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西暦2019年2月18日19時24分。
いや、たった今24分になった時刻。
今日も葛飾区にある寿司屋であるはま寿司には人が溢れる。
店内に表示された番号は539。
相変わらず540を超えない番号見て自分の手に持っている番号札を確認する。
何回確認しても546なのは変わらない。
1時間前に店に入った時にちょうど530だったから後1時間は待たないとだめかも知れない。
やれやれ、2時間も待つ店とか、、普通過ぎる。
実は俺は寿司が嫌いだった。
魚が嫌いとか、アレルギーがあるとかの話ではなく、あの時の出来事のせいだ。
そう、朝8時に寿司屋に着いて15時に食べることができたあの苦痛の記憶が昨日の出来事のよう忘れられないのだ。
それなのに今こうやって2時間待つことを知ってながらも寿司を食べるために待てるのはあの日の思い出のためだろう。
なに?9時間待って食べた話のほうが聞きたいって?
そんな馬鹿げた話するもんか!
俺は実は魔術師である。
いや、正確に言えば魔法使いと言うべきだろう。
一般人に取っては魔術師と魔法使いの差をわからないだろうが、魔術師に取って魔法使いとは彼らの目指し、夢みたいなものだ。
普通の魔術師なら魔法使いになるために、いや、正確には根源の渦に至るのを望むだろうしその過程で魔術師は魔法使いになる。
結果だけを見ると魔術師は魔法使いになるために魔術を研究すると言ってもいいだろう。
そんな魔術師が夢見る魔法使いになったのがこの俺だ。
しかしこんな俺でも魔術師だったころはある。
その途中に寿司を嫌いになった切っ掛けがあることは言うまでもないがそれを語るには時間が足りないだろう。
そりゃあ、9時間の話だからな!
故に今から語るのは今は思い出になった俺の最後の魔術師であった、最初に魔法使いになった、3年前のある晴れた日の物語だ。
あの日の始まりは非常にいい朝からだった。
前日、魔術研究の発表会でめっちゃやられた俺は家に帰ってお酒を飲みすぎた。
それなのに頭痛などはなく、目を覚まして見た時計は午前5時を示していたからだ。
“二日酔いがない日は初めてだな!しかも午前に目覚めるとは!”
いい気分で独り言を喋りながら家を出る準備をする。
爽やかな一日の始まりのためコーヒーを飲むためだ。
準備を終え家を出掛けると2月の冷たい冬風が顔を打った。
普段なら冷たい風に悪口を言っただろうけど今日はなぜか気分がいい。
微笑みながらカフェに向かう。
コーヒーと言えば当然家の前の交差点にあるみまつが一番だ。
みまつに入ると早い時間だと言うのに人が多かった。
“なんだこれは。困ったな、、”
ぱっと見たところ満席ではないか思うくらいの人たちを見ながら呟いた。
これでは俺が一番好きな窓席はもう埋まっていることに違いない。
人気席と言ってもいいくらい、テーブルが開く日は頻繁なのに窓席が空いてる日はほぼないからだ。
キャメル色のコートのポケットからスマホを出して時間を見るとちょうど6時を過ぎてる所だった。
俺は仕方なく空いてるテーブル席に向かって思い脚を運んだ。
ところがその時、窓席に座っていたスーツを着たサラリーマンが席から立つのが見えた。
“お!ラッキー!”
今日はどうやら俺のための日のようだ。
俺は素早く主がなくなった窓席に座った。
“ここ、整理お願いします。”
店員に頼んでからコーヒー以外になにか頼もうか見るためにメニューに手を出そうとしたら、前の人が飲んでいたコップの下に紙が挟んでるのを見つけた。
メモにはなにかが書いてあった。
「2月16日午前11時はま寿司」
前の人が書いたみたいだ。
その下に住所も書いてあった。
“お客さん、今日は早いですね。しかも昼は寿司かな?”
いつの間にかテーブルを片付けていた店員さんが話をかけてきた。
初めてこの店に来た時から来るたびに仕事をしているこのバイトは今年大学生になるみたいだ。
それもかなりの名門の大学らしいが俺の知ったことじゃない。
“いや、さっき出た人が置いて行ったみたいだけど。ところで住所を見たらこの当たりのようだけどこんな寿司屋あったっけ?”
客が出た扉を指で指しながら言うと、バイトはメモに書いてあった住所を見て笑いながら言った。
“あ、あれですね。今日新しく始まると言う寿司屋。知らないですか?”
配達もしてるカフェだからなのか住所だけでどこら辺か分かるようだ。
なんか、、地味な能力だ。
俺は知らないって意味で首を横に振った。
“ならちょうどいいし行ってみたらどうですか?オープンイベントで100皿限定はま寿司特別寿司ってのを売ってるらしいですよ。”
“特別寿司?”
“さあ、秘密でなにが出るのかは分からないらしいですけど、特別だからめっちゃ美味しいんじゃないでしょうか?多分結構人集めると思いますよ。”
なにか知らないのに特別だから頼むってことか。
ばかばかしい。
それとも好奇心でお金を稼ぐ店長の頭がいいのか?
どちらにせよ俺みたいな天才とは関係ない話だ。
寿司屋の前に並んでる馬鹿どもの姿が目に浮かぶようだ。
やれやれと首を振ってコーヒーと卵サンドを頼んだ。
その後、コーヒーと卵サンドをゆっくり食べ終わってカフェを去った。