10月末に おもちゃ病院のドクター向けトランジスタ回路セミナーの第6回目を開催しました。
前回は発振回路のセミナーだったので、回路についてはほぼ終了。
今回はおもちゃにもよく使われる、赤外線リモコンの原理を説明します。
いつものように、トランジスタ(バイポーラトランジスタ)回路の説明と手を動かして
組み立て・実験するハンズオンの形態で、2名の方が参加、講師の私も含め4名で行いました。
題目:トランジスタ電子回路セミナー 第6回 電子回路中級編 赤外線リモコンの原理を学ぶ
日時:10月25日(土) 13:00~15:00
場所:筑紫野市 カミーリヤ 2F 研修室
かるく前回の発振回路の復習をした後、赤外LEDと赤外センサ(ダイオード)の説明をします。
まずは可視光と赤外光の違いについての説明を、人間の目の比視感度特性のグラフで説明します。
光の波長は緑が550nm, 青が450nm, 赤が650nm前後です。
それ以上、それ以下の波長の光はグラフのとおり、人間の目で見える感度は大きく下がります。
今回使用する赤外LEDは940nmですから、人間の目では見えない領域の光になります。
Vfは1.8V程度で、赤色LED等より少し低い程度でほぼ変わりません。
次に赤外フォトセンサとしての赤外ダイオードの説明に入ります。
赤外センサとしては、赤外フォトトランジスタもあるのですが、現在ではあまり使われることはなく、赤外ダイオードがセンサとして使われています。
使い方としては、ダイオードに逆バイアスをかけて漏れ電流を検出します。
赤外光の照度(lx)にほぼ比例して漏れ電流が大きくなるので、この漏れ電流を増幅する
回路を作ればいいわけです。ただし、可視光も検出するので注意が必要です。
通常は赤外フィルタでカットしますが、Aliで買った低価格品は、7~80%だと思われます。
さて、座学は眠くなるので、手を動かしてハンズオンを始めましょう。
まず前回作成したマルチバイブレータのLEDフラッシャの片方を赤外LEDに変更します。
負荷抵抗R4 も1kΩから220Ωにして、赤外LEDに5mAと少し電流を多めに流します。
LEDフラッシャの改造説明
ブレッドボードは前のLEDフラッシャを流用します。
片方が光るから、動作が分かりますね。
さぁ、できました。
光っているかどうかは目では見えないので、デジカメかスマホで確認しましょう。
しかし参加者から「光ってない! 」との声が。
そんなはずはない、と自分のスマホ(古いxiaomi) で確認するとちゃんと見えています。
参加者のスマホはiphoneでした。
赤外カットフィルタのせいでしょうかね。色再現性を重視すると、赤外光は禁物です。
人間の目の持つ比視感度と同じにする必要がありますからね。
家に帰って、デジカメ(IXY-650)で見てみました。手前のスマホよりかなり強く検出できますね。
さて、赤外光を発光できるようになったので、次は赤外ダイオードを使って
赤外センサ回路を作りましょう。
こちらが赤外センサの回路です。
逆に電圧をかけた赤外ダイオードの漏れ電流IbをQ1 2SC1815でIb x hFEで増幅して、
その電流をさらにQ2 2SA1015 PNP で増幅して赤色LEDを点滅させます。
2段目の増幅率は、RLが1kΩ、 電圧増幅率AV=RL/re(エミッタ内部抵抗) となり、LED
に1mAくらい流れる設計なので、re≒25mV/1mA=25Ω。AV=1000/25=40倍になります。
増幅率が大きすぎる場合は、Q2のエミッタに100Ωをいれると2段目の増幅率は10倍
くらいになるので、LED点灯に暗電流の影響が少なくなってちょうどいいかもです。
ブレッドボードの下側に赤外センサ回路を組みます。
動作確認をすると、やはり外光を検出しての漏れ電流が大きいのか、うっすら光ってますね。
でも、赤外LEDを近づけるとLEDがフラッシャの周期で点滅するのが分かります。
やはり赤外カットフィルタが入ってないセンサでは、赤外光の検出は苦しいですね。
つぎに赤外リモコン送信機を使って、リモコンコードの検出を行います。
オシロを使って波形をみてみましょう。(回りを暗くして測定しています)
LEDのVfと漏れ電流で、”L"時の電圧が2V+α くらいあります。
応答速度”H"→”L"もあまりよくありませんね。
赤外リモコンのコードは、NEC、家電協(AEHA)、SONYが代表的ですが、今回はNEC
フォーマットのリモコンを使いました。

NECフォーマットでは、先頭のリーダ部として9mSの”H”と1.5mSの”L”で、その後が
データ部になります。
データ部の”1”と”0”はH/L DUTY 50%が”0”、H/L DUTY 25%が”1”で検知します。
H部はいずれも560uSです。
データ部はカスタムコード 16bitとデータ 16bit(データ8bitと反転8bit) で構成されます。
外光の影響を防ぐために、信号の”H"部は38kHzで変調されています。
オシロでみると、1周期はリーダ部も含めて70mSくらいになっていますね。(1/0で変化)
なおトランジスタチェッカでも赤外リモコンのコードを検出することができます。
NECフォーマットでも、パナソニックの家電協でも、どちらもデコードします。
さて、つぎは我々が取り扱うおもちゃの赤外線リモコンのフォーマットです。
手元にないのですが、つつじが丘おもちゃ病院の大泉院長のブログから情報を拝借しました。
38kHzのバースト変調はない、は間違いで後述する赤外センサICで検知するようです。
いずれにしても、デコードのしようがなく、オシロを頼るしかなさそうですね。
最後に、赤外線センサIC(モジュール)で、赤外リモコンの信号を検出してみましょう。
こちらは時間不足でしたので、セミナー参加者には宿題になりました。
回路図は3本線があるだけなので、簡単です。
電グラさえ、間違いなければ完成です。
ブレッドボードも簡単ですね。
オシロで波形を見てみました。
1周期の波形(10mS/div) 先頭を拡大した波形(2mS/div)

安定して、”H"、”L”のレベルがでるようになりましたね。
最後に、ATTINY85を使って赤外信号をデコードする実験です。
興味があるかたは、下記のtechnoblogyさんのリンクを参考にして作ってみてください。
IR Remote Control Detective

Youtubeに、このIRリモコン検出器を使った、赤外リモコン動作確認のビデオをアップしました。
過去のセミナー
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第1回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第2回)
おもちゃ病院でトランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 前半)
【おもちゃ病院】トランジスタ回路ハンズオンセミナーを実施しました(第3回 後半)













