昨日の続き。
多分人身売買じゃないだろうし、何も言わないで忘れるのが一番なのかな。
でもあれは母子じゃないよね。
だって大人の女性からの愛が感じられなかったよね。
あの女の子怯えてる感じだったよね。
フライトアテンダントに、「派手な爪とメイクアップの40代くらいの女性と、肌の色が濃い、女性とは雰囲気が合わない女の子。」と言ってありましたが、すぐに誰か分かったみたいでした。アテンダントからの報告は「女の子は目が赤くて、悲しみに包まれているようだけど、その理由が何かは分からない。」、「最初は女の子が寝ていて、今は女の子は起きているが、女性が寝てる。もし犯罪者だったら、女の子が助けを求めないように、起きて見張っているのでは。」でした。
なるほど。
しかし他のクルーメンバーから、「間違っているかもしれないけど、チェックしてもらうことに間違いはないと思いますよ。チェックしてもらわなかったら、心配で眠れないかもしれませんよ。」と助言がありました。
そうだな。私、誰の気持ちを心配しているんだろう。女性が気を悪くするのを心配してるんだな。女性には悪いけど、女の子の安全のためにお願いしようかな。人身売買の救助の場合、被害者が20代の女性ということも少なくありませんが、今回は7ー10歳くらいの子供なので、余計に大人の気遣いが必要です。
最終的には機長の判断で、上空より警察と人身売買の訓練を受けている会社の人に、到着口に来てもらうよう無線で要請しました。
到着口には、警察官二人、スペイン語を話せる会社の人たちが二人待機していました。女性と女の子は飛行機の後方に座っていたこともあり、たくさんの乗客が飛行機を降りる中、私もすぐにコックピットからジェットブリッジに出て状況を説明しました。
「間違っているかもしれないけど、母子とは違うと思うし、すみませんが確認をお願いします。」
女性と女の子が降りるときに、フライトアテンダントが彼女らの背後から、警察官に「この人たち。」という感じでジェスチャーで伝えました。その後、ジェットブリッジを上がって、搭乗口のエリアで事情聴取をしたようです。
結果。
母子ではありませんでしたが、人身売買ではありませんでした。
アメリカでは、南からたくさんの移民の人たちがグループで国境を越えてきます。家族の同伴がない小さい子供たちもいて、性犯罪などのリスクも大きく、いろいろな面で大変危険な道です。保護された子供たちの身分の確認は時間がかかりますが、国内に家族や親戚がいると分かった場合は、業者や団体の人たちが子供を家族の元に連れて行くのです。この派手な女性は、グループに混じって国境を越えた女の子を、フロリダにいるお父さんの所に連れて行く最中だったようです。ヤヤコシイナ。警察官は、この女性が持っていた書類を見せてもらったそうです。ニセモノジャナイヨネ。 スペイン語を話す、うちの会社の係の人たちは、女性とも子供とも別々に話を聞くことができたそうです。女の子はおとなしく、とても口数が少なかったそうです。
結果的に警察を呼んで良かったと思いました。上記の事実を知らなかったら、このまま一生女の子の不幸を想像して、警察を呼んであげられなかったことを後悔していたと思うからです。それと同時にこの数ヶ月間、10歳前後の子供がどんなに険しい道を通り、どれだけ不安な気持ちだったのかを考えると、胸が張り裂けそうな思いでした。この女の子が幸せな人生を送れますように。
次回は、この件に関する余談を書きます。三日間、ものすごい早起きで大変疲れました。