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自作の小説の公開ブログ

自作の小説の公開してみます。
誤字多いと思います。


 02

 もうすぐ午後五時になる時刻。
約束の場所に行くため赤いシャツと柿色のズボンを履いた上にキャメル色のコートをかけて屋敷の玄関を抜け出す、もちろん腰まで来る長いかつらをかぶったまま。
古い屋敷の外見とは似合わない自動のドアロックが閉まる音を聞いて屋敷の外に向かう一本道を歩く。
今歩いてる庭と変わらない場所は元の主人を失った今、名無き草でいっぱいになっている。
それも今は冬だから枯れたものが多いけど、夏になったら結構生えて僕の膝まで来るのが普通になっている。

“人たちを呼んで片付けようかな。僕一人でするには広すぎるよな”

見回しながら独り言を残して私有地と国の山の警戒である高い鉄柵のドアを通り抜ける。
孤高を自任していたあの人は人が来なさそうな山の中腹に屋敷を建てて特別なことや仕事以外では出ることがなかった。
メイドと秘書そして庭師、この三種類の人だけを雇って自分は引きこもりのような生活を送っていた。
そんな日の中で、お金さえ払えばなんでもする便利屋と言う利用できそうなガキを見つけて秘書に連れて来いと言ったのだが、ガキと言うのは言うまでもなく五年前の僕のことだ。
なんでもとは言ったが違法行為までする気はなかった。
しかし人はお金に弱い生き物。
でも裏にはあの人が居るから捕まえることはなかったけど。
そんな人の下で、あの人が死んでからの一年を含めて約五年間を屋敷から町まで往来しているので、このバカみたいな丘を登り降りするのはもう鍛錬されているというか、日常の一部になっている。
ちなみにあの人が死んで働いていた人たちをやめさせた後、屋敷で出前を取ることが多くなってたけど、六月前から最低二人前からという食堂街の変なきまりができ、最近は出前を取ることが少なくなっている。
やはりメイドさん一人くらいは残しておいた方がよかったかも知れない。

“でもまあ、しょうがないか。今の仕事で一人生きるのも大変だしな”

無駄な意地を張ってあの人のお金を使わない自分の愚かさにため息をつきながら長い坂道を降りていく。
歩いて約二十分くらいになるとぼちぼち住宅が出てくる。
車一台通るくらいの狭い道を間にマンションが並んでいる。
普通一階の店で働いて二階に住んでいる家庭が多いけど、最近は建物を丸ごと店に造るトレンドらしい。
そう作っても無駄に古い町なので外部から人が来ることはないと思うけど、それが変わって行くってものだろ。
歩く途中に、仕事で知り合った人たちに挨拶しながら丘に建てられていた住宅街を抜けると、そこには今まで歩いていたところを貧しく感じるくらいのビルが出てくる。
広い中央の白色のブロックで作った歩道の間には並木を植えていてその両側にはビルが建てられている。
ビルの内部のほとんどは結構な人たちが使っている店になっている。
丘に建てられている住宅街を除いて、平地にあった商店があったところは最近行った再開発事業でビルが入るようになったのだ。
正直言うと現代を生きる子供たちにはこれよりいい話はなかったけど、以前から生きて来て今からも商売で生きていく人たちによっては自分たちの生活を奪っていく脅威だろう。
そのせいで何代にわたって商店を繋いでいる商人たちは積極的に反対したが、結局国の承認で再開発に入った。
正確には再開発に入るところに住んでいた人たちが多く、丘に住んでいる人たちの中でも商売をしていない人たちにとっては新しい商店街が入る方がいいと思っていて国がこれを承認したのだ。
そんな状況で何故か単なる便利屋さんに過ぎない僕に既に承認が落ちた再開発を止めて欲しいと言う変な依頼が入ったが、一般の高校生が国を相手にできるものがあるはずもないので、

“あの時はこれが最善だったけどな……、今頼まれていたらなんか変わったのかな”

事実ビルとは言え、大都市とは違い五階くらいの低い商店があっという間に並ぶように建てられた。
ビルの高さが低いのはせめて新しい入る店の数を減らすためだったけど、それがよかったのか悪かったのかは未だにわかってない。
ただあの時の僕が最善を尽くした結果だ。
そうやって僕にもちょっとは絡んでいる、あんま残ってないクリスマスを祝うための飾りが溢れている商店街を歩いて、もう常連と呼ばれてもいいんじゃないかなと思うくらい最近毎日来ているカフェに入る。
学生たちは既に休みなのか、学生に見える若い子たちが結構見えている。
その中に知り合いが居るか見回りながら確認するうちに、カウンターと入り口から一番離れているところに座ってテーブルにコーヒーを乗せたまま、文庫本を読んでいる約束の相手を見つめてから注文を済ませるためにカウンターに近づく。
彼女は高校を卒業してから髪を染めたのか、髪色がネイビーブルーに変わっていた。
でも長さは相変わらず項がちょっと見えるくらいの短髪のままだった。
彼女は高校の女子の中で唯一に今まで連絡している女の子だ。
まあ、高校以来に連絡したのは今日から一週間前くらいだけど。
今日は赤いTシャツに赤と黒のチェック柄のスカートを履いている。
隣の椅子に置いてあるバッグの上に半分に折りたたんであるコートはキャメル色だった。
注文を終わらせ番号札を持ちスマホの時間を確認しながら彼女の向こう側に座る。

“こんにちは、籾蒔【もみじ】。まだ十分前なのに早いね”

挨拶をすると読んでいた本から目を外してこっちを見てくる。
親がお金があるせいなのか、それともただ遺伝子がいいだけなのか結構な美少女だ。
髪色もそうだけどちょっと上を向けた目尻のおかげでクールな人相になっている。

“今日も相変わらずの美少女ね”

“……”

言っておくけど、僕は人の顔を見て平然とあんな台詞を言えるほどの勇気を持てない人間だ。
今の台詞は籾蒔の言葉なのだ。

“それより昨日も言ったけどもみじって呼ばないで”

読んでいた本を閉じて自分の白いバッグに入れる籾蒔。
苗字が籾で名前が蒔と言う、苗字が夕で名前が緒である僕が言うのもなんだけど変な名前だ。
名前だけのジって呼ぶのもなんか変だし、苗字と合わせたらモミジという綺麗な名前になるせいか高校の時代はクラスの親しい人は彼女のことをモミジと呼んでいた。
しかし高校を卒業してから名前を変えたらしい。

“籾蒔【もみまき】だっけ?”

“うん、夕君は特別にマキで呼んでいいよ”

漢字を変えるのは結構面倒だったので読み方だけ変えたらしい。
それにしても何故か上からの目線で言っておくけどきっと皆にそう言っているだろう。
名前を変えた理由としては苗字と一緒に呼ばれるのがいやだったみたいだ。

“それよりなんでズボンなの?スカート履いてきてって言ってなかった?今日から体の方だから”

僕の脚の方を見て気に入らなかったようで疑問を投げてコーヒーを飲むモミジ。

“かつらもいやなのにスカートってあり得ないだろ。昨日ズボンでいいって言ってたでしょ?”

モミジの疑問に文句を言うように答えるとちょうど注文していた番号が呼ばれたので席から離れてカウンターに向かう。
店員さんからコーヒーを貰って席に戻り、隣の席にコートを置いてから座るとモミジが口を開ける。

“後姿を見たらズボンも悪くないね、どう見ても女の子”

言いながら笑うモミジに、うるさい、と一言を投げてコーヒーを飲む。

“ところでかつらは被らないとだめ?お前のところに行ってからでいいでしょ?外で絵を描くわけでもないし”

“だめ。むしろスカートを履かない分だけ値段下げたほうがよくない?”

“いやいや、依頼は絵のモデルで、女装じゃないでしょ?”

そうだ。
もちろん既に知っていると思うけど僕がかつらを被っているのは趣味ではなく、百パーセントこいつの変な依頼のせいだ。
モミジの依頼は唐突だった。
時は二週間を遡る。
それはいつもと変わらず仕事がない僕が屋敷で時間を潰しながら、今日の夕飯はなににしよ、と悩んでいた三時ごろの出来事だ。
太陽の光が暖かい屋内のテラスで有名な推理小説を読んでいたら、テーブルに置いてあったスマホが久しぶり音を出した。
スマホには「籾蒔」と表示されていた。
この時電話に出てなかったら、いや、結局はこうなっただろうけど。

“あなたの町のゆうちょ工務店です。なんの御用でしょうか?”

発信者が誰かわかっているけど、まず営業のキャッチフレーズを投げると相手の返事が聴こえて来た。

“あ、お父さん?私よ、私。ちょっとお金必要だけど送ってもらえる?”

“これが噂のオレオレ詐欺か?悪いけど僕には僕と同じ年の娘はないけど”

変な問いに変な答えをすると相手がおかしいように声を出した。

“あら、おかしいな。絶対バレると思ったけど。なんでわかった?”

“せめて子供の声出してよ。そもそも娘も居ないのに騙されるわけあるか”

僕の真面な返答に、それもそうね、と一体どこまで本気なのか、真面目な声で頷いてくる声。
変なことをするのを見たら間違いなくモミジだった。

“で本当にお金が必要なわけでもないだろうし、どうしたの?”

“お金はいつも必要だけど大丈夫。実の親にさっきと同じ電話をしたらお金はすぐ入って来るから。それより私の番号消した?”

実の親にも振り込め詐欺みたいなものをしているのか、こいつ。
いや、実の娘がお金が必要と言ってるだけなのか?

“消してないけど、なんで?”

“じゃあなんでキャッチフレーズなの?”

どうやら受けて早々のキャッチフレーズが気に入らなかったようだ。

“一応仕事する人としての礼儀かな?”

“そんな礼儀要らないし”

“はいはい、で?三年ぶりかな?なんで電話したの?”

高校を卒業してから初めてだからほぼ三年になる。
冗談を言うだけに電話したわけでもないだろうと思って用を聞くと、モミジが返事した。

“二年九ヶ月ぶりだよ。卒業は二月だったから。それよりいつから私たちが用がある時だけ電話する間になったの、悲しい。大学に入ってから一度もしてくれなかったし。夕君、冷たい。いつまで私が先に電話しないとダメなわけ?”

“えっと、高校の時もそんな親しくなかったよな?”

正直言って高校の卒業前の二年間は同じクラスだったけど実際に話すようになったのは三年生の冬休みの前、ちょうど三年前のこのくらいだ。
短い間に仲良くなってもクリスマスの前だし、そりゃあ付き合う奴らも居るかも知れないけど、僕はそんな青春する場合じゃなかったから。

“おかしいな。曖昧な記憶には嘘をついても真実と受けると今朝テレビで見たけど、嘘だったのかな?”

“おかしいのはお前の頭だよ。卒業式のこと忘れてる?”

約三年前の高校の卒業式のことを思い出す。
冬が終わり暖かくなった三月の卒業式。
式が終わって、別に親しい友達も居ないのでそのまま帰ろうと教室を出たばかりの僕の手首を握る手があった。
後ろを向くと、僕より10㎝くらい低い短髪の女の子が手首を握っていた。
卒業の後に首都圏近くの大学に通うため引っ越しすると言っていた、クラスメイトの中で唯一に僕に話かける女の子だ。
三ヶ月前くらいに仕事で話すようになった彼女が何の用で僕を止めたのか理由を聞こうとすると、

“ちょっとこっち来て。話したいことがある”

いいかどうかも聞かずに手首を握ったままどこかに連れ出した。
自己中心的と言うか、頭おかしい気がする女の子の手に引かれ近くの空き教室に入る。
高校の卒業式。
女の子と二人だけの教室。
どこかの恋愛漫画やドラマで見れそうな状況にあまり期待しては居ないけど、きっとこの状況なら誰もがそう思っていただろう。
僕もまたちょっとした期待を抱いて少女の言葉を待った。
やがて少女は口を開け、

“大学に入ったらここのことは全部なかったことにしたいから連絡しないで。いくら私に会いたくてもさ”

……。

“今、なんて言った?”

“だから、私に会いたくて電話をするとか、会いにくるとかしないで欲しい。わかった?”

は?はあ?はあぁぁぁ?
告白もしてないのに振られたような、なんとバカな話を。
ちょっとだけだけど期待していた自分の愚かさに笑いが出て、全力で微笑みながら答えた。

“うん、そんなことしないから”

この時ほど人を向かって明るく微笑んだこともないと思う。
ちょっとした怨望が混ざっているけど、それを気付くはずもない目の前の女の子は首を傾げた。

“おかしいな”

何かが自分の思う通り行かなかったのか、そのまま最後の挨拶をして教室を出た。
その後姿を見ながら盛大にため息をついた僕は何事もなかったかのように帰宅したのだ。
そんな卒業式の青春なんてない思い出をしていたら、スマホの向こうのモミジが思い出したかのように話す。

“そんなこともあったね。寂しがる顔をみたいと思っていたのに。すっごく笑っていたよね、あの時”

だからおかしいと言っていたのか。
このモミジと言う女は自分の思う通りに行かないと、おかしいな、と言う口癖がある。
ほとんど自分の思う通りに行かないので、お前の頭の方がおかしい、と返すほうが多かった。

“で?大学に行ってから連絡もしないようにしていたモミジさんがどうしたかな?”

“その大学のことで頼みたいことがあって”

“大学のことで?”

大学のことに関連して僕に頼むことってあるのかな、と思っていたらモミジが話が続ける。

“うん、だから時間合わせて来て、じゃあ”

“ちょっと、待っ―”

僕が話を終わらせる前に既に切れた電話を見ながらため息をつく。
無駄な話ばかりで結局依頼に関した話は一言で終わらせるとか。
しかもまだ内容ところか、時間と場所も聴いてない。
呆れてこっちから電話しようかな、と思っていたらメッセージの通知が鳴った。
発信者は見ることもなく籾蒔だった。
内容としては約束の日付と時間そして場所の住所があって、その最後に、

「夕緒さんの訪れをお待ちしております。あなたの心の愛する姉、籾蒔より」

と言う変な文言が書いてあった。
どうやら僕のキャッチフレーズの真似のようだけど、答えとして次のように書いて送る。

「誰が姉だ、誰が。むしろ兄と呼んでいいよ。あなたの町の便利屋さんゆうちょ工務店、夕緒より」

そうすると一分も経たずにすぐ返事が来た。

「お姉ちゃんなら呼んであげてもいいけど、どう?(〃ω〃)」

その返事に僕は久々に、

「うん、要らない(^ω^)」

最上の笑顔で返答をするのであった。
そうやって約束の日であった今日から一週間前、服はそんな多いほうではないので、今日と同じ服を来て、午後六時にこのカフェで出会った。
今日と同じところに座っていたモミジの髪色はネイビーブルーになっていた。
身長と綺麗な顔は変わってなかったら、見たらわかるくらいだった。
膝を超える長い赤のスカートにカフェに暖房が回っているとは言え、白い半袖のシャツを着ていた。
手には今日と変わらない文庫本。
その前に座りながら、寒くないの?と聞いたらモミジが顔を上げた。

“十分早かったね、夕君。ちょっと寒いかも。近くだからいいかと思ったけど”

そう言いながら席から立ち横に畳んでいたコートを着た。

“じゃあ行こう”

そう言って出口に歩き出すモミジに付いてどこかのビルに向かった。
商店街の建物も一つであるビルの三階。
大きい硝子には白い壁紙のようなものがついていて奥が見えないようになっていた。
何をするところなのか想像をしながらエレベーターに乗り三階で降りたら鉄のドアがあり、それを開けるモミジの後ろをついて中に入る。

“お邪魔します”

ドアを通るとぽっかり空いた広い空間が出た。
建物を支えるための柱だけを残して、部屋と部屋を分ける壁もなくまだ工事の途中なのか壁には白い壁紙が貼ってある。
その中で入ってすぐ左の隅っこに椅子と描くために用意したようなキャンバスが置かれていた。

“こんなところで絵でも描くの?”

まだなにも描かれてないキャンバスを見て聞くと、モミジが頷いた。

“うん、今から描くよ”

“さすがは美大生ね。冬休みにも描くんだ。苦労してるね”

“描くのは苦労と言うくらいでもないよ。今から夕君の方がもっと苦労するだろうし”

うん?僕の聴き間違いかな?
僕のほうが苦労するってなんだ?
その疑問を聞こうとしたらモミジが話を続けた。

“これ貰って。これからそれ着て来てね。二週間くらいかかるかな?”

“これなに?”

自分の家から持って来たようなショッピングバッグを貰い、確認しようと中を見ながら聞くとモミジが答えた。

“かつらと服”

“かつら?”

モミジの言葉を聴いて中からものを出してみたら、黒いかつらがだった。
被ったら腰まで来るそうなかつらを右手に持って、これをどうしろと、と漫画にでも出そうな感じに両手を上に向けてまま上下すると、モミジが僕の手からかつらを取って僕の頭に被らせた。
そして満足した表情で、

“さすが私の目は間違いがないね。完璧な美少女だよ?”

バカな台詞を口にした。

“かつらはいいとして。いや、かつらもよくないけど。それより本当にこれはなに?”

かつらを被ったままショッピングバッグに入っていた残りのやつを出した。
どこかの少女漫画にでも出そうな、それもヒロインが着そうな白いワンピースだった。
それも何故か胸パッドまでついている。

“綺麗でしょ?できるだけ似合うことに選んだよ。あ、もちろんなんでも似合うけど。あとは麦わら帽子まで被ったら完璧だと思うけど、気に入るものがなくて”

一体なにが残念なのかわからないけど、残念だとため息を出す彼女。
僕はただこれが一体どういう冗談かと思い、もう一度聞いた。

“で、これはなんで持って来たの”

“うん?モデルの時に着るためだよ。ちょっと高かったけど似合うものを買うために頑張ったよ”

褒めてって感じで言ってくるけど、全然褒めることじゃなかったので無視した。

“モデルって僕?”

“うん、依頼だからモデル代はないけど、依頼代は出すよ”

まだするって言ってないけど、もうすると思っているようだ。
それに依頼だから依頼代は当然だし。
やはりこんなのは一気に断るのが自分のためと思い口を開けて、

“依頼代は心配しないで。前回と同じでいいんだよね?でももっと上げるから私と会う時は外でもこれ着ていたらだめ?”

“あ、うん。それが欲しいならそれまでするよ。なんでも言ってください、モミジ様”

お金に屈する僕だった。
前回とはきっと三年前の、あの時のとこだろうから、何になろうとこれから三年は食べて生き残れるってことだ。
最近仕事がない僕としては大変ありがたいことだ。
やはり自分を騙さない者は天の助けを貰うことだな。
でもどうせ助けるならいい仕事でしてくれるとだめかな、と思っているとモミジが話し続ける。

“じゃあ仕事の話も終わったから始めよ”

“オッケー、わかった”

“うん、じゃあ着替えて”

……。
モミジの言葉に僕は手に持っていたワンピースを見て、

“いや、本当に頼みたいですけどこれは着ない方向でだめですか?”

心の中から依頼人に頼むことになったのだ。
結局顔を描くまではいいと言ってくれた心広いモミジ様の言葉によりかつらだけで初の仕事が終わったのだ。
そういうわけでモミジの依頼を受けた僕は彼女に会う時はかつらを被って出ると言う変な依頼まで受けることになったけど、スカートまでは拒み今のような状況になったのだ。
そして何故か絵を描く前にカフェで会うのがこの一週間続いている。

“まあ、過ぎたことはいいけど。でも今更だけど僕に女装させずに女のモデルを雇ったらいいんじゃないの?”

僕の疑問にモミジがなんともないように答える。

“いや、女性を描きたいわけじゃなくて夕君の女装姿が描きたかっただけだからね”

その顔で男として生きてるのは全人類にとって損だと思わない?と付けた言葉は聴けなかったことにしてコーヒーを飲む。
こいつはこう言うけど僕はとても男らしい顔をしている。
見えないから嘘をついているわけではなくて本当に、通り過ぎる女十人の中で八人は振り向くくらい。
もちろんモミジにもこう言ったことがあるけど、

“そりゃあ女の子は綺麗な女の子を見るものだから”

とあり得ない話をしたけどきっと彼女たちは僕の格好良さに振り向かったと思う、いや、それが事実だ。
とにかくその後、モミジの大学生活や僕の無駄な三年間のことを話して時間を過ごしてから彼女のアトリエと言えるビルに向かった。
そして結局その白いワンピースを着ることになったのだが、皆の幸せのために死ぬまで心の中に埋めて生きることにしたのだ。