞かせてくれ」と言った。
全てを聞き終わった医者はため息をつきながら、
「彼の精神状態が、何らかのショックでおかしくなったかもしれないんだ。
 これから別の病院に搬送して、詳しく見てもらおうと思う」
俺は震えだしてしまった。
これからどうすればいい。
Aの親に何て説明すればいいのか分からないまま、Bと共にAの搬送される病院に向かった。


158 :経験者:2001/08/07(火) 05:18
この事件の後、俺はAの両親から訴えられ、警察に尋問された。そして精神鑑定も受けさせられた。
そして今現在、俺はAの両親に、慰謝料として毎月10万の支払いを続けている。
あれから12年。Aとは会話ができないまま。
あの時やめておけば、Aをこんなめに遭わせる事はなかったのに。

心霊現象について、俺はこの事件で色々学んだと思う。
信じられない人にしてみれば、馬鹿げた事でしかない。
俺はそれを周りに信じてもらうことは出来なかった。
一部の人には信じてもらえたが、ほとんどは認めない。
それが普通なんだと思う事にして、否定もしないだけど肯定もしない。