こんにちは。
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
今回レビューするのは、2026年に最も注目されるカーボン搭載トレイルレーシングシューズの一つ、アディダス「アディゼロ アグラヴィック スピード ウルトラ 2(adidas Terrex Agravic Speed Ultra 2)」です。
ロード用エリートランナーモデル「アディオス プロ 4」の技術をトレイルへ落とし込んだ一足として話題になっていますが、トレイルでの走りはどうなのか。
僕のレーストレイルランニングシューズで、前作は20kmから50kmまでほとんどのレースで使用し、約400km履き込みました。
前作からクッション性や反発、走行性能に大きな変更はありませんが、前作で不評があったフィット感やかかとのホールド性などを改善した、マイナーアップデートモデルです。でも、僕にはそれが大事で十分な改善です。
正直、履き心地がどう変わったか、そしてトラブルが起きないか、それがわかれば十分でした。
今回は実際に履いて感じたことに加え、海外レビューやテスト結果も参考にしながら詳しく紹介します。
■ デザイン|ロードのスーパーシューズをそのまま山へ
箱から取り出して最初に感じたのは、
「速く走れそう!」
アディダスらしい三本線のデザインに、厚みのあるミッドソール、トレイルランニングシューズの中でも一目で「競争志向の強い人向けモデル」「勝負レース用モデル」とわかります。
■ サイズ感・フィット感|前作より格段に履きやすくなった
新作が出たことにより前作が大幅値引きされていますが、前作を履いていた方は、2の方が断然おすすめです。なぜなら前作はサイズ感が微妙で、人によって評価が分かれましたが、今回は一般的なサイズ感へ見直されているからです。
特に大きく改善されたのが、かかと周りです。前作では「かかとが浮く」「くるぶしが擦れて痛い」といった声が少なくありませんでした。
僕自身も、くるぶしの擦れを防ぐために履き口へテープを貼って使っていました。Instagramで同じように履き口へテープを貼っているランナーを見かけ、「問題を抱えているのはやっぱり僕だけじゃなかったんだ」と思わず笑ってしまい、その人にコメントしました。それだけ、この部分は前作の共通した課題だったのだと思います。
しかし、今作ではかかと周りのクッションや形状が見直され、ホールド感が大幅に向上。実際に下りでも足がシューズ内でズレる感覚はほとんどなく、前作で気になっていた不満点はしっかり改善されていると感じました。
一方で、つま先は細めの設計です。そのため、幅広の足の方はハーフサイズアップも含めて試し履きをおすすめします。
ただし、サイズ感には個人差があります。実際、僕はロード用のアディオス プロ 4では28.5cmがジャストサイズですが、このアグラヴィック スピード ウルトラ 2は28.0cmを選びました。
■ スーパーシューズ級の反発力
このシューズ最大の魅力はミッドソールです。アディダスの最高級フォーム「Lightstrike Pro」を全面に採用し、トレイルランシューズとは思えないほど高い反発力があります。
さらに内部には「Energy Rods」を搭載。カーボンプレートとは異なりますが、推進力を生みながら必要な柔軟性も確保しています。
ミッドソールに刻まれた「30°」の文字。これはロッカー構造(前へ転がる形状)の角度を表しています。身体を少し前へ倒すだけで自然に足が前へ転がり、スムーズに次の一歩が出ます。特に疲労がたまる後半ほど、このロッカー構造の恩恵を感じやすいでしょう。
立っているだけでも、身体が自然と前へ転がるような感覚があります。そのため、移動中や街中を歩くのには、かなり不安定さを感じます。このシューズはレースのほとんどを「歩くため」ではなく、「速く走るため」に設計されたレーシングモデルです。
■ 厚底なのに軽い|ウルトラ向け
ソール厚はヒール44mm、前足部36mm。
現在のトレイルシューズの中でもトップクラスの厚底です。
それでいて重量は約287g(28.0cm)、平均では約265〜269g(27.0cm)。
実際に履くと、数字以上に軽く感じます。
ドロップは8mm。
アキレス腱やふくらはぎへの負担を抑えながら、自然な足運びをサポートしてくれます。厚底シューズにありがちな不安定さも少なく、安心してスピードを出せるバランスの良さがあります。
■ アウトソール|Continentalラバーの安心感
アウトソールには、アディダスのシューズでは定番のContinentalラバーを採用。前作よりラグ(突起)が少し深くなり、グリップ性能も向上しています。乾いたトレイルはもちろん、濡れた岩場でも安心感があります。ここも大きな改善ポイントです。
海外のトレイルランニング世界大会UTMBなどでの使用レビューでも、高いグリップ性能を評価する声が多く見られました。一方で、ラグは極端に深いわけではなく、雨で泥んこのコンディションや雪山では、ほかのモデルのほうが適しているでしょう。
■ 実際に走って感じたこと
このシューズが最も力を発揮するのは、「走れるトレイル」です。林道や整備されたシングルトラック、緩やかな下りでは、とにかく前へと進みます。ロードのスーパーシューズに近い感覚で、スピードを維持しながら長時間走り続けることができます。
一方で、苦手な場面もあります。
急な岩場やターン、細かな足さばきが必要なテクニカルコースでは、この高い反発力に少し慣れが必要です。
また、強いかかと着地のランナーよりも、ミッドフット〜フォアフットで走るランナーのほうが、このシューズの性能を引き出しやすいと感じました。
つまるところ、ロードシューズでもすぐにかかとが大きく摩耗する走りのランナーには向いていない可能性があります。
■ 総評
アグラヴィック スピード ウルトラ 2は、ロードのスーパーシューズのような推進力を、そのままトレイルへ持ち込んだ一足です。
前作よりフィット感も大きく改善され、完成度はさらに高まりました。
こんな人におすすめです。
・100km以上のウルトラトレイルで記録を狙いたい方
・ロードではアディオス プロを愛用している方
・スピードを維持しながら効率よく走りたい方
一方で、
・レース中に歩く時間が長い方(目安として、中盤~後半グループでゴールを目指すランナー)
・練習環境や大会選びがテクニカルな岩場がメインの方
・幅広の足の方
は、購入前に一度試し履きをおすすめします。
価格は決して安くありません。
しかし、性能だけを見ると、現在発売されているトレイルランニングシューズの中でも速さは間違いなくトップクラスです。
「もっと速く走りたい。」
「ウルトラレースで最後まで脚を残したい。」
そんなランナーなら、一度試してみる価値は十分にある一足だと思います。
ぜひ店頭で履いて、この独特のロッカー構造と、前へ転がっていく感覚を体感してみてください。