今度取り上げる種目は、陸上競技の中距離走...800mや1500mになろうかと思いますが、なぜ中距離かというと、ちょうどウチの娘たちが得意とする競技だからです。思いっきり個人的な理由で申し訳ないのですが、まあ、ブログも個人的なものなので許してください。


2.陸上競技-中距離走(800m、1500m)

 スキーとはうってかわってシンプルに“走るだけ”の競技をとりあげます。

 中学校で考えると、800mだとだいたい男子が1分台後半から2分過ぎ、女子で2分~2分30秒、1500mは男子で4分から4分30秒、女子で4分30秒から5分程度のタイムで競われるようです。
 運動強度から考えると、800mは100%VO2maxから120%VO2maxの範囲で行われ、1500mはほぼ100%VO2maxで行われると考えられており、競技者の最大酸素摂取量の限界ギリギリかそれを超える程度で行われる、非常に強度の強い競技であるといわれております。まあ、小難しい言葉を並べましたが、要はとてもキツイ競技ってことです。

 この競技では、おそらく最初は主に体内に貯蔵してあるグリコーゲンや摂取して吸収されたグルコースが細胞内のミトコンドリアに取り込まれ、酸素を消費しながらATPを産生する「解糖系」と呼ばれるエネルギー供給系が利用されます。これはだいたい1分半から2分程度分のATPを供給できると言われております。

 では、それに続くエネルギー供給系は何かというと...解糖系でATPを産生するときに副次的に産生される 「乳酸」 をミトコンドリア内で酸素を消費してATPを産生する、「酸化系」 になります。

 ところで、よく体が疲れたときに、「乳酸が溜まった...」 などという表現を耳にしますが、確かに以前は、乳酸が蓄積することで筋肉が酸性に傾き、結果ATP産生のための各種酵素の働きが弱くなってATPがうまく生み出せなくなる状態を疲労と説明されてきました。しかし、先に説明したとおり乳酸もATPを生み出すための素となる物質であるし、乳酸の蓄積でもそんなに酸性に振れないということがわかっているようです。むしろ、クレアチンリン酸からATPを生み出したあとに残るリン酸が筋収縮のために必須の元素であるカルシウムと結びついてしまい、結果筋収縮がうまくできなくなってしまうということがわかってきています。

 したがって、乳酸それ自体は、疲労物質として取り扱うのではなくて、エネルギーを生み出すために必要な大切な物質として扱うべきだと言われ始めています。その証拠に、フルマラソンのゴール付近で疲労が限界まで蓄積しているようなときに、体内には乳酸がほとんど残っていないということがわかっているそうです。...っと、また話が脱線してしまいましたね...

 ATPを生み出すためにどの供給系を利用するかというのは、実は走る距離でもなく、時間でもなく、運動の強さに依存していることがわかっています。

 通常、解糖系では...ここら辺の話は東京大学教授である八田秀雄先生の著書に詳しいのですが...細かい話はすっ飛ばしてざっくりと説明すると...グルコースからピルビン酸を経てATP産生という道を辿ります。グルコースが細胞質に取り込まれてある反応の後にピルビン酸が生み出され、そのピルビン酸がさらにミトコンドリアに取り込まれてそこでATPが生み出されます。ピルビン酸の産生スピードとピルビン酸の分解スピードには処理能力に差がある(ピルビン酸の産生能力の方が高い)ために、余ったピルビン酸が乳酸に変えられます。しかしながらほぼ同時にその乳酸もミトコンドリア内に取り込まれて酸素を消費しながらATPを産生しており、、安静時に一定以上に乳酸が増えたりということはあまりないです。

 ところが、運動がある強度以上になると、ピルビン酸の処理が追いつかなくなって、結果乳酸が筋繊維中に蓄積され始めます。そのポイントは 「LT(乳酸性作業閾値)」 と呼ばれますが、中距離走は間違いなくLTを超えた運動であって、特に1500m走では乳酸の効率的な利用が勝敗のポイントになりそうです。つまりここからも、乳酸を単なる疲労物質として捉えるのではなく、グリコーゲンに続く重要なエネルギー源と捉え、それをどのようにして効率的に利用するかを考えるのがトレーニングのポイントだと思います。
 ただし、解糖系は細胞質内での反応なのですが、乳酸が消費される場所はミトコンドリア内なので、ミトコンドリアが多く存在しないとダメです。トレーニングではその点にも注意を払う必要があります。

 っと...また小難しくなったので、続く。