04
そうやって長い待ち時間の果てに訪れた午前11時ちょうど。
はま寿司の扉が開け、蛇を食らう牛蛙のよう、人で作られた列を食らいつくす。
“ふん、よくも生き残ったな。すぐにでも尻尾を巻いて逃げようと思っていたが。”
やつがまるで戦争から生き残ったように話しかけてきた。
“いちいちうるさいな。そういう無駄な悲壮感はなんとかならないのか?まあ、今日の俺は大変に気分がいいから許すけどさ。”
“フハハハ、まるで気分が悪いとこの私を殺すことができるとでも?そんな間抜けな想像をしていると思ったらすこぶる愉快だな。そうだな、実際に勝てない戦いであれば想像するしかなかろう。哀れな間抜けの想像くらい見逃してやろう。”
やつの言葉はいつも頭に来るけど今日はいい日だから許すことにした俺はどんどん減っていく列を追って前に進んでいく。
開店してから10分くらい過ぎて、いよいよ店に入った。
店に入ると最近流行ってるAIかなにかのロボットが話しかけてきた。
“いらっしゃいませ。番号札を取ってください。”
ロボットがすぐ側にあるキオスクを指した。
「持ち帰る」と「店内で食べる」に書いてある大きなボタンで店内で食べるを押すと次の画面に進んだ。
テーブル席とカウンター席で選ぶボタンが二つ、俺は当然一人で食べるつもりでカウンター席を選ぼうと手を動いた。
“お、これはすごいな。お前は楽に食べるためにもっと待つということか?それとも単純に間抜けなだけなのか?”
“なに?”
既に俺より先に番号札を取ったやつの言葉で画面をよく見るとカウンター席の下に残り席0と書いてあった。
“それを選ぶといくら初めて入った人が出るとしても10分は待たないとだめだろうに。さて、その時まで特別寿司が残っているのかな?”
俺はやつの言葉を無視してテーブル席のボタンを押した。
ちなみに今日はこんなに人が多いのを知っていたからかテーブル席は相席にしているらしい。
だがやつと相席になろうとも特別寿司を食べるためにはこれ以上待ってるわけには行かなかった。
そして当然のごとく、
“フハハハ、お前、実は私と一緒のテーブルを使いたかったのか。やれやれ、今まで俺がその心を分かってくれなくてさそかし悲しかっただろう。でも残念だったな。私は間抜けには関心がないからな!”
やつがなにか騒いでるけど無視して店員を呼んだ。
“特別寿司一つ”
“連れの方は?”
“こんな間抜けと連れとは!赤の他人だ!まあ、今回は見逃してくれるけど次からは気を付けてたまえ。あ、もちろん私も特別寿司な。”
やつの変な態度が問題だったのか、それとも他に問題があったのか店員が躊躇いながら話した。
“すみません。特別寿司ですけど後1皿しか残ってないです。”
“なにっ?!”
それは誰の叫びだったのか、俺とやつは同時に驚いたがやつがなにか気付いたように番号札を店員に見せつけた。
“これを見ろ。私のほうがあいつより先だ!見たまえ、この番号札を!”
213番。
確かに俺が手に持っている214番より前だ。
当たり前だ。
やつが俺より先に番号札を取ったからだ。
“ばかな!あり得ない!!”
“フハハハ、あり得ないことはあり得ないぞ。これでまた私の勝か、この敗北め!”
それで結局はま寿司限定特別寿司はやつの前に置かれることになった。
そしてやつは俺に見せつけるように食べ始めた。
“おおっ!うまい!これはまるで海の中を泳いでいた鯨が高く飛び上がり竜になって口に入って来るそういう味だな!”
なにを言っているか全くわからないけど美味しいってことだろう。
頭に来る。
俺はこうやってまた負けるのか。
いや、こんなのあり得ない!
あり得ない!!!
“こんな世界なんて否定してやる!!!”
そう、あの時のこの台詞。
この台詞が俺の人生をひっくり返した。
すごい魔力の渦を感じたこととともに俺自身がそれに食われるのを気付いた瞬間、俺は目覚めたのであった。