02
スマホで天使が教えてくれた住所を入れて着いたところは三十階くらいに見えるビルだった。
こっそりもなにも正門から入っていく。
入るとどう見てもヤクザにしか見えない奴らが居る。
どうやらヤクザのオヤジが探してる犯人だろう。
お客である俺を歓迎するために近づいてくる二人、後は上かな。
その中で太ってる、二人ともブタだけど、その中でももっと太ってる奴が話しかけてくる。
“なんだ、お前。ここがどこだと思って―”
典型的な台詞に右手を上げ、
“オッケー、ストップ。それよりお前らのボスはどこだ。”
奴の言葉を切って聞く。
それにあきれたように嗤う奴の顎を刀の頭で打つ。
たった一撃、死には至らないだろうけどそれだけで十分だ。
残りの奴は鞘のまま両脚を打ち倒す。
倒れる奴の髪を握って聞くけど、返事はない。
“言わなきゃ殴られるだけだけどな。”
ゴンッ、とした音と共に気絶する。
それを捨ててエレベーターに乗り最上階のボタンを押した。
ピンポーン、と開けるエレベーターのドアの前に武器を持った男たちが立っていた。
一階の状況を知っていたみたいだ。
“だったら手伝いに来いよ、つれないな。ところでバカと猫は高い所が好きって言うらしいが、さすが最上階だね。”
“貴様!ボスがバカと言いたいのか?!”
刀を持っている金髪の痩せっぽが叫びながら走って来る。
それを手に持った鞘で止め、
“バカと言ったのはてめぇだぞ?猫かも知れないのにさ。”
“そんな馬鹿げた―”
“うるせ、寝ろ。”
無駄に刀を上げる奴の胸を刺してやる。
あ、もちろん鞘で。
それでも辛いのか倒れてかっかっとしている。
うん、死ななくて安心。
“貴様―”
倒れた奴の仇を取ろうとしてる奴らを見て刀を抜き―
“離れろ。”
遠くで聞こえる一言で道が開いた。
ヤクザのボスとしては意外と頭よく見える男だった。
最近流行ってるインテリヤクザって奴かな?
“ここまでなにしに来た。復讐でもしに来たのであれば帰ろ。うちの子に手を出したのはお前らの方が先だろ?”
“何?先だと?彼女を殺したのはてめぇらが先だろうが!”
俺の言葉に奴はなにも知らない子供の相手をしてるよう、顔に呆れた表情を浮かんだ。
“だからさ―、なにも知らないと引っ込んでろって言っただろ?どうせお前もあの娘に変なこと言われただろうから生かせてくれるよ。理解したらもう去れ。”
“……だからってこっちは人を殺した奴を見逃すわけには行かねぇんだよ。”
俺の答えが気に入らなかったのか奴が横に首を振った。
“まあ、ならしょうがないな。ここで死ね。”
奴の右手が上がる。
手に持っているのは一丁の拳銃。
なにかを考える暇もなく銃口から火が出る。
“うっ”
パン!
発砲の音とほぼ同時に左目の上から苦痛を訴えてくる。
どうやら眉毛の方を掠ったようで血が流れ、世界の半分が赤くなって行く。
よく見えないがそのまま敵に走りそのまま右腕を振った。
奴は振られた鞘を左手に持っていた刀で止めて、
“この状況になっても刀を抜かないのか、馬鹿が。”
そのまま右手に持った銃を俺の腹に押し、パン!と言う銃声と共に俺は倒れた。
奴は自身の部下たちに何かを行ってからそのまま視界から消えていく。
ズルズル、引きずる感覚、ピンポーン、エレベーターの音。
ウィーン、開ける自動ドア、バタッ、投げられる体。
落ちる時に頭をぶつかったのかかなり大きい衝撃が伝えてくる。
そうやって強制的に上を向いた俺の世界に見えるのは、だた――
――月、それだけだ。
――お腹から血が流れるのが感じられる。
乾いた冬空にはあまりにも輝く満月だけ。
――血が足りないのか、眠気が襲ってくる。
血が視界を塞いでるせいか、月が赤い。
――それなのにどうしても赤い月は脳裏に刻まれ、
赤い月は、きっといつか――
それで終わり、世界は暗転した。