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自作の小説の公開ブログ

自作の小説の公開してみます。
誤字多いと思います。


 03

 寒い冬の朝、電車で降りた人たちが時間に追われるよう急いで改札を抜け出している。
その中で観光客に見える外国人のカップルがいた。
二人とも長い白髪に赤い目を持っている。
差があれば、彼はうなじ付近で髪を結び眼鏡をかけていて、彼女の真っ白な肌とは違い彼は日焼けしたような肌を持っている。
彼女の父親に見えなくもない、高い彼は寒くもないのか冬に似合わない薄い半袖のシャツに腕がないキャメルのジャケットを着てそれよりもうちょっと濃い色のズボンを履いている。

“ここが聖杯戦争の町ですね。一先ず教会に行きましょう。”

彼女が駅にある案内図を見て教会と書いてあるところを手に指しながら言った。
駅から結構離れてる東南の方に教会がある。

“うー、よりによって教会と手を組むとはな。まさか俺を渡すとかじゃないよな?”

彼の言葉に彼女が無表情なまま話す。

“あ、そうでしたね。貴方は異端でしたね。そこまでは考えていませんでした。”

‘まるで感情があるようだが……。俺がそう思うだけか?’

当主には彼女に感情がないと聴いていた彼はおかしいと思った。
何故か彼はその言葉から申し訳なさを感じたのだ。

“いや、大丈夫。ちょっと言ってみただけだ。あんま気にするな。”

“そうですか、わかりました。ただ教会には入らなくてもいいです。外で待っていてください。”

“いや、協力する相手の顔くらいは見ておこう。味方もわからず攻撃してしまったら困るからな。”

“そうですか、わかりました。貴方の好きなようにしてください。”

冬の地から来た二人の魔術師は混んでる人の群れを抜け教会に向かった。


 同じ時間、一人の高校生が学校に向かう坂道を登っている。
生徒の名は間桐慎一。
彼は現在、穂群原高校に在籍している。
この道を登るのはいつも同じ時刻。
そしていつものように後ろから彼を呼ぶ男が一人。

“やあ、今日もいつも通りの時間だね、慎一。”

そう言い慎一の隣に並ぶ茶色い髪の生徒。
慎一が自分より背が高い彼を見つめる。

“頼雅こそぴったりだね。”

彼の名は藤村頼雅【ふじむららいが】
ちょっと暗い性格の慎一と違い爽やかな彼は穂群原の全生徒が知る藤村組の後継である。
日向で法と秩序を守るのが警官ならば、陰で彼らの法と秩序を守り町を守っているのは藤村組だ。
そのせいかヤクザにもかかわらず藤村頼雅は男女ともに人気がある。
しかし本人はあまり人を好んでいない。
いや、好きじゃないと言うより人に興味がないようだが、何故か間桐慎一は見てずぐ気に入り自分から話をかけたのだ。
内容と言えるくらいでもないものを話し合い、学校に着くくらいになって人に興味がない彼としては不思議な言葉が出て来た。

“昨日さ、うちの祖母ちゃんに女が一人来てたけど、なんとなく慎一のような感じがしていたよ。不思議だよな。”

その言葉が気になったのか慎一が女の人の外見と訪ねて来た理由を聞くと頼雅が答える。

“たぶん外国人だったな。金髪のポニーテールだったし。誰から聴いたのか衛宮屋敷を借りていいかって聞いていた。あのなんだ、一番奥にある大きな屋敷さ。”


 深山町の商店街を赤髪の外国人が歩いている。
彼の身長は180㎝くらいでオレンジ色のズボンと白いTシャツにどこで手に入れたか聞きたい豹柄の皮ジャンを着ていた。

“ふむ、円。さっきから我を見ている輩がいるが。”

自分のパッションセンスでつい目立っているのを全く知らない彼が隣で一緒に歩いてる同行人に声をかけた。
日本人である彼は外国人よりちょっと背が低く、黒髪は結構ぼさぼさしている。

“うん?ああ、ここ元々外人は多いけどさ、ランサーみたいな格好いい人は珍しいだろうね。”

円はランサーの外見が格好いいから目立つと思い、

“そうか、なら仕方ないな。で、どこへ行く?”

それを当たり前のように言うランサー。
国籍と年齢、時代さえ超えて二人は完璧なパートナーだった。

“うん?あ、新都行こうよ。暇な時は新都が一番だよ!”

その後、新都に関していろいろ話すうち何かを思い出したか円が急に話題を変えた。

“そういえば、ランサー。お前は聖杯を得たらどんな願いするの?”

“は!馬鹿野郎!男なら願いなんぞ自分で叶えろ。そんな偽物の奇跡に我が手を出すとでも思うか!”

円はランサーの台詞に感動した。
しかしサーヴァントとは聖杯を得るために魔術師の召喚に応じる者。
何故願いがないランサーが召喚に応じたのか。
それが気になった円が聞くと彼が答える。

“そりゃあ戦うためだ。もっと強い奴と戦えると思ったから聖杯と言うシステムに踊らされるだけだ。でなければこんな遊びに合わせてくれる理由なとない。”

単純に強い敵と戦うために召喚されたと言うランサー。
生涯に自分より強かった者が居なかった彼にとっては戦いそのものが願いだっただろう。

“そういうお前の願いはなんだ?魔術師らしく根源でも願うのか?”

逆に円の願いに関して聞くと円が手を振った。

“いやいや、そんなの願ってないよ。俺はただ聖杯戦争に勝ちたいだけ。勝って霜先輩に自慢する。それだけかな。”

言ってみれば彼もまた聖杯戦争をすること自体が目的ってことになる。
聖杯戦争に参加したが聖杯は求めない二人。
やはり二人は完璧なパートナーだろう。
そういう円の言葉にランサーが、

“それは我を召喚した時点で叶ったのと同然だな。喜べ、円。”

自信満々に言い、二人はまた無駄な話し合いをしながら新都へ向かった。
そしてその後ろを追っていた女が一人。

“……。あいつらはなに呑気に遊んでるわけ?”

アサシンの正体を把握するため、織衣はアサシンが現れそうな場所を回して監視の術を取り付けていた。
そういう彼女が深山町に来て円とランサーを見つけたのが約一時間前。
なにか得るものがあるかと思い尾行して三十分が過ぎたころには無意味だと知っていたけど、その三十分が勿体ないと言う理由で更に三十分を無駄にしたのだ。

“コンコルド効果ってもんか……。マジで無駄したな。寒いし帰ろう。”

もうこれ以上は彼らをついて行くのが無意味だと判断し彼女は尾行をやめて自分の道を歩き――

“あれ?あれは「アトラス院」の錬金術師?いや、まさか。見間違いでしょ。行きますか。”

アサシンが現れそうな場所の探索を続けた。


 太陽が熱く地上を燃やす昼。
白髪の二人が外人墓場を通り過ぎて丘を登っていた。

“それにしても教会と手を組むとは。魔術師的に大丈夫なのか?”

男が女に向かって疑問を投げる。
そもそも教会には魔術を排斥している。
魔術師であった彼も教会にはいい思いをしていない。
それが教会を嫌がる理由の一つだろう。

“魔術師的には大丈夫です。ただ聖杯戦争としては反則です。他のマスターにバレないようにしたほうがいいでしょう。”

男の質問に彼女が堂々と言った。
魔術師たちの戦いでの教会の立場は監督役だ。
聖杯戦争が一般人にバレるのを止めるため、その後処理をしている。
そんな理由で聖杯戦争に参加するマスターは自分が参加したことを知らせどんなサーヴァントを召喚したのかも伝える。
その代わりにもしサーヴァントを失って他のマスターに殺される危険がある場合、教会で保護している。
どうやら彼女たちはその教会の人と手を組んだみたいだ。
いつの間にか着いた教会の扉を押して入るとその中は結構すかすかだった。

“変ですね、誰も居ません。”

“まあ、神父とは言えいつもここにいるのではなかろう。奥に入ってみよう。”

彼の言葉に女が頷く。
二人が教会の中の方に入ろうとしたら、中から誰かが出てくる。

“そんな必要はない。ここでする話は意外と中まで聴こえて来るからな。”

中で出た男性の髪は訪ねた二人の髪と違い短かったけどその色は同じだった。
彼は190㎝に近い長身で神父服を着てる。
もし彼が神父服を着ていなかったら、彼を見て誰が神父と思うだろうか。
神父としては若い、二十代としか見えない彼が発する雰囲気は相手を圧倒するものだった。

“隣に立っている人は誰だ、レイヤスフィール。”

もし彼女が普通の人だったらその空気に堪えずに目を逸らしただろう。
だが普通の人どころか人間ですらない彼女はその空気に圧倒されず神父の目を見たまま隣の男を紹介した。

“長老から聴いていませんか?彼が今回の聖杯戦争に参加するバーサーカーです。”

女の言葉に神父の表情が歪んだ。
彼の目に入ったバーサーカーと呼ばれた男は今回聖杯戦争に参加した魔術師よりも弱そうに見えたのだ。
それに狂戦士という名とは違い彼は戦士よりは魔術師のように思えた。

“この者がライカンスロープだと?変だな。それとも召喚直前にサーヴァントを変えたか?知らせは来ていないが。”

“いいえ、ライカンスロープで合ってます。ただ正確に言うと今の彼はライコット・スロッツですけど。紹介を、バーサーカー。”

バーサーカーと呼ばれた男は彼女の声に首を振った。

“いや、話はマスターに任せよ。教会はいやでね。しかし敵意をむき出す者を相手する必要はないだろ。お互いの顔は知ったから後は任せるとしよ。”

彼は神父が気に入らなかったのか、それとも教会そのものが嫌いなのか嫌がるのを隠しもせずにその姿を消した。

 Lycanthrope。
ギリシャ語の狼【Lycos】と人間【Anthropos】の合成語で言わば狼人だ。
伝説によると狼人になる代表的な方法は大きな狼または狼人に噛まれたり魔法使いの呪いを受けて変化することらしい。
それ以外でも黒魔術師が自身の意思や魔法の道具を利用して変わったり、テングクワガタの花を食ったり、狼人が残した足跡によどんでいる水を飲んでも狼人になれると言う話がある。
狼人になった人は手の人差し指と中指の長さが一緒で手のひらに毛が生えていて、眉毛が並行眉と言う特徴を持つと伝わっている。

“ライカンスロープの伝説でもあるように彼は元々錬金術師だったようです。彼は賢者の石を作るためには不老不死の体が必要と思い薬を作りましたが、その薬の不作用で体に変異が出ていわゆる化け物になったようです。そしてそれを見た人たちによって噂が広がりライカンスロープと言われたみたいです。召喚された今は昼には人間だったころの、夜には化け物だったころの姿になるようです。これは私の推測ですがどうやら月を見たら変わると言われた伝説に影響を受けたようです。”

女の説明が終わると男が呆れたように苦笑いする。

“この世全ての悪【アンリマユ】を召喚しようとしてただの人間を召喚した第三次聖杯戦争の時と同じく変なものを呼び出したってことか。さすがはアハト翁、運がついていない。”

“はい、その通りです。彼を召喚した時、ユーブスタクハイト大長老は「これではまるで三回目と同じではないか。聖杯は諦めよ。今からホムンクルスの起動を止める準備に入る。」と仰いました。しかし私の記憶に長老の思う通りになったことが一度もなかったのでこれくらいの異常は予想していました。なので私にとって変わったことはありません。”

無駄にアインツベルンの当主を思い出せるような言葉に続いた話に嘘はなかった。
ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンと言うものは何故かいつも自分が思う通りなることがなかった。
自分が参加した三回目の聖杯戦争では悪魔と呼ばれる「この世全ての悪【アンリマユ】」を召喚したがそれは単純な人間であって、四回目の聖杯戦争では聖杯を目の前にして雇用していた異邦の魔術師に裏切られ、すぐ前の五回目の聖杯戦争では存在しないはずの異質のサーヴァントによりなにも出来ずに敗退した。
そんな事実とは別にそのその彼女は嘘と言う人間のものを学んでいないのだ。

“そうか。ならどうせ今回の聖杯戦争で最後だ。死ぬ気で頑張るがよい、レイヤスフィール・フォン・アインツベルン。さあ、ついて来い。聖杯戦争に参加したマスターとサーヴァントの情報を教えよう。”

“はい、わかりました。ところでなんて呼べばいいでしょうか?”

彼女の言葉に神父が何かを考えては、

“まあ、言峰【ことみね】と呼んでおけ。”

そう答えた。


――――――
クラス        Berserker【バーサーカー】
マスター    Lëjasviel von Einzbern【レイヤスフィール・フォン・アインツベルン】
真名        Rycott Slots【ライコット・スロッツ】
性別        男性
身長・体重    180cm・70kg
属性        混沌・狂
ステータス    筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運D 宝具B

 クラススキル

狂化 E-
―理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。パラメータ補正がない代わりに理性を持っている。

 保有スキル

魔術 A+
―生前に魔術をしようしていたことを知らすスキル。彼は本来優れた魔術師だったため、バーサーカーにもかかわらずランクが高い。

――――――

 夕焼けになる時刻、深山町のある日式屋敷のリビングで起きて間もないリノ・エーデルフェルトはテレビを見ていた。
リノはチャンネルを変えながら呟いた。

“あ、退屈だな。アーチャー、なんか面白いことないかな?”

そのうちに見たいものがなくて呆れたのか止まったチャンネルには新都にあるとあるホテルが映っている。

―昨夜、二人の客が目眩を訴え……

‘そういえば近くに商店街がありそうですが行ってみたらどうですか?マスター’

彼女の質問にアーチャーが霊体のまま答えた。
しかしアーチャーの勧誘にもかかわらずぼっとテレビを見ていたリノが何かを思い出したように話した。

“決めた。どうせ出るなら新都まで行こう。”

リノは白いマフラーを巻いて、霊体化したアーチャーと新都に向かった。


 円とランサーは深山町から橋を渡って新都の繁華街を見回っていた。
円が最後に新都に来たのは三年も前のことだ。
高校時代とその後の約二年間は無愛想な生徒会長の霜とうるさい問題児だった同級生の鏡月【きょうげつ】と一緒に新都まで遊びに来たりしていたのだ。
それが変わったのは三年前に円がロンドンへ行ったのが原因だった。
円が消えると自然と性格が真逆な霜と鏡月は連絡がなくなったのか、たまにくる鏡月の電話で霜の話を聞くことはなかった。
そんな感想を抱き、新都を見回る。

“へえ、久しいな。ここも結構変わったな。”

“あれはなんだ、円。”

円が不思議そうにきょろきょろしているとランサーが彼を呼んだ。
ランサーが指したところには自分たちに後ろ向いて立っている人とそれを撮るカメラを持った連中がいた。
専門のカメラで人が結構集めているのを見るとどうやらテレビの放送のようだ。

“昨夜、二人の客が目眩を訴え―”

円はそれを見て面白い遊びでも思い出したかのようにランサーを置いといてカメラのほうに近づいていく。
カメラに映すところまで進めた彼が手を上げようとする。
しかしその腕を掴むものが居た。

“円、我の言葉を無視するか?”

“あ、ちょっと待ってよ、ランサー。”

そう言って改めてカメラの方を見ると既に撮影が終わったのか整理するところだった。
円が落ち込みランサーを見つめる。

“ちぇー、テレビに出るのかと思ったのになー。まあ、いいか。”

どうでもよかったかのようにすぐ忘れ再び雑談をしながら繁華街を見回った。


 霞が広がるよう夕暮れが迫る時刻、一人の男性が間桐家のベルを鳴らしている。
彼はこの家に住んでいる霜と似てる身長に、甘色の髪は結構長いうなじを隠している。

“Fuck!もう三回も押したぞ、居ないのか?”

‘どこか出てるんじゃないか?マスター。’

イラついてる自分のマスターに霊体化した状態のライダーが声をかける。

‘次にまた来よう。今は一先ず商店街ってところに行ってみないか?’

どう考えても自分が行きたいだけとしか思えない発言だった。
露はそれを無視して屋敷の玄関の格子を握る。
そして決断したように自分の魔力回路を回して脳と視神経に集中させる。

“ライダー、俺が来るまでこの体守ってろ。”

‘うん?どこに行くつもり―’

ライダーの話が終わる前に彼の意識は目に集中し間桐家に入り込む。
玄関を過ぎ、廊下、リビング、台所、トイレ、部屋、階段を通して二階の部屋に入り――

“見つけた。”

彼が視界を戻せる。

‘なにが見えたのだ?マスターよ。’

ライダーはなにも言わずに玄関についていて急に見えたと言う彼が理解できなかった。

“二階の部屋で寝ていたか。壊せ、ライダー。”

‘うん?’

“あの二階の窓をぶっ壊せ。なら出るだろ。”

ライダーはそれでいいのかって思ったけどことを早く済ませ商店街に行きたかったのか反対なく剣を動かした。
剣が空を飛んで屋敷に広がった結界と共に露が指していたところを壊した。
それに男性が驚く声が聴こえ、まもなく屋敷の中からわかめを被ってるような少年が出てくる。

“な、、なんですか?!あなたは!”

“お、いよいよ出たか!安心せい、戦いに来たわけじゃない。”

急いで飛び出た少年に露が安心させるように言う。
窓を壊した者が安心させようとするのが面白かったのかライダーが霊体のまま笑う。

“はい?”

そして当然状況を把握しきれてない少年だった。

“いや、そのなんだ。お前が聞いているかわからないけど実は俺が君を兄だ。”

何故か少年に衝撃な事実を伝える露。

“え、、ええっ!まさかお父さんに女が?!いや待って、僕が弟だからうちのお母さんがセカンド?!”

露らしくなく大人しく伝えたはずだけど、だからってその内容が変わるわけでもなく当然少年は衝撃を受ける。

“うん?いや、母は同じ―”

“どうした、慎一。……マスターか、お前。”

誰かが後ろから話をかけ露が後ろ向くとそこには黒髪の美男子が居た。
彼の身長は自分と似ていてその顔つきも見たような気がした。

“あ!霜兄、お帰り。いや、それより大問題だよ!お父さんに隠し子がいたみたいだよ!”

“な、、何、だと?!”

少年の話があまりにも衝撃だったのか、何にも驚かなさそうな彼の表情が歪む。

“だから兄さんの子供ってことか?じゃあ俺の甥ってことか?!待って、落ち着け!慎一!”

“いや、落ち着くのはそっちの方じゃないか?”

“落ち着けと?!これが落ち着ける問題か?!馬鹿野郎!”

“いや、そっちが先に言ったんじゃ、、”

彼の言葉に露が戸惑う。
しかし彼は露のことを気にもせずに屋敷に入ろうとした。

“早く慎五【しんご】兄に連絡してみないと!”

その言葉に露が不思議そうに口を開ける。

“うん?慎二【しんじ】じゃなくて?”


 二人の男、間桐霜と浅上露が間桐家のリビングに置いてあるソファに座て向き合っている。
ぱっと見たら髪と肌の色違いでわからないけどよく見るとその顔はまるで印を押したような瓜二つだった。

“つまり、私とあなたが双子であなたのほうが私の兄だ、ってことですか?お父さんについて聞いたのは一年前で?”

“あ、そうだ。”

霜の確認に露が短く返答した。
そしてさっきから不思議に思っていたことを聞く。

“なんでお父さんの孫がお前を兄って呼んでるんだ。叔父だろ?”

“この歳で叔父と呼ばれるのはいやでして。なにか問題でも?”

何故か攻撃的な霜の言葉に露が笑う。

“いや、全く。問題があれば50を超えて子供を産んだFuckingオヤジだろ。”

“まあ、確かに考えてみれば慎五兄がそんなことをするわけがない。”

“それにしては結構戸惑ってないか?弟さんよ。”

露のからかいにして霜は顔一つ変わらずに話題を変える。

“そんな覚えはないですね。それで25年も経った今弟を探しに来たわけでもないでしょ。なにしに来ましたか?共闘の提案でも?”

“いや、悪いけど単純に会いに来ただけだ。まあしいて言うなら、Fuckingオヤジでも会ったら一回ぶん殴ってやろうかと思ったけどな。”

最初に霜から親父の死を伝わった露が冗談を言うように笑いながら話して席から立つ。

“顔は見たからもう帰るぞ。敵マスター同士が長く居てもしょうがないだろ。”

“待ってください。一つ聞きたいですが、なんで聖杯戦争に参加しましたか?”

霜の質問に露は正直に言うかどうかちょっと悩んで口を開けた。

“隠すことでもないか。Fucking爺さんたちに聖杯を押し付けて自分たちが後継を間違ったってことを見せようとしてるだけさ。”

“個人的な理由ですね。”

何故か気分が悪そうに言う霜に露が尋ねる。

“その通りすっごく個人的な理由さ。で、そういうお前は何を求めるんだ?弟さんよ。”

露の質問に霜は今は居ない自分の父、間桐慎二を思い出した。


 霜と露の父である間桐慎二。
彼は二十七歳にその時の間桐家の当主だった間桐臓硯【ぞうけん】が連れて来た女との間で一人の子を産んだ。
彼は当然愛して居なかった女との間で産んだ子を愛することもなく放置した。
そんなある日、気もしていなかった自分の息子が屋敷の地下室から出るその姿を見て誰かを思い出したのか正義の味方に助けを求め、間桐臓硯の腐っていた霊は消え間桐家は間桐臓硯の手から離れた。
しかし既に間桐家の後継を産むだけに連れ来られた女はその痕跡を見つけず、代わりとは言えないが彼女が生んだ子供を育つことに気を締めた。
そう生きてきておよそ三十年、いつの間にか育った子供が自分の子供を産んで幸せを見つけたように見えたからか、それとも五十年前の奇跡を思い出したのか、彼はどこかで一人の子供連れてきてもう大人になった自分の息子に話した。

「この子は今からうちの家で育つ。魔術師としての間桐家を生かせるのはこの子になるだろう。この子ならきっと聖杯を手に入れてくれる。」

そうやって間桐慎二に連れてこられた間桐霜は魔術師と育てられ聖杯戦争に参加するのを目的として生きていく。
そんなある日霜が自分の父に聖杯を手に入れてなにを願うのかと聞いた時に彼はそう言った。

「あいつが俺を救ってくれたみたいに、俺も周りの人を助けないとな。あの日、そう約束したから。」

その話を聞いた間桐霜は幼い心で思ったのだ。
自分が聖杯を手に入れたら父の願いを叶えてあげようと――

自分の父のことを考えていた霜が露に答える。

“そうですね。世界の、いや、私の周りの人が幸せに過ごすことを願おうと思っています。それでですが手を貸してくれませんか?”

彼の言葉に嘘はない。
彼は今まで聖杯を手に入れその願いを叶うために生きて来たと言ってもいいだろう。
そんな霜の真剣な答えに露が我慢するとも思わないのか笑い始めた。

“ゲラゲラ、あほか、お前。これは笑った。お前、ギャグに才能あるな。ああ、笑い過ぎて腹いてぇ。”

“……。”

笑う露を無言で睨める霜。
それに露が笑いを止めて励むように話を続ける。

“あ、いや、わりぃ。その、なんだ。正義の味方も悪くないだろ。”

しかしそれはそれ、これはこれと言うみたいに協力の提案を断る露。

“残念ながら俺は子供の妄想みたいな遊びにかかわりたくないからな。”

“そうですか。別に構いません。言ってみただけですから。”

“そうか?なら頑張れよ、弟。あ、送りは要らないから。”

露はそれを最後に霜の挨拶も聞かずに家を出る。
部屋に残ったのは未だに夢見る青年が一人。
彼一人残されたリビングに二階から慎一が降りてくる。

“霜兄、あの人の言葉は気にしなくていいよ。自分の周りの人を幸せを願うのがなにが悪いの。兄さんは間違ってないよ。”

“……そう、だな。ありがとう、慎一。おかげで元気になったよ。”

陰で糸を引く人形師が、糸に縛られたことも知らずに夢見る人形を見て微笑んだ。
その光景を見ていた人形師の剣が音もなく嗤っていた。
家を出るといつの間に太陽が消えていた。

‘どんな者かと思ったらなかなかの理想主義者ではないか?おぬしとは正反対だのう。’

外に出る露に話かけてくるライダーに反応したのか独り言のように呟いた。

“幸せは他の誰かが叶えてくれることじゃないってのを知っていないな、あいつ。”


 太陽が消え闇が訪れた夜八時頃ホテルのロビーに入って来る織衣を誰かが呼び止める。

“あの、そこの君。ごめんね。このホテルに泊まってるの?”

織衣が話をかけてくるような人の声に後ろ向くとそこには自分より背が高い外国の美人がいた。
上手な日本語を語ってる外国人は金髪のポニーテール姿だった。

“はい?なんです、、か?”

織衣は何故か彼女を見て戸惑ったが彼女は気付いてなかったのかもう一度聞いて、織衣は気を戻し答えた。

“はい。ここで泊まっていますけどどうしました?”

“あ、よかった。ちょっと聞きたいことがあるけど時間大丈夫?”

その言葉に織衣の頭に色んな状況を思い出したけど落ち着いて話した。

“はい、私でよければ。”

織衣の返事に彼女はフロントをちらっと見て、彼らが聴くとまずい話のよう音を下げる。

“昨日の夜、このホテルで二人倒れたこと知ってる?”

“はい?いいえ、わかりません。なんかありました?”

織衣の返事に彼女は失望した気配もなく独り言を呟く。

“やはりフロントに聞くべきかな。”

そんな彼女を見ていた織衣はもう自分に用がないと思ったのか彼女に話しかける。

“えっと、じゃあ私はここで。”

“あ、そうね。引き留めてごめんね。ありがとう、じゃあね。”

明るく笑いながら手を振る彼女に織衣は軽く目礼をしてエレベーターに乗る。
そして自分が行くべきの二十六階や二十七階でなく十二階のボタンを押す。
十二階に着くとエレベーターから降りて周りを見回しては非常の階段に脚を向かせた。
一方織衣に挨拶した彼女はエレベーターが十二階に止まるのを確認したのを見てからそこを離れた。
ホテルの最上階に居たキャスターが階段を登ってきた織衣を笑いながら迎える。

“ご苦労でしたね、ミス空小路。アーチャーのマスターがエレベーターを見ていることは想定内ってことですか?”

織衣はキャスターの笑いに何故か気持ち悪くなりそうだったけど落ち着かせて当然のごとく話した。

“そりゃあね。私だったらそうしてましたから。まあ、正直言うと私だったら階段まで追っていたかも。それも予想してちょっと警戒したけどそこまではしなかったようね。”

“いや、実はアーチャーが十二階までついていましたよ?”

笑ながらそう言うキャスター。
それとは逆に織衣の表情は歪み口を開けた。

“え、マジで?うそ、確かにサーヴァントの存在のこと忘れてました。え、これ下手したら死んでたってことじゃない?私。”

本気で驚いたような顔をした織衣を見てキャスターがくすくすと笑いだした。
自分のマスターが死んでいたかも知れないのに笑うサーヴァントがどこにあるだろうか。
そんなことを思いながら機嫌が悪くなる織衣は眼中にないのかキャスターは笑いを止めず、

“いやー、嘘ですよ。あはははは、どうですか?面白かったでしょ?今の。”

馬鹿みたいなギャグってことを明かした。
当然こんな面白くもないギャグに笑ってくれるような聖人でもない彼女はイラっとした。
しかしとにかく自分のへまを認めているので怒りを収める。

“……あんた、一度死んだらどう?”

“あれー?ミス空小路は頭が悪いですね!私、既に一度死んでいますよ?あはは――”

彼女が怒りを無理やり収めたのを知らなかったのか、それともただ自分のマスターをからかいたいのかわからないけどとにかく空気を読めないキャスターだった。
織衣はそんなキャスターの脚を蹴り、部屋に入って新都で買ったモニターに電源を入れる。
彼女に蹴られた脚を掴んでごろごろと回っていたキャスターがびっこを引きながら着いて来る。

“暴力は悪いですよ、ミス空小路。あれ?それより私が作ったお金でこんなもの買ったんですか?”

“ええ、そうよ。”

部屋の中には壁の一面に十台くらいのモニターが並んでいる。
今日の昼に配送されたこれはキャスターが自分の錬金術で作った金をお金で変えて買ってきたのだ。

“ふむ、これらはどこに使うつもりですか?”

キャスターの質問に織衣ははじめていい質問を聞かれたかのように笑っては逆に彼に聞いた。

“あなたの記憶、というか、情報をここに繋げますよね?”

当然可能と思っていた織衣の話にキャスターが横に首を振った。

“忘れたようですけど私は錬金術師ですよ?機械工じゃありませんよ。”

そう出した言葉はまたたび織衣の怒りを起こすものだった。

“うっ、電線を繋いでって話じゃなくて!昨日水晶でアーチャーとライダーの戦いを見ていたように投影しろってことだよ!”

怒ったら敬語がなく彼女の言葉を聞きながらキャスターが理解したかのように頷く。

“最初からそう言ってくださいよ。それは可能ですよ。それより。”

“それより、何?”

飛び上がってた怒りをあやうく止めさせながら、キャスターを睨む織衣に、変わるはずのないキャスターが言った。

“怒ってばかりだと早く老けますよ?”

その言葉に織衣は何も言わずにキャスターに近づき彼の脚を蹴り始めた。
蹴られながらも楽しそうに笑っているキャスターは頭の中では次はどうからかうか考えていた。