04
短かった昼は終わり太陽が消え、その光を代わりに照らす月が地上を明かしてる夜。
新都の港にバーサーカーのマスターであるレイヤスフィールが立っている。
“さあ、始めましょう。バーサーカー。”
‘ああ、よろしく頼むぞ。じゃあ、また明日な。マスター。’
歌うようなレイヤスフィールに応じるようにバーサーカーが姿を現れた。
白髪に日焼けした肌、間違いなく人間でしか見えない体。
それがどんどん変わり始める。
全身から肌と同じ色の毛が出始め白髪は背中から出た毛と繋がれ、歯と爪はもっと大きく鋭くなり、その顔はまるで狼のようだった。
“UUUUhhhhhh―――!!!!!”
雪原の大きな狼は新都の空気を震わせながら戦争の始まりを知らせた。
――――――
クラス Berserker【バーサーカー】
マスター Lëjasviel von Einzbern【レイヤスフィール・フォン・アインツベルン】
真名 Rycott Slots【ライコット・スロッツ】
性別 남성
身長・体重 180cm・70kg
属性 混沌・狂
ステータス 筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運D 宝具B
クラススキル 狂化E-
保有スキル 魔術A+
宝具
月光の下の狼人 / Lycanthrope B 対人宝具
太陽が消え月が昇ると狼人に変わる。
狼人になると理性を失って周りの全てを破壊する。
それでも魔力パスが繋がっているマスターだけは認識できる。
――――――
新都の駅近くの繁華街から深山町に帰る途中だった円とランサーは魔力の波動を感じ港に脚を向けた。
港について視野に入ったのは巨大な二足歩行の狼だった。
“おお、なにあれ?すごい!狼じゃん!聖杯戦争には動物も召喚されるの?!”
“ふむ、英雄とは思わないが構わないか。強い相手ならいいがな。隠してろ、円。”
ランサーはバーサーカーに歩き出し円は近くの運送用のコンテナーの間に入り顔だけを出してランサーを見ていた。
“間抜け。あれで隠すつもりなのか。まあ、理性無き獣などすぐ終わるだろうし構わないか。”
ランサーが来ていた豹柄のジャケットが消え黄金の鎧に変わる。
そこから出されたすごい量の電流に反応したのか巨大な野獣が黄金の戦士に走りかける。
それは雷のような閃光だった。
獣の心臓を貫こうとする雷の槍が大きい左手で止まられ、その瞬間狼の体が電流で包まれる。
苦痛があるはずのない狂った獣の右手がそのままランサーに振れられ、ランサーは後ろに一足動くだけどそれを避け獣の右腕に槍を振る。
しかしバーサーカーはその動きを察したように槍を避けた。
だが遅かったようで腕には傷が残り、
“ほお、治癒でもしているのか、獣め。”
その傷はすぐ消えていた。
面白そうに言うランサーの言葉を聞いてるはずのないバーサーカーは大きな腕を振りまわし、彼はそれを簡単に避けながら狼に傷を増やしていく。
――――――
クラス Berserker【バーサーカー】
マスター Lëjasviel von Einzbern【レイヤスフィール・フォン・アインツベルン】
真名 Lycanthrope【ライカンスロープ】
性別 男性
身長・体重 412cm・657kg
属性 混沌・狂
ステータス 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B
クラススキル
狂化 EX
―宝具を除いた全パラメータを1ランク上げ、マスターを除いた誰も区別できなくなる。完全な制御が不可能になりただその時に一番危険だと思われる相手を狙うようになる。令呪を使い強制霊体化が可能となる。
保有スキル
超再生 E
―短時間で身体を回復する能力。ランクが低いほど再生するのに大きな魔力量を必要とする。
宝具
傷つかれた野獣の咆哮 / Κλάμα πολεμοχαρής B 対人宝具
傷つくたびに体内に魔力が蓄積される。
――――――
港から何十メートルも離れた橋の上で昨日と同じくリノとアーチャーが港での戦いを見つめていた。
“なに、あれ。あれじゃキリがないな。”
“そうですね。マスターを狙いましょうか?”
何回も回復するバーサーカーを見て普通の攻撃では倒せないと思ったのかアーチャーがそのマスターを狙おうかと聞く。
“いや、まだは見てみよ。きっと他のマスターたちも見てるはずだから。攻撃したらこっちの居場所をバレると思うし。”
彼女は直接割り込む必要を感じなかったのか観察することに決める。
そしてアーチャーがそれに頷いた。
“まあ、あっちはバレてもいいと思うようだけどね。”
呆れたかのように笑いながら言う彼女の視線は戦場の空を向いていた。
戦場の上空に一つの二輪車が浮いている。
二匹の馬が引く二輪車は空に道でもあるようにその場で止まっていた。
その車を乗っている人が二人。
“Fuck!また強そうなやつらが出てきやがった。どっちも勝てそうにないな。困ったもんだ。”
“ふむ、わしの宝具を使ってもあっちの犬は倒れ無さそうだのう。あれは攻撃を受けてその魔力で体を治してるみたいだしな。”
ライダーがバーサーカーを見て困ったみたいに言った。
それに露はリノと同じく介入しないことにする。
“倒せる可能性があるのはあっちの光ってる奴ってことか。あいつが勝つことを待っていようぜ。”
一方間桐家のリビングで彼らの戦いを見ている人がいた。
間桐霜は使役魔を使って港の戦いを覗いている。
“セイバー、二人のどっちかが倒れたら入り込め。”
‘オッケー、わかった。待つとしよう。’
霜の命令にセイバーが答え霊体化のまま港まで向かう。
そして彼らとはまた違う探索者が一人。
新都のある建物の屋上に白い仮面が浮いている。
その体は闇に溶け込み姿を消していて視線は港にあるコンテナーの間に止まっていた。
一般人なら見えるはずのない距離。
一般人なら自然と視線が向かないはずの空間。
そんな場所を何の制約もなく見つめながら手に持っている自分の身長の四分の三の長さに至るモシン・ナガンM1891/30のフィンランド式銃器であるM28の銃口を見ているところに向かう。
それは宝具と言うにはあまりにも広く知らされ沢山造られた普遍化された武器だった。
彼は自分だけのシンボルを持つ一般的な英霊とは何かが違うサーヴァントだった。
‘ランサーのマスターを把捉しました。マスター、命令を。’
――――――
クラス Assassin【アサシン】
マスター ???
真名 ???
性別 男性
身長・体重 161cm・55kg
属性 中立・悪
ステータス 筋力D 耐久E 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具B
クラススキル
気配遮断 A+
―完全に気配を隠したら見つかることは不可能に近い。ただし、自分が攻撃態勢に移すと気配遮断のランクは大きく落ちる。
保有スキル
千里眼 C
―いい視力。遠く離れた標的の把捉、動体視力の向上。
魔眼 C
―生まれながら持つ魔力が宿った眼。その距離に関係なく目に入ったものであれば相手の魔力の流れを把握することができる。
――――――
港はもう本来の姿を見つけることができなかった。
貨物が積まれたコンテナーには数多くの爪痕が残っていて、地は血塗れになっている。
“被害を受けるたびに魔力を吸収するか。しかも苦痛もなさそうだ。所詮はバーサーカー、理性と共に苦痛も飛ばしたか。”
アーチャーのマスターが判断したようにランサーももうこれ以上やってもキリがないと判断したのか、いや、彼の性格上切られて刺されても何の苦痛も感じない獣に飽きたんだろう。
彼は身長の三倍くらいの距離を一気に開いた。
“いいぞ、犬糞野郎。そこまで魔力が欲しいなら受けてみるがよい。”
今まで彼の体とその周りに散らかしていた電流が全て槍に集まり始め、大きな轟音を出した。
集まった電流はその小さい槍に全部入れず、行先を忘れたように周りの地上に落ちた。
その一つ一つが天から落ちる雷、そのものだった。
味方を治療し敵を罰するそれは間違いなく神鳴。
それに危険を感じたのか、自分のマスターから一定距離を離れていなかったバーサーカーがランサーを向かってその体を飛ばし、
“神の怒りを受けてみろ!世界の果ての八つの雷【ケラウノス】!!!”
眩しい雷の光が怪獣と共に世界を包み込んだ。
――――――
クラス Lancer【ランサー】
マスター 遠坂円
真名 Saiki Relámpago fénix【サイキ・レランパゴ・フェニックス】
性別 男性
身長・体重 183cm・78kg
属性 混沌・善
ステータス 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運E 宝具A+
クラススキル 対魔力C
保有スキル 戦闘続行A / 仕切り直しC / 加虐体質A+
宝具
雷神の槍 / Κεραυνός B 対人宝具
雷神ゼウスの槍と呼ばれる宝具。
大気のマナを吸収し被害を極小化し幸運と宝具を除いたパラメータを1ランク、対魔力を2ランク上げる。
追加で電気の形で魔力放出を可能にさせる。
世界の果ての八つの雷【ケラウノス】 / Κεραυνός A+ 対軍宝具
雷神の槍の真名解放で槍を直接対処に投げる方法と槍に集めた電流だけ撃つ二つの方法が存在する。
槍を投げるほうがさらに大きいダメージを与える。
――――――
神槍から輝く光がその主人から離れた瞬間、
‘今だ。射殺しろ、アサシン。’
アサシンの手に持っていた銃口が火を放った。
戦場を包めていた光が消えるとその場には右腕と胸そして腹の半分がまるごと消えた化け物が立っていた。
そしてその前に立っていたランサーが豪快に笑った。
“ふはははは!獣のごときが我の前に立つからこうなるのだ。さあ、これで宴会は終わりだ。見ていた奴らも十分楽しめただろ。帰るぞ、円。”
霊核が半分くらい壊れたバーサーカーを見て倒したと思い後ろを向くランサーの後ろから大気を切り裂くような爆音が出た。
“UUUUUUUhhhhhhhhhh―――!!!”
“なにっ?!”
その膨大な魔力の音波に魔力の波動を感じ後ろ向いたランサーを襲った。
それによってランサーの左腕と胸の一部が吹き飛ばされる。
“犬糞野郎が!あの程度の傷も治すと言うのか?!”
ランサーが見たバーサーカーの体は再び元通りになっていた。
しかし体が全部治る前にも関わらす自分のマスターに飛んできて――
その瞬間バーサーカーの体を取り除くように矢の雨が降ってきた。
“アーチャーか?ふん!死に損ねた犬の処理は任せるとしよ。まずは傷の修復が先か。”
ランサーは矢が飛んでくる方向を見てまもなく破壊と再生に動かないバーサーカーを目の前にして霊体化し、そのマスターである円は戦場から離れた。
――――――
クラス Berserker【バーサーカー】
マスター Lëjasviel von Einzbern【レイヤスフィール・フォン・アインツベルン】
真名 Lycanthrope【ライカンスロープ】
性別 男性
身長・体重 412cm・657kg
属性 混沌・狂
ステータス 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B
クラススキル 狂化EX
保有スキル 超再生E
宝具
傷つかれた野獣の咆哮 / Κλάμα πολεμοχαρής B 対人宝具
傷つくたびに体内に魔力が蓄積される。
月夜に高鳴る狼の咆哮 / βρυχηθμός του λύκου B 対軍宝具
蓄積された魔力を一気に放出する。
――――――
腕が無くなり霊体化したランサーが霊体化したことを見ていたセイバーに霜の命令が下る。
‘セイバー、ランサーのマスターを追え。’
‘ああ、既に追っている。’
セイバーが霜の指示を受けてまもなくランサーを見つけた。
どうやらセイバーが来ることを覚って自分のマスターである円だけ先に逃がせたようだ。
セイバーがランサーの前に実体化する。
“クハハハ、ランサー。さっき腕が取られたところで悪いが、私の手で死んでくれないか?”
ランサーは先の傷がなく無欠な状態だった。
しかしそれは外側だけでその中の魔力は前回の戦いの時と比べると三分の一は足りなかった。
“我が腕一本取られただけで身の程を知らずにかかって来るか。我をかなり甘く見たな、セイバー。”
“強がりは止せ、ランサー。”
堂々としたランサーの態度をセイバーは嗤うように言い、ランサーはそういうセイバーを見下ろすように言った。
“そうか、強がりだと思うか?よく見ろ、セイバー。今になって同等となったのだ。お前は一眼、我は腕一本と宝具分の魔力の節減。まあ、バランスを合わせるには我はマスターなしで戦うべきであるがな。”
そう言う今でも持っている槍は空気中のマナを吸収し魔力に変えている。
時間を稼ぐほどランサーが調子を戻して行くのを知ったかどうか、ランサーの言葉にセイバーが馬鹿馬鹿しいと笑う。
そしてもうこれ以上の話は要らないと言うように剣をランサーに向けた。
それで充分だったのか、ランサーも槍を握り直し、彼らの戦いが始まる。
空でバーサーカーとランサーの戦いを見ていた露は戦場から離れるランサーのマスターを追う途中にランサーとセイバーが戦い始めるところを目撃した。
“あれはなんだ。剣持ち、セイバーか。Fuck、さすがセイバー。パラメータが半端ないな。”
露がセイバーのパラメータを見て悪口を出した。
“どうするんだ、マスター。入り込むか?”
“いや、まだだ。二人のどっちかが倒れたら攻撃しよう。”
露の言葉にライダーが頷いた。
腕に魔力が空いてるランサーはセイバーにちょっとずつ押されたが、時間が経つほど槍によって回復してるのかどんどん強くなっていった。
‘魔力が足りないのは確かだ。しかしあの槍が魔力を作り出しているのか。厄介だな。時間を稼ぐと奴のほうが分があるな。’
セイバーはそう思ってマスターである霜に宝具の解放を知らせた。
しかしセイバーに戻ってきた返事は理解できないものだった。
‘いや、禁じる。セイバー、もう戻れ。’
‘なに?馬鹿なことを。今じゃないと奴は調子を戻すぞ。’
霜の指示にセイバーが反対したが、
‘戻ってこい、セイバー。’
霜の意見は変わらなかった。
‘は!狂ったな、霜!断る。止めたいなら令呪でも使ってみろ。’
セイバーがランサーの槍を押し飛ばして距離を開ける。
“時間は稼げないぞ、ランサー。ここで落ちろ。”
“宝具を使うつもりか?戯けめ。”
ランサーの言葉が終わる前にセイバーが持った剣が周りの空気を揺らせる。
“は!間抜け!我を甘く見過ぎたな、サイバー!”
ランサーの槍にバーサーカーとの戦いの時と同じく電流が集まり始め轟音を出した。
それで二人の戦士は準備が終わったかのように、武器に宿ったものを解放する。
“幻想大剣・天魔失墜【バルムンク】!!!”
“世界の果ての八つの雷【ケラウノス】!!!”
その瞬間、剣から発する黄昏の光と、超高圧の電流になった黄金の槍が突き当たった。
ちょっと離れて二人の戦いを見ていた露はセイバーが使った宝具の名を聴いて機嫌が悪くなった。
“あれはドラゴンスレイヤーか?Fuck!馬鹿みたいに強いくせに宝具さえもあんなものを使うとは。”
Dragon Slayer Balmung。
北欧州の英雄、ジークフリート【Siegfried】が持った聖剣でドラゴンをなんと十七匹も切り殺した剣だ。
いくら剣が強いとは言え、持ち主が弱いと意味を持たない。
故に神代のドラゴンを十七匹も殺した剣の主人が強くないはずがないのだ。
“あれはマスターの方を殺したほうが早いのう。それともランサーの方を襲うか?今なら魔力が足りないと思うが。”
“いや、さっき腕を取られてから使った宝具があれくらいってことは魔力の消耗がすくないってことだろ。あいつらは級が違う、下手に動かないほうがいい。”
彼の判断は正解だった。
ランサーの宝具である槍は周りのマナを吸収し魔力に変換する能力があるため、最大値の魔力で開放するとしてもその回数は一日に七回を超える。
しかしセイバーのバルムンクもまた魔力があれば連続で撃つのが可能な宝具だ。
セイバーのマスターが止めなかったらもう一度彼らの宝具がぶつかっただろう。
もしここで露が判断を間違い二人の中でどっちを追ったとしても彼らはその場で敗北しただろう。
彼らは追撃を諦め、拠点に帰ってきた。
建物の屋上でランサーのマスターを狙っていたアサシンが急いで建物から離れていく。
‘失敗しました、マスター。現在移動中です。’
‘射撃を避けたか?’
‘いいえ、アーチャーの矢が弾丸を止めるところを目撃しました。’
アサシンはさっきの状況を思い出した。
ランサーが宝具を解放したのとほぼ同時に放たれた弾丸は彼のマスターである者の頭に刺される予定だった。
しかしそれは途中で飛んで来た矢によって止められた。
人差し指の第一関節までくらいの大きさの弾丸を当てるくらいの実力。
そんな妙技が可能なのはきっと弓の名手であるアーチャーだろう。
その考えは当たっていた。
アサシンが矢が飛んで来たところを見たらそこには自分に弓を向けて弦を引いているアーチャーが居た。
それを気付いた瞬間矢が放てられ、それを自分の弾丸で撃ち落とし、アーチャーの視野から見えないところに身を隠したのだ。
‘アーチャーから身を隠しました。アーチャーを撃ちましょうか?’
アサシンの質問にそういう必要ないと返事が返ってくるとアサシンは理解を知らせ隣の建物の一つに潜入する。
入った建物の窓越しでバーサーカーとそのマスターが目に入った。
彼はそこで再び任務の遂行を続けた。
ランサーのマスターである円を狙った弾丸を撃ち落としたアーチャー。
その隣に居たリノはランサーの宝具をもらっても生き残り、再生を始めたバーサーカーを見て驚いていた。
“あんな膨大な魔力で生き残るとはね。私もランサーが勝ったと思っていたから本人は尚更そうだったんだろうね。その油断でやられるとは。アーチャー、バーサーカーのマスターを狙って。バーサーカーを倒すのは難しそう。”
“ランサーは置いといていいでしょうか?”
アーチャーの言葉にリノは既に考えていたのかすぐ返事した。
“ランサーは傷ついたから追ってる奴らがいるはずよ。あっちにあるライダーとか。私たちはバーサーカーを倒そう。ランサーの宝具で霊核も壊れたみたいだしいい機会よ。”
リノの言葉を理解したのかアーチャーがすぐバーサーカーのマスターを狙って矢を放った。
しかしそれを弾丸が撃ち落とした。
それにアーチャーが弾丸が飛んで来たところを見つけたが建物に隠していて視野に入れなかった。
“アサシン、、バーサーカーと手を組んだのかな?まあ、いい。数で押し付けて、アーチャー!”
彼はリノの言葉に頷いて昨日のライダーとの戦いとは比べないくらいたくさんの矢を放たれる。
しかしバーサーカーが動くくらい回復したのか自分のマスターをかばって全ての矢を受け止めた。
体が取られながらも体内に魔力が蓄積され、蓄積された魔力で再生していく。
それこそキリがなかった。
“ダメだね。止めて、アーチャー。魔力をあげるだけね。”
“宝具を使いましょうか?”
アーチャーの言葉にリノはちょっと悩んだけどまだ無理してまでバーサーカーを倒さなくてもいいと判断した。
“まだ二日目だし、脱落したサーヴァントもない今宝具を見せるには不確定要素が多いから。”
リノの言葉にアーチャーは頷いた。
港から離れた安全なところで戦いの全てを見ていた人がいた。
“馬鹿ね、みんな。あんな化け物置いとくと自滅するだろうに。”
織衣は部屋のモニターを見ていた。
画面に映っているのは港。
戦いの最初から見ていて、今はアーチャーの矢にやられているバーサーカーを見ていた。
“どうしてそう思いますか?ミス空小路。”
織衣の独り言にキャスターが質問を投げた。
“どうしてって?そりゃあ、当たり前でしょう?あんな化け物を実体化するのにどれくらいの魔力を食っているだろうか。しかも狂化状態ですしね。なのにあれに攻撃をしたら逆に魔力を詰めて行くからマスターの負担を減らして手伝ってくれるだけでしょう。”
キャスターの疑問に彼女が、あなたは馬鹿ですかー、みたいな表情で説明してくれる。
それにキャスターがにやりと笑った。
“ちなみにですけど、ミス空小路。敵のマスターが誰か見ましたか?”
その笑いは絶対からかいに来てると昨日から今日の二日間で気付いた織衣が言った。
“今度はなんですか、もう。私で遊ぶのいい加減にしてくれまん?バーサーカーのマスターはアインツベルンですがなにか?”
“いやいや、遊んでないですよ?ただ聞いただけじゃないですか。ちなみにアインツベルンのマスターがホムンクルスなのは知っていますね?”
キャスターの話に織衣がため息をついた。
“当然知ってます。それでまさか人間じゃないからバーサーカーの魔力量を耐えれると言いたいんですか?いくらホムンクルスだとしても限られた魔力量はあるしそれだけではバーサーカーの魔力量に足りないのでは?”
“確かにそうですね。彼女が普通のホムンクルスならそうでしょう。ただこれも知ってますか?彼女が聖杯の器ってことを。”
キャスターの言葉に織衣が、えっ、と驚いた声を出した。
“待って、あれが聖杯ってことですか?”
“やはり知らなかったんですか。正確に言うとアインツベルンが作った小聖杯です。倒れたサーヴァントの霊気は小聖杯に入れ魔力に変わります。その魔力がサーヴァント七名分集まったらその時本当の小聖杯として起動することになるでしょう。柳洞寺がある山の地下にある大聖杯と小聖杯である彼女を合わせ完全な聖杯になり、根源に至るものになります。まあ、そういうことなのでバーサーカーのマスターの魔力が切れることはまずないでしょう。”
キャスターの話を理解したように織衣が首を縦に振った。
“そんなからくりになっていたのか。そこまでは知らなかった。それにしても小聖杯をマスターとして使うとはいったいなんのつもりなの、アインツベルンは。”
織衣は愚痴を言ってからモニターの中に映っていたセイバーの方を指した。
“バーサーカーのことはわかった。それにしてもそっちのセイバーが要注意ね。あの魔剣バルムンクの持ち主だとジークフリートとの可能性が高いし。もしそうだったらドラゴンの血を被られて背中の一ヵ所以外は攻撃が通らないだろうし。”
織衣は単純に再生だけしているバーサーカーよりセイバーのほうが強敵だと判断したみたいだ。
セイバーの真名と思われそうな名前を言う。
それにキャスターが続けた。
“あとはハゲンですかね?ジークフリートを殺したハゲンも彼が死んでから彼の剣を使いましたから。”
“そうですね。ハゲンが使うには奪ったって点が引っ掛かりますけど。”
織衣はキャスターの言葉に肯定してパソコンに情報を書く途中に空いているファイルを見つける。
ファイル名はアサシンとなっていてさっき確認したパラメータ以外はなにも書いてるのがなかった。
“これでまだマスターを知らないのはアサシンだけですけど。うーん、武器を見ると現代の英雄と思いますが。”
“おお、現代ですか?私と知り合いかも知りませんね。”
“いやー、まさか。それより賢者の石はどうですか?キャスター。”
現代って言葉に反応したのか喜んでいるキャスターを無視して状況を聞いてくる織衣の言葉にキャスターが皮肉っぽい調子で言った。
“まだですよ、ミス空小路。せっかち過ぎませんか?まだ二日目ですよ?”
“まあ、それもそうですね。じゃあ、それは造り終わったら教えてください。”
“はいはい、わかりました。”
話を終わらせモニターを見つめた織衣の目に傷を全部直したバーサーカーを霊体化させて離れるレイヤスフィールが入った。
そうやってまた一度の戦いが終わった後、間桐家ではセイバーと霜が顔を向き合わせていた。
セイバーを見る霜の表情は今までの中で一番冷たいものだった。
“なぜ宝具を解放した、セイバー。”
“そこでは私でなく他のサーヴァントであっても解放したはずだ。”
セイバーが堂々と自分の考えを言ったが、霜はそれが間違いだったと思うようだ。
“結局勝てずに傷だけ負ってくるとはな。やはりまだ使うべきじゃなかった。”
“ふん!ダインスレフも使ったら必ず勝っていた。同意しなかったのはお前の方じゃないか、霜。”
“ダインスレフだと?自分のものでもないから上手く使わないだろう?そんなことを言い訳と言ってるのか?もういい。過ぎたことは仕方ないだろう。次からは俺が直接出よう。勝手な真似はやめろ。”
霜の言葉にセイバーが、わかった、と言い霊体化して姿を消した。
セイバーが消えそこに残ったのは霜の心を押し付けるような暗い闇だけだった。
――――――
クラス Saber【セイバー】
マスター 間桐慎一
真名 ???
性別 男性
身長・体重 190cm・89kg
属性 秩序・悪
ステータス 筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A++
クラススキル 騎乗A / 対魔力B
保有スキル 直感C / 魔力放出B
宝具
幻想大剣・天魔失墜【バルムンク】 / Balmung A+ 対軍宝具
原典である魔剣「グラム」としての属性も兼ねていて手に持った者により聖剣、魔剣の属性が変化し竜類の血を繋いだ者に追加の被害を与える。
剣の柄にある青い宝玉には神代の魔力が保管されておりこれを解放したら黄昏色の剣気を放出する。
――――――
戦闘が終わりなんとなく無事に屋敷に帰ってきた円がランサーを見て心配そうに聞いた。
“大丈夫?ランサー。”
“は!これくらいの傷でどうなるものだったら英雄とも呼ばれていない。お前は心配しなくていい。”
ランサーの言葉を信じた円はすぐ笑った。
“さすがランサー。はは、心配して損した。まあ、腕が取られたすぐでもセイバーに勝つくらいだからな!”
“ああ、気楽にしていろ、円。すぐ聖杯を手に入れさせてやろ。”
そう言うランサーの言葉に円は安心した。
だが槍によってダメージを減らしたと言うのに腕は取られ宝具の解放を連続で使ったランサーの魔力は結構無くなった状態。
自分の槍によって空気中の魔力を集めるとは言え、マスターである円からの魔力補充が少なくて不利な状況だった。
しかし同じランクのセイバーの宝具を相殺しダメージを与えた理由は魔力の量ではなく単純にセイバーのバルムンクが半円形でありランサーのケラウノスが直線形だったからだ。
距離がちょっとだけでも近かったら自分のほうもダメージを受けただろうと言うことを把握しているランサーは今の状態でセイバーと再び戦うことになったら勝つ可能性は低いと判断した。
こんな状況を知らない円はただ霜のサーヴァントに傷つけたのを喜んでいるだけだった。