自作の小説の公開ブログ -9ページ目

自作の小説の公開ブログ

自作の小説の公開してみます。
誤字多いと思います。


 10

 お腹から血が流れるのが感じられる。
いや、お腹ではなく腕、脚、それこそ全身から血が抜けてる感覚。
ああ、こうやって死んじゃうのかな、私。
冷たい廊下の壁にすり寄って座ってるはずなのに冷たさなんて感じられない。
感じるのはすぐ前に太陽があるのではないかと思うくらいの熱い感覚だけ。
あははー、やはりキャスターの話を聴いたほうがよかったかな?
まあ、今になって後悔してもだな。
ああ、眠い。
あれ……?
目を開けていてもぼんやりしている視野になにかが現れる。

“だから―――――――じゃないですか、ミスカラコ――”

キャスターのようだが、いくら彼でも今の私を生かせるのはできないだろ。
あ、暗い。
もう視野には光さえも入って来ない。

“本当―――すね。――エ。”

もうはや耳さえ自分の機能を失ってるみたいだ。
正直長生きしたいと思ったわけではないけど、こう死にたくはなかった。
ああ、レイヤ、彼女に会いたい。
たった一度でも彼女に会えるなら―――
耳は既に機能を失っているのに、意識が切れる寸前、まあ、なんとかなるでしょ、とキャスターの声が聴こえた気がした。


 空に黒雲が出始め雪が降って来た時刻、港の東に位置してとある廃工場の中に穢れた神父服を着た男がいた。

“アサシン、昨日のことを報告しろ。”

その男、神父の言葉に白い仮面の後ろに顔を潜めたアサシンが答える。

“キャスターのマスターがアーチャーと再解約をしたようです。”

アサシンの報告によるとキャスターのマスターがアーチャーの令呪を乗っ取ったようだ。

“そうか。ならキャスターのマスターを先に攻撃するべきだな。この状況で令呪を失ったのはかなりの損害だな。”

昨日の夜セイバーに襲撃を受けた神父は令呪を使ってアサシンを戻していたのだ。
前回の聖杯戦争の監督役が令呪を渡せずに死んでしまい今回の監督役である神父には以前までの令呪がない。
だから今持っている令呪はアサシンの二画と聖杯戦争を諦めたバーサーカーの令呪の二画。
ランサーのマスターはランサーが消えてもその令呪を返却していない。
そうやって持っている令呪は全部で四画。
そこにセイバーを倒す前にキャスターのマスターを攻撃する場合は令呪の一画が消えるギアスがかかっている。
使えるのは三画ということになる。
一般的なサーヴァントの間での戦いなら十分だろうけど相手のサーヴァントは二人。
どんなことになるのかわからないのだ。

“だからってキャスターを置いていくには行かないな。賢者の石が大きくなると勝ち目はないだろう。”

アサシンの情報でキャスターがホテルの人たちの魔力でなにかを作っているのがあからさまになった。
そしてバーサーカーのマスターであるレイヤスフィールがキャスターのマスターから賢者の石をもらったことも聴いている。
それを基に考えると作っているのは賢者の石だろう。
その結論に至った神父がアサシンに命じる。

“アサシン、アーチャーの脚を止めろ。私がキャスターとそのマスターを倒す時間を稼げ。”

アサシンが答え霊体化すうると神父はどこかに走り始めた。


 新都のホテルの最上階の一部屋、キャスターとそのマスターである織衣はモニターを見ていた。
姿が見えないアーチャーは屋上で、現れる敵を牽制している。

“ミス空小路、神父が動きましたよ。多分こっちに来ると思いますが。”

“いよいよ動くのか、じゃあ朝に言った通りでいい?”

“どう思っても行かない方がいいですよ、ミス空小路。ここはアーチャーに任せたほうが―”

キャスターが椅子から立ち上がる織衣を見ながら心配する。
彼の心配は朝から続いているものだ。
織衣自身が神父と戦いアーチャーがアサシンを止める、という作戦。
彼はそれを意味もなく止めている。

“だからー、理由を話してって。”

じれったいと言うように織衣がこの台詞を口にしたのももう十回を超えている。
そしてまた今回も口を閉じたキャスターを見ながら返答を聞けないと思い、舌を打ち後ろ向いた織衣の後ろからキャスターの声が聴こえる。

“ふむ、仕方ないですね。状況が状況ですから。私の本当の宝具を説明しましょ、ミス空小路。”

ただダメと言っていた今までと違いキャスターが話し始めたのだ。

“私の脳の一部は根元に繋がっています。そのおかげでこの世界の情報が自動に頭の中に入って来ています。今モニターに映っているのはその情報です。ただし得るのは世界の姿だけでその中身ではわからないもんです。”

キャスターはわかりやすく言えば、と例える。

“サーヴァントで例えましょ。サーヴァントが霊体化したら彼がどこに居るかはわかりません。私もまた人であるため人が見れるものが見えるってことです。それに見えるのは外側だけなので真名やステータスなんてことも見えません。それは人を見ても同じで見ただけで名前を知らないのと同じです。”

理解できましたか?と聞くキャスターの言葉に織衣が頷く。

“オッケー、それはわかった。で、それがどうしたの?”

“推測です。全ての状況を基に未来を推測します。これが案外よく当たるんですよね。”

キャスターの言葉に織衣が驚く。

“じゃあ未来を知っているっていうの?”

織衣の言葉にキャスターが笑った。

“私のことを知らないってことは本当でしたね、ミス空小路。冗談かと思っていました。いいでしょ、では今更ですが私について説明しようとしましょ。改めて言います。私の名はSaint Germain【サン・ジェルマン】。ほぼ根元に近づいた錬金術師です。”

 Saint Germain。
人類最後の錬金術師と言われているサン・ジェルマン伯爵は1710年ヨーロッパで初めて現れ「決して死ぬことがなく、すべてを知っている人物」というくらいにその当時の全域を完全に揺らしたことと把握される。
彼は、沢山の宝石を散りばめた豪華な衣装に身を包み、普段は丸薬とパンと麦しか口にせず、ギリシア語、ラテン語、サンスクリット語、アラビア語、中国語に加えて仏・独・英・伊・葡・西の数か国語に堪能であったと言われる。
また、身なりにも気を使い、クラヴサンとヴァイオリンの名手でもあり、作曲も熟した。
更に化学と錬金術にも精通しており、ついには不老不死に関する著作を物したとも言われる。
当時サン・ジェルマンのは資産は地球全ての資産を持ったことに表現され、地球の全ての知識を持った人であった。
そして彼が生涯に予言するように言った言葉は全部事実になって戻ってきたと言う。

自慢気に言うキャスターが話が終わったかのようにこう言った。

“今になって言えますが人たちの前に現れた時には既に根元の端っこに繋がっていた状態だったわけです。”

それを全部聞いて織衣が口を開ける。

“根元に届いてよく狂ってなかったわね。いや、人として生きていたってことが不思議なくらい。”

根元の渦。
そこに着いた人の魂はすぐ始まりに戻るか根元に収まるはずなのに、この魔術師はそれについても現実に生きていたってことだ。

“おほほほ、私は天才ですからね。まあ、真実は言うと根元の端っこのすぐ隣まで着いた感じですけど。そのせいで世界のことを見るだけで、その中身はわからないんでしょうね。”

“そうか。じゃああんた、なんのために聖杯を求めてるわけ?既に根元に付いてるでしょ?”

今考えたかのようにキャスターの願いを聞く織衣。
召喚してもう五日目だと言うのに今更だな、と思いながらキャスターが口を開ける。

“根元なんてどうでもいいです。私が願うのは人類の滅亡を見送ること。”

“人類の滅亡?なに、あんた。人嫌い?”

人類の滅亡を願ってるような彼の言葉に織衣が聞くと彼は首を横に振った。

“いやいや、そうじゃないですよ。人類の繁栄と衰退、その終わりを見たい、ってことです。人類とは面白いですから。”

織衣が、ストーカーかよ、と変な目で見つめたけど彼は無視して話を続ける。

“それで結論を言うと聖杯に願うのは体です。体を手に入れ人類の繁栄と衰退を見続けるのが私の願いです。”

キャスターの言葉に織衣が、結局ストーカーじゃん、と言い話題を変える。

“で、ストーカーさん、この賢明な作戦を止めるのがその未来のせいってこと?”

“ストーカーじゃないですよ!研究です!とにかく話してもいいでしょ。本来あなたは二日前の夜に死ぬべきでした。”

“なに?私が死ぬと?”

“はい、一昨日の夜、あなたが聖杯の器に会いに行った時。そこで空小路織衣はアサシンに死ぬはずでした。”

二日前の夜。織衣はバーサーカーのマスターを助けに行って、なんの危険なしで彼女の側までたどり着いたのだ。
その時を思い出したのか織衣の顔色はよくなかった。

“じゃあなんで死ななかったの?”

“感謝してもいいですよ、ミス空小路。私が神父と取引をしたおかげですから。”

セイバーを倒すまでにキャスターのマスターを攻撃しないことを盟約に結べたのだ。
それをドヤ顔で言うキャスターを織衣が睨める。

“じゃあなに。あんた、その前から神父の正体を知っていたってわけ?”

“あ―”

しくじったかのように口を止めるけど既に出た言葉を拾うわけにも行かず、結局織衣から怒られるキャスター。

“話を戻すけど、今の私の未来はどうなの?まあ、止めるのを見たらわかるけど。”

“あの日からあなたを殺す人は変わりありません、ミス空小路。”

あ、やはり?と聞く彼女にキャスターが答える。

“はい、アサシンのマスター、言峰神父です。”


――――――
クラス        Caster【キャスター】
マスター    空小路織衣
真名        Saint Germain【サン・ジェルマン】
性別        男性
身長・体重    180cm・72kg
属性        中立・中庸
ステータス    筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A+ 幸運A 宝具A++
クラススキル    陣地作成A / 道具作成A++

 保有スキル

黄金律 A
―人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。一生金に困ることはなく、大富豪でも十分やっていける。

芸術審美 A
―芸術品・美術品に対する理解、あるいは執着心。芸能面の逸話を持つ宝具を目にした場合、真名を看破できる。

未来予知 C
―未来を見る能力。彼の場合、宝具によって近い未来を予想できる。

 宝具

賢者の石 / The philosopher's stone A+
魔法を再現することが可能なくらいの膨大な魔力が凝縮された石。
使用するほど石内部の魔力が減って行くが材料だけあれば作り直すのも可能である。

すべてを知っている者 / Akashic Records A++ 対人宝具
脳が根元の端っこに繋がれ現在地球で行われている全ての現状を受け入れる。
それを基にすぐ後の未来が予測できるが確実なものではなく、状況は刻一刻変わる。

――――――

 キャスターの話は聴いたけどだからってアーチャーに二人を止めさせるのは難しい。
だからってアーチャーの近くにいるとしても暗殺を専門にするアサシンの攻撃を完全に止めるとは思えない。
戦闘の欠片もしたことないキャスターはどっちにしても役に立たない。
なら結局アサシンをアーチャーに任せて私が神父を倒すまでだ。
ホテルの一階ロビーに降りる。
人はいない。
予めキャスターが全部寝かして、外には人が入れないような魔術を使っている。
キャスターには神父とアサシンの位置を教えるようにしておいたし、念のため賢者の石をわけてアーチャーの令呪が入ったのをキャスターに渡した。
戦う途中に全部使ってアーチャーが消滅しては勝つ意味がない。
ここでアサシンと神父を倒して最終の目標はライダーとセイバーだが――

‘アーチャーがアサシンと会いました、ミス空小路。神父はもうすぐ着きます。’

後のことはこれが終わってから考えよ。
じゃあでは、教会の監督役がどんな自信で執行者である私に一対一で挑んで来るのか確認してみるか。


 雪が積もった屋上。
赤い弓を持ったアーチャーがホテルよりちょっと低い、車道向こうにある建物の屋上で何かを見つける。
真っ白な帽子と服、しかも顔まで白い仮面で隠していた。
雪が降った地面で彼の姿を見る者は少ないだろう。
しかしアーチャーはアサシンを簡単に見つけた。

‘アサシンの位置は把握しましたか?アーチャー。’

聴こえて来るキャスターの声。

‘はい、把握しました。倒せばいいでしょうか?’

現在彼の中では自分のマスターは賢者の石を持ったキャスターであるようで、キャスターの指示を待った。
それにキャスターが頷くと、アーチャーは紐が付いてる白い矢を赤い弓にかけた。


 アーチャーがアサシンの姿を見つけたように、アサシンもまたアーチャーのことを確認し止まった。
本来なら自分の姿を消して気配を遮断して近づくのがアサシンの戦いだろうけど今回は違った。
アーチャーが自分のマスターに戻らないように時間を稼ぐのが任務。
だからこそアーチャーの視野に入るところで実体化してアーチャーにその姿を見せる。
アーチャーと戦うのは今回で二度目。
前回はバーサーカーの助けであってちゃんと戦えなかった。
今回も時間を稼ぐもので最善とは言えないが目標がアーチャーなのは確か。
しかもどうやら空はアサシンの味方のようで、白い雪が地上を埋まって行く。
アーチャーを見ながら手に持ったM28の引き金を引く。
位置をばらさないための消音器はその役目を務め、静かに放たれた銃弾がアーチャーに向かう。
それを見たアーチャーが矢を手放す。
空を飛んだ矢は正確に銃弾を当て割ってその勢いを失わずにアサシンを狙う。
アサシンはそれをよけ銃をアーチャーに向け、
ドカン!
アサインが自分の知らずに後ろを見る。
アーチャーの矢が刺さったと言うか破壊したところは小さいクレーターが出来ていた。

‘あれに触れるだけで任務どころか死にそうだ。’

そう思い手に持ったM28を二つのスオミKP/-31に変える。
威力ではどうもできないと思い物量で耐えるつもりだろう。
アーチャーを見ると彼の手には五つの矢が持たれていた。
さっきの威力である矢が五つ、

‘これは生前のソビエト連邦の奴らは危機でもなかったな。’

アサシンが苦笑いをする。
そしてアーチャーはそれを放たれ、五つの矢がアサシンを狙って飛んでくる。
実は初めての矢の威力を見て驚いたのはアサシンだけではなかった。
自分の矢が大きな音を出すのを見てアーチャーもまた驚いていた。
賢者の石のバックアップを受けてからの初の戦い。
自分のその威力は知らなかったのだ。
召喚して一度も笑ったことがなかったアーチャーがなにがそんなに面白かったのか初めて大きく笑う。
そしてそれでアーチャーは確信して矢を構えた。
今回のマスターはきっと自分に聖杯を齎すと。


 同じ時刻、ホテルのロビーに神父が入り込む。
その一歩で上から落ちてくる多くの魔力の弾丸。
賢者の石によってその一つ一つがAランクに属する。
しかし神父は予想していたかのようにそれを避けたり止めたりしてなんの被害なく入って来る。

“歓迎の挨拶としては派手だな、キャスターのマスター。”

神父が腕に付いた埃を払う。

“嘘はやめてくれませんか?なんですか、あなた。あれくらいのガンドを止めるなんて本当に人間ですか?”

例え現代の魔術師であるキャスターの結界とは言え、入るのが拒絶された人が中に入るには結構な能力を必要とする。
それにAランクに近いガンドをなんの傷もなく受けるとは、執行者くらいのレベルだろう。

“ふむ、あまりあだててるな。思うほど優れたものでもない。普通の服でもないからな。”

どうやら神父服に魔弾を受けるくらいの魔術のようなものがかかっているようだ。

“そうですか。で?ここまで来た理由はなんでしょう。”

“改めて取引をしよう。アーチャーとキャスターの令呪を渡せ。その代わりに命は保証しよ。”

神父の言葉に織衣が左手で顎を撫でる。

“すみませんがそれはダメですね。令呪を渡さなくても生きているから取引にはなりません、それ。”

“そうか、なら時間を入れてもう一度聞こう。”

言葉が終わるのと同時に神父が地面を蹴る。
二人の間の距離は十メートルを超えていたが、それを早い速度で減らす。

‘早い!’

瞬間に迫って来る距離を見て織衣が後ろに下がりながら左手を前に出して魔弾を放つ。
しかし神父はそれを腕を前にして受けながら距離を迫って来る。
織衣がそれを見て魔弾ではだめかと判断したのか右手に刀を持つ。
刃が届く距離、そこで織衣の刀が神父の胸を狙い入って――
カチン―。
金属がぶつかる音。
神父の手にはいつの間にか黒鍵が持たれていた。
黒鍵とは主に聖堂教会の代行者が使用する、十字架を模した刃渡り90cm程度の投擲剣のことだ。
刀身部分は聖書のページを精製したもので作られている。
上級の代行者ともなると柄だけを持ち歩き、刀身はその場で魔力から編み上げることができる。
それを見た織衣が驚くのも当然であろう。

“うそ、代行者?!”

織衣が驚き後ろに下がって距離を開ける瞬間、神父が右手に持っていた黒鍵を投げ、そのまま織衣の腹に刺される。

“くっ―”

自分も知らないうちに口から音が漏れる。
腹に刺された黒鍵を抜き出す。
刺された時よりも強い苦痛。
それを耐えながら抜け出した黒鍵を地に落とされ傷を魔術で治療する。
傷はすぐになにもなかったかのように消えた。

“ほお、驚いた。賢者の石の力か。その程度の傷を一瞬で治すとは。”

“いや、驚いたのはこっちですから。聖杯戦争の監督役が代行者とは思ってもなかった。”

“変な話だな。監督とは本来暴くマスターを止めるためでもある。”

だから強いのは当然だ、という本来の監督役だった神父の言葉に織衣が頷く。

“はい、もちろん知っています。けど前例があったからもうこんなことはないと思ったんですよ。まさかそれを繰り返すとは、教会にもバカな人たちばかりのようですね。”

教会を罵倒する織衣の言葉に神父がくすくすと笑う。

“で、さっきの取引はする気になったのか?今でも遅くないが。”

“へえ、まるで私の命をあなたの手で握ってるように言いますね。”

そう言う織衣に神父はこれ以上時間がかかるとアサシンが持たないと判断し、一手に三つずつ両手合わせて六つの黒鍵を手にして話した。

“断るのか、ならその心臓もらい受けよう。”

言葉と共に手に持たれていた黒鍵が投げられ、神父が地面を蹴った。


 実際代行者との戦いはよくあった。
封印指定された魔術師を捕まえに行ったら会える教会の修道服を着た人たち。
何回も彼らを殺し負けさせて封印指定を時計塔に渡してきた。
だからさっきのは代行者ってことを知らなかったため油断しただけ、もう負ける理由はない。
飛んでくる黒鍵を刀で止めてすこし後ろに下がる。
いつの間にか近づいてきた神父の右手に持った黒鍵を打ち飛ばし、逆に敵の心臓を狙って刀を振る。
それを神父は身を回して避けて、何の被害なくそのまま黒鍵を刺し出す。
ただしそれは普通の刀だったらの話。
心臓を狙って振られた刀は神父が身を回した瞬間光を放つ。

“な―?!”

そしてそのまま爆発した。
刀が爆発する瞬間神父が後ろに距離を開けた。
爆弾を手に持ったまま爆発させるものがいるものか。
非常識としか考えられない行動で驚いたのか神父が口を開ける。

“その距離で爆発とはな。思ってもなかった。賢者の石があるから可能な技か。”

神父は服がボロボロになった状態で話した。
しかし服だけで、神父は傷一つもなさそうだ。
今の状況で傷一つないとは。
今までの代行者とはなにかが違う。
それが何かは知らないが。

“まあ、そんなもんだけどさ。それにしては反応速度すごくない?全然怪我もなさそうだし。”

“ふん、たった十年くらいのガキに負けては三十年近くの時間が勿体ない。”

賢者の石がなかったら同時に三つ以上の魔術を使えるのができなかったけど今の私にはそれが可能だ。
しかし賢者の石を使えば使うほど減って行くので早く終わらせないとやれるのはこっちのほうになる。
最大限に魔術を使わないようにするしかないが、どうやら気付いたようだ。

“アーチャーがアサシンを倒せるまで耐える気か。やはり最初の一撃で殺すべきだったか。まあ、よい。耐えるのであれば耐えてみろ。”

今まで魔術を使ってなかったような彼の体に魔力が流れるのが感じられる。
令呪まで使ったのかその量が半端ない。
これはどうやら冗談は終わりなようだ。
元々相手を圧倒する雰囲気を持っていた神父だがその雰囲気は尚更鋭くなり見るのさえ怖いくらい。
圧倒的に強そうな敵はその一足を前に進めた。


 終わりがない。
秒で十を遥かに超える弾丸が放たれたがそれを全部止めて見せた。
最初に避けようとしたアーチャーは弾丸が自分を狙って動くのを感じてその以来脚を動かず矢を放たれている。
矢がビルの屋上に触れるたびにクレーターが出来て積もっていた雪が飛び散る。
予めキャスターが周りのビルでも保護のため結界をしておけなかったらビルは既に破片になっていただろう。
そして飛び散った雪はアーチャーがアサシンの姿を把握するのを邪魔して今までアサシンが生きていたのだ。
もし雪が積もっていなければ、きっとアサシンは既にここにはいないだろう。
アーチャーが運がないのかアサシンが運がいいのか、いや、きっと両方だろう。
不運と幸運と交差で今この戦いは続いている。
そんな途中にアーチャーの頭にキャスターの声が聴こえて来る。

‘時間がかかります、アーチャー。宝具を使ってください。’

緊迫なキャスターの声。
どうやら彼のマスターが危ないんだろうが、

‘まだです。雲に隠れているがまだ太陽が沈めていないです。’

太陽が地上を照らしている。
雲に隠れて地上に光が見えないとしても太陽が浮いてる間は宝具の発動はできない。
規格外の宝具を持っていても制限のせいで今は役に立たないのだ。

‘……そうですか。なら太陽がなくなるとすぐ宝具を使ってください。そして私がいるところに来てください。’

早く話すキャスターの声はあまりにも切羽詰まったようで普段の落ち着いた様子が想像できなかった。
アーチャーは彼の言葉に頷きアサシンに攻撃を続けた。


 私は今ホテルの最上階に居る。
私のマスターは一階で、アーチャーは屋上で戦っているのに、私ができるのはただ見るだけだ。
生前にも戦うところには出ずにいつも引き込んで研究を続けて来た。
もちろんそれによって武器は強くなりその国は戦争から勝利してきた。
だがサーヴァント一人一人が戦闘兵器なこんな戦争では私の力で勝てるのはできない。
できるのはただ賢者の石の提供と身体の強化だけ。
いくら現在の全状況が頭に流れ込むとしても今は無駄なのだ。
持っている宝具の中で一番高いランクだと言うのに戦場ではなんの役も立たないのは結構情けないと思うが、しょうがないか、これが私という人だから。
なんの役にも立たない私はただ自分が見ている予知が間違えることを祈るだけだ。
しかし今になっては、なんとかなるでしょ、とでも言えないくらい未来が見えてしまう。
それにどうやらもう遅かったようだ。


 十分の過ぎてない時間、二人の戦いは終わっていた。
血塗れになった織衣は壁に背中を寄って座り込んでいる。
傷とも呼べないくらいの致命傷。
黒鍵は腹を通して壁に刺さっていて、左肩は半分くらい切られ腕が取れそうになり、右足は足首からその下がどこに行ったのか見当たらない。
それ以外でも体の全身に傷が残った彼女とは違い、前に立っている白髪の男は傷一つなさそうに見える。

“では、令呪を貰うとしよ。”

神父が織衣の前に座り込み彼女の左腕を取ろうと自分の右腕を伸ばし――
瞬間的に後ろに飛んだ。
その右腕は何かに切られたかのように傷ができていた。
その前には黒いスーツを着た中年の男が立っていた。

“ありゃ、残念ですね。全てが終わったと思ったあなたなら今ので殺せると思いましたが、だたの傷とは。”

“ふん、キャスターか。お前の力で私に勝てると思うか?現代の魔術師よ。”

神父の言葉のどこが面白かったのかキャスターが笑いだす。

“それは当然無理ですね。魔術師を殺すのを専門にしている代行者には勝てないでしょ。しかし逃げたほうがいいですよ?もう昼は終わりましたから。”

神父はキャスターの言葉を理解できなかった。
しかし、その瞬間巨大な魔力が感じられた。
そして頭の中でアサシンの声が聴こえて来る。

‘アーチャーが宝具を使いました。……これから逃げるのは不可能です。どうか、退避を。’

不可能を確信するアサシン。
それに神父は表情一つ変えずに伝える。

‘わかった。私は今から戦場から離脱する。君も出来れば抜け出すように。’

神父はアサシンが頷くのを聞いて目の前にあるキャスターを置いて後ろ向き早くホテルを抜け出した。
そんな神父を止めるつもりはないのかキャスターは後ろ向いて織衣を見つめた。


 昼が終わり夜になっていく大地。
光は消え闇が訪れるはずの空を明るく照らしてるものがあった。
自然災害?
いや、自然災害と見るにはあまりにもおかしいそれはどう考えても自然に発生するものではなかった。
それこそ地上を燃やす太陽がそこにあった。
空に浮いているだけで先まで地上を埋めていた雪は既に蒸発され、建物とアスファルトには割れ始めている。
アサシンはそれを見てすぐ自分の今回の生はここで終わりだな、と思いながら自分のマスターに退避しろと伝え自分は諦めた。
しかし自分のマスターから戻ってきた言葉は変だった。

‘わかった。私は今から戦場から離脱する。君も出来れば抜け出すように。’

きっと知らせたはずの放棄宣言。
それを聴いたはずにも関わらず、生き残れ、と言ったのだ。
なら死ぬ時に死んでもあがいてみるか――。


 倒れた織衣の前に座り込んだキャスターが話をかけていた。
キャスターが抜いたのか腹に刺されていたものは抜かれていて、右足も一応繋がっている。

“だから言ったじゃないですか、ミス空小路。”

倒れている織衣を見つめる。
血塗れになってどんな名医でも治療できないくらいの傷だらけの体。
彼女のズボンのポケットから小さくなった賢者の石を出す。
そして自分のスーツのポケットからも石を出した。
どうやらアーチャーの宝具に怖いくらいの魔力量が必要なのかこっちも大きさが半分くらい小さくなっていた。

“本当にバカですね。織衣。”

自分も知らないうちに出てくる言葉と共に最初に召喚された日のことを思い出す。
召喚してすぐクラスと真名を聴いた彼女は深いため息を出した。
そして、こうなった以上聖杯を手に入れなくてもそれだけ、どうしても生き残るのが目標だから、と聖杯を手に入れなくても後悔しないでって言っていた彼女。
その時の彼女の未来に死はなかった。
変わったのはバーサーカーのマスターが戦場に現れたその時だった。
それ以来彼女が聖杯戦争で生き残る未来などなかった。
だからこそ私が自ら動いて彼女の最初の目標であった命を最優先にしたと言うのにこのざまだ。
どうしても方法がなかった。
今まで集めていた魔力を賢者の石に作っていたら彼女はここで死んだだろう。

“目を覚ましたら私に感謝してもいいですよ、織衣。”

今までの魔力を集めたのは全てこの時のため。
死ぬことを知っているなら、死ぬ時のために命を準備しておけばいいだけの話しだ。
ビルが揺れ始める。
結界を張っておいたと言うのに、アーチャーの宝具に影響を受けているようだ。
キャスターは揺れるビルを気にせずポケットを探る。

“まあ、予想とは違い魔力量が足りないけど私の分まで合わせるとなんとかなるでしょ。”

ポケットから出す一つの小さな瓶。
その中には赤い液体が入っていた。
そこに賢者の石を入れる。
これでまたアーチャーはマスターを失うけど、彼には単独行動があるから織衣が目を覚ますまではもつだろう。
さらに鮮明になる液体を織衣の口に流れ込む。
体が無くなるのを感じる。
自分に聞く。
後悔しないのか?
答えは決まっている。
後悔などするものか。
そもそも召喚された時から生き残ることが彼女と私の目標だったから。
きっとアーチャーなら、愚かですね、というだろう。
確かに間違ってない。
彼にとってマスターはただ魔力を与えて聖杯を手に入れる手段に過ぎないだろう。
まあ、私もそんな変わらないけど。
ただ気になっただけだ。
死ぬはずだった彼女が生きて続ける未来が。
彼女が目を覚ましたらすぐ状況を把握するだろ。
さて、彼女が今から目を覚ますのは約十分後。
目覚めるのを見れないのは残念ですが、これで役立たずの魔術師は先に退場しようとしよ。
織衣、どうかいい未来を―――


――――――
クラス        Caster【キャスター】
マスター    空小路織衣
真名        Saint Germain【サン・ジェルマン】
性別        男性
身長・体重    180cm・72kg
属性        中立・中庸
ステータス    筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A+ 幸運A 宝具A++
クラススキル    陣地作成A / 道具作成A++
保有スキル    黄金律A / 芸術審美A

 宝具

不老不死の薬 / Elixir of life A
死んだ人さえも生かせることができる薬。
一度使ったら消えるが材料さえあれば作り直すのも可能だ。
ただ持っているという噂だけで実際に使ったのかどうかわからないせいか召喚した時には持っていない。

賢者の石 / The philosopher's stone A+
魔法を再現することが可能なくらいの膨大な魔力が凝縮された石。
使用するほど石内部の魔力が減って行くが材料だけあれば作り直すのも可能である。

すべてを知っている者 / Akashic Records A++ 対人宝具
脳が根元の端っこに繋がれ現在地球で行われている全ての現状を受け入れる。
それを基にすぐ後の未来が予測できるが確実なものではなく、状況は刻一刻変わる。

――――――

 新都の繁華街の近くで使役魔でアーチャーとアサシンが戦っていたことを見ていた霜は驚愕した。
アーチャーのすごい魔力量が籠った矢が空に放たれるとそこにまるで太陽と思われるくらいの熱気を持った魔力の集まりが現れたからだ。
今日の朝、霜は円からアーチャーのマスターが腕ごとに令呪を奪われたことを聴いていた。
それで昨日の公園に流れていた血の持ち主もわかるようになった。
それにしても人の目があるところでこんなバカな真似をするとは思わなかったのだ。
それを見てする建物から出て来た。
そこはまるで地獄だった。
太陽が少しずつ落ちるのを見て逃げる人、スマホを出して取っている人、ただ叫んでいる人、神の仕業と言っている人。
後の処理が大変だな、と思いながらセイバーに命じた。

‘セイバー、あれが落ちるのを止めろ。’

‘ダインスレフの使用は?’

‘許可する。’

バーサーカーの攻撃を止める時まで使ってなかった魔剣。
破滅を呼ぶそれは使用すればするほどセイバーの魔力と体を蝕んでいく。
だから霜はできるだけ使わないようにしたけど、今の状況ではこの街を救うためにやむを得ないと判断した。
霜は広がり始めた魔術を阻止するために人の認識を変える魔術を使い、後の処理のために鈴木恭一に連絡をした。


 霜の命令を受けたセイバーはアーチャーとアサシンがいるビルの一直線にあるビルの屋上に上がった。

“恐ろしいな。”

口から出た感想は単純だった。
恐ろしい、としか表現できないものだった。
それが地上に落ちたらここの土地は何十年間燃やし続けるだろう。
それくらいの魔力をぎゅうぎゅうと落ち着け球体であった。

“そんなものを止めろってのか?”

EXランクの規格外の宝具を止めろと命令した自分のマスターの言葉を思い出して笑う。
自分の魔力をかじって呪いそれを力として、敵の魔力を巻き込んで呪いに変え突き返す魔剣、ダインスレフ。
本来この剣を使った覚えなどない。
それも当然なのが、間違った伝承だから。
同名異人のハーゲンが使っていた剣。
それをただ名前が一緒だからって理由で使っていたという間違いが広がり伝説となった。
だからあの馬鹿げたものさえも呪い返せるのかはしてみないとわからない。
失敗したら死を、成功しても呪いを受ける呪いだけを齎す魔剣。

“さあ、どうなるかな。”

まるで他人事のよう、笑ながら太陽の前に立つ。
それと同時に頭の中で響く声。

‘セイバーのマスターとして命じる、宝具を解放しろ、セイバー。’

令呪によるバックアップと同時に霜が持っていた僞信の書が燃える。
そして―――

“破滅をもたらす報復の剣【ダインスレフ】!!!”

邪悪な気運の魔力が巨大な火玉を襲った。


――――――
クラス        Archer【アーチャー】
マスター    ―
真名        羿【ゲイ】
性別        男性
身長・体重    187cm・72kg
属性        秩序・中庸
ステータス    筋力B 耐久C 敏捷C 魔力A++ 幸運D 宝具EX
クラススキル    単独行動A+ / 対魔力A
保有スキル    神性A / 心眼(偽)B / 千里眼B

 宝具

弓と矢 A+
天帝である帝夋からもらった紅色の弓と白羽の矢で名は持っていないが神の武器であるため高いランクを持つ。

九つの太陽を撃ち殺す神の矢 EX 対界宝具
羿が持った弓と矢の真名解放で魔力を込めて空に矢を放つとその場に類似太陽が落ちる。
召喚された直後から九つの太陽を落とされるのが可能で、一度で落とす数の制限はない。
魔力さえ十分であれば一気に九つの類似太陽を落とすのも可能だ。

――――――

 アーチャーは口元から笑いを隠せなかった。
自分の頭の上には巨大な火玉が一つ。
九つ全部ではないけどこれ一つで地上を燃やしても残るだろう。
召喚された後、自分のマスターであるリノ・エーデルフェルトとの対話の中で宝具の話が出た時にはこれを使うのはないだろうと思っていた。
魔力量が足りないのは置いといても宝具を使うと一般人に被害が出るのは当然なので、彼女が宝具を使うことはないと思っていた。
しかしマスターが変わり賢者の石のバックアップを持って使うようになった自分の宝具の威力を見てそれこそ感嘆を止めなかった。
賢者の石のバックアップが消えたのを見たら今ので全部使ったようだけどどうせキャスターがまた魔力を集めて作ってくれるに違いない。
だからこそアーチャーは聖杯が自分のものだと、そう思っていた。


 アサシンは心の中で喜んでいた。
奇跡としか思えない状況。
自分の方に落ちていた火玉が自分から後ろで飛んで来た黒い魔力に止められ速度が遅くなる。
この状況ならアーチャーもあれの方向を変えるのはできないだろ。
そうやってアサシンはすぐ前に落ち込んで来る太陽を避け戦場から離脱する。
しかし生き残ったという安心のせいだろう、グサッ、と背中に刃物が刺される。
後ろから飛んでくるものなど気にしていなかったのが問題だっただろうけど、正直誰がこんな状況で自分を狙うだろうか。
敵を確認しようと後ろ向いたら、

“Rock!ここで消えろ!アサシン!”

“空を飛びかける光【光連車】!”

聴こえる声と共に見えるのは空から飛んでくる光の玉だった。
すぐ上に浮いてある太陽の縮小版のようなそれは光を圧縮したようだった。
そしてそれに弾かれアサシンはあっさりと現生から退場した。
光の玉が通ったその先には馬が引く車が空を走っている。

“Rock、運がよかったな。アサシンめ、目を逸らしているとは。”

アサシンを倒してもう用はないというようにその場を離れる車の上で露が話していた。

“ちょっと卑怯だったのう。”

“うるせぇ、戦争ってそんなもんだろうが。それにしてもあの馬鹿げたものを押しているのがすごいな。”

露はライダーの意見を黙らせ、戦場から放れながらも戦場を見ていた。
そこにはアーチャーが落とした太陽を止めているセイバーが居る。
セイバーの剣から引き続けて出ている黒闇が少しずつ赤い光を飲み込んでいた。


――――――
クラス        Rider【ライダー】
マスター    浅上露
真名        鈴鹿御前
性別        女性
身長・体重    154cm・38kg
属性        混沌・中庸
ステータス    筋力D 耐久E 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A+
クラススキル    騎乗A+
保有スキル    神性B

 宝具

大通連 B / 小通連 B
空を飛ぶ剣で刀身だけが存在し持ち主の念に応じて動く。

顕明連 A
魔力があればあるほど分裂するのが可能な剣で持ち主の念に応じて動く。
ただし分裂するほど、一つ一つの力は弱くなる。

光連車 A
六つの脚を持つ二匹の霊馬が引く空を走る二輪車。
霊馬の脚が大気を踏む度に大気が揺れる。
二輪はいつも光っている。

文殊智剣大神通・恋愛発破・天鬼雨 A 対軍宝具
顕明連の真名解放で顕明連に魔力を込め、分裂させ攻撃する。
顕明連一つ一つが元々の顕明連の力を持つ。
魔力量によって数は調整可能。

空を飛びかける光 / 光連車 A+ 対軍宝具
光連車の真名解放で車を引いてる妖怪の馬と車が光の結界に包まれそのまま敵と衝突する。
この時敵の攻撃を受け一定以上の被害を受けると結界が破壊される。

――――――

 アーチャーはおかしいと思っている。
きっと今頃目の前にあるビルを粉砕し地上を燃やしたはずの太陽の速度がどんどん遅くなっている。
千里眼でそれを見ると向こう側にセイバーが居て手に持った宝具で太陽を押し続けていることを気付いた。
ありえない。
規格外の宝具であるこの太陽に勝てる宝具があるはずがない。
もうすこしで太陽はセイバーを燃やし残りはライダーだけ。
その時は私の勝利になる。
自慢。
規格外の宝具を止めるはずがないと信じる、その自慢心で彼はその場で離れなかった。
もし、そう、もしもアーチャーが宝具使ってすぐこの場を離れていたらきっと聖杯は彼のものになっただろう。


 セイバーの全身が黒く染まって行く。
ダインスレフの持ち主はこの剣を三回抜いた時にその霊さえも呪いに食べられ死んでしまったと言われている。
そんなものを今二回目使っているのに既に全身は呪いに染められそれが心臓に至ろうとしている。
目の前の太陽を押して既に十分を過ぎている。
もしこのままさらに十分を過ぎたら、さすがに体が持たないだろう。
あの化け物だったバーサーカーを一気に食らいつくしたダインスレフに令呪のバックアップもあると言うのにその太陽が消えようとしない。
このまま呪いに死ぬのはごめんだ。

‘令呪を使え、慎一。’

霜が持っていた僞信の書が燃えた今、残りの令呪は慎一にある。
どうせ令呪は一つさえあれば十分だ。
私の言葉に頷いたのか体内に魔力が満ちていく。
二回目の令呪。
ならば、敵などあるまい!


 目を覚ました織衣は自分の体を見て傷と、そして令呪がなくなっていることに気付いた。
そして今の状況を考えているのか何かを考えてはホテルを出てすごい魔力が吹き出されることを見かける。
赤い光と黒い闇。
闇が光を半分くらい食っている。
赤い光がアーチャーのものってことを気付き、彼に向かうためにホテルに入ろうとした瞬間――
赤く照らしている太陽はなくなり、空はいつの間にか本来の姿に戻してそこには闇だけが残っていた。
全ての闇が光を食らいビルの屋上を襲い、ビルの最上階ごとにそこにある全てを飲み込んで消えた。
それを見ていた織衣は深山町に脚を向けた。