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自作の小説の公開ブログ

自作の小説の公開してみます。
誤字多いと思います。


 05

 聖杯戦争が始まって三日目の朝。
織衣は深山町の外郭の森に向かっていた。
白ニットの上に青いジャケットをかけ黒いズボンを着ている彼女の腰には普段と違い一本の刀が担がれている。
名もなきその剣が執行者の織衣の手に入ってから切り殺した人、いや、魔術師だった者が何人かは数えないくらいだった。


 そう、彼女は執行者だ。
魔術協会は珍しい魔術や魔法に近いものを使うのが可能な魔術師を保護、保存するため封印指定と言う魔術師保護政策を持っている。
聴くにはいいが実際は意識を持った脳だけホルマリンに入れて保管するなど、とにかく人間としては生き残れないことになる。
そんな封印指定になった魔術師たちは協会に捕まる前に隠し、その場合協会としても危険性がないことを認めて諦めたりする。
しかしその中では神秘の隠匿もせず、一般人を相手にする危険性を無視しひたすら魔術の研究に没頭する輩がいる。
彼らの行為が外部に流出されたり研究が失敗したりしたら協会はすぐ彼らを捕まえることを最優先とする。
その時に送られる者たちが執行者と呼ばれている。
執行者は言わば、魔術師を捕まえるために戦う魔術師ってことだ。
封印指定くらいの魔術師は一流の魔術師が多いため、執行者も当然それを上回る能力者たちで成り立っている。
織衣はその執行者たちの中の一人なのだ。

“太陽が昇るくらいに出たのにもう9時ですか。遠いですね。”

新都のホテルから森の入り口まで、普通の人なら休まず歩いて三時間もかかる距離にあるこんもりとした森。
そこをたった一時間で歩いてきた織衣は森にかけられた結界を解除するのにまた一時間の時間をかけて九時ごろになって森に入ったのだ。

“二重結界とは。なかなか気使ってますね。あれ?”

歩きながらもう一個の結界を見つけた織衣がイラつくところでその結界が道を開いた。

“へえ、入って来いってことですか?まあ、時間の無駄にならなくてありがたいですね。”

彼女は森々と生い茂った森林の中に進んだ。
その中の大気の魔力濃度はあまりにも濃かった。


 太陽が明るく晴れた朝、と言うにはちょっと遅い午前十一時ごろ、遠坂屋敷のベルがなる。
遠坂の家に住んでいる人は本来五年前から遠坂円一人だけだったが今家に感じられる人の気配は二人のものだった。
リビングのテーブルには紅茶が入ったコップが二つと色んなお菓子が置いてある。

“あれ?誰だろう。ランサー、ちょっと待ってね。すぐ来るから今のやつは全部食べるなよ。ロンドンから難しく手に入れた奴だから、絶対だぞ?”

赤を好きなのか体のところは白で腕は赤い服に赤いズボンを着ている円がお菓子を持ちながら玄関に向かう。

“なんでも早いもの勝って言うだろ?遅いと無くなるぞ、円。早く戻るがよい。”

戦いを好きなランサーはおやつを食べる時もその緊張をほぐさないようだ。
しかし相手が居なくては面白くないもの。
口ではそう言ったけどちゃんと円を待つランサーだった。

“どちら様でしょうか?”

扉を開いた円の前に一人の外国人の女性が立っていた。
彼女は金髪のポニーテールにキャメルのジャケットにブルージーンズを履いて首には白いマフラーを巻いている。
そしてスニーカーを履いているにもかかわらず円と同じくらいの身長だった。

“誰、、?”

“Hi。君が遠坂円?”

外国人が英語で質問すると円が一瞬だけぼっとしたけどすぐ頭の回路を変え英語で返事した。

“あ、、はい。そうですけど。誰ですか?”

ロンドンで住んでいたのはだてじゃないのか結構流れるように英語で返事をした円。

“間違いなく着いたね。ところで日本ではお客さんが来るとお茶を出すって聴いたけど入れさせてくれないの?”

なぜか返った返事は日本語だった。
円は戸惑いながら女性を家に上げリビングまで案内する。
そこには結構気に入ったのか暖かい室内でも豹柄のジャケットを着ている赤髪の男がソファーに座っていた。
だが問題なのはその変な豹柄の服じゃなく、左手に持っている黄金の槍だった。

“あ、忘れてた!ランサー、槍隠して!槍!”

お客を入れてから気付いたのか円が走ってくる。
しかしその時はもう遅れて、それを見た女性が笑った。

“もう遅いでしょ、バカ。隠すつもりある?”

戸惑っている円とは違いランサーはゆっくりと紅茶を飲みながら入って来た女性を見つめる。
そして円を見てはため息をついた。

“度胸があるのかバカなのかわからないな、円。敵のマスターを入れるとは。”

“きっとバカじゃない?”

女は着ていたジャケットを脱いでソファーにかけて座りながらまるで今まで話していた人のように言った。
それにランサーが呆れたように彼女を見てはすぐ紅茶に目を向いた。

“まあ、確かにそうだろうけど。自分のサーヴァントなしで来たやつが言う台詞ではないな。”

“あら、アーチャーは外に居るのバレた?”

円は敵のサーヴァントを前にして緊張感なしでソファーに座る彼女を見て驚きながら聞いた。

“え、、それで?ここに来た理由はなんですか?えっと―”

“リノよ、リノ・エーデルフェルト。私の名前。”

“えっ、エーデルフェルト?!遠坂を天敵と思うと言うフィンランドの?!”

円がエーデルフェルトの名を聴いて驚いたのは当然だった。
北欧州フィンランドの魔術師の名家の一つのフィンランド【Edelfelt】。
彼らは第三次聖杯戦争に二人の姉妹を参加させた。
なのに妹のほうが遠坂の後継に惚れ姉を裏切って結構聖杯戦争に敗北。
その後エーデルフェルトは遠坂を天敵と思うようになったのだ。
しかしリノが円の言葉を聴いて笑った。

“やはり馬鹿ねー。いつの話をしているの?遠坂とエーデルフェルトの後継者たちが結婚して子供を産んだのがもう26年も前のことだよ?”

二十七年前、リノ・エーデルフェルトの親である衛宮【えみや】とエーデルフェルトが結婚した。
衛宮と言う苗字をもった男の方は遠坂の後継を遠坂桜【さくら】の子供に預けた後に産んだ遠坂凛【りん】と衛宮士郎【しろう】の息子だ。
もちろんその二人の結婚を反対する者は多かった。
特に彼らの母親である遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの反対が酷くて家門の間で戦いになるくらいだったが、そこを正義の味方である衛宮士郎がなんとか説得し平和を迎えた。
そうやって表面的では衛宮とエーデルフェルトが結ばれ二つの家門は平和を採決したのだ。
そうして生まれた子供が彼女、リノ・エーデルフェルトだ。
彼女は本来時計塔で遊学している身だ。
今回は爺さんである衛宮士郎から聖杯戦争に関して聞き休学届を出して冬木市に飛んで来た。
彼女も考えたものをすぐ実践するタイプでどう見たら円と同じ性格なのだ。
違う点があるとしたら遠坂円はなんの計画もなく思い出したらすぐ行動するけど、彼女は計画を立ててそれがある程度具体的になると行動するところにある。

“うん?ちょっと待って。じゃあなんだ?”

“なにって。君と私が又従姉弟ってことだよ。”

淡々と事実を伝えるリノに円が驚きながら叫ぶ。

“うそ!じゃああの魔女の孫ってこと?!”

円が魔女という人は遠坂凛のことだろう。

“魔女って酷いね。伝えていい?”

円の言葉にリノがすぐにでも電話するとでも言うようにスマホを出した。
それを見て円が震えるのを見てリノが笑いながらお菓子を食べてるランサーの方を向いた。

“あー、面白い。それで話が逸らしたけど、戻して単刀直入に聞くけどバーサーカーを倒すのに協力しない?ランサー。”

リノの言葉にランサーがお菓子を掴もうとした手を下してリノを見つめる。
彼の赤い眼は見るだけで相手のことを焼き尽くしそうだ。
その目を逸らさず見ながらも笑っているリノを向いて口を開けた。

“ふん、命を救ってくれたから協力しろってことか?”

“いや、待って!ラン―”

ランサーがすぐにでも攻撃しそうに槍に電流を流せると円がランサーを止めようとした。
しかし円の話が終わる前にリノが口を開けた。

“ええ、まあ言ってみたらそんなもんかな。”

それを聞きランサーは怖がらないのが面白くなさそうに視線を紅茶に戻した。
槍に流していた電流もいつの間にか無くなっている。
ランサーが紅茶を飲んでコップを下した。

“断るぞ、アーチャーのマスター。”

“ええっ!なんで断るの、ランサー。僕たちとしては―”

ランサーがまたたび引っ込んだ円の言葉の途中に話を続ける。

“あの犬野郎は我が倒すからお前らの協力なと必要ない。だがまあ、勝手に我を手伝うんだったら止めやしない。じゃあ我はすこし休もうとしよ。”

そう言いランサーは霊体化して消えた。
それは多分助けを必要とするランサーの最後のプライドだった。

“え、なに?ここもツンデレ?”

ランサーの反応にリノが驚きながら言うと急に円が大声を出した。

“うそ!僕のお菓子が!ランサーのやつ、僕の分まで食べやがって!一個しかないのかよ。”

リノがテーブルを見るとそこにはお菓子が一つしか残っていなかった。
それを見て何を考えたのかニヤニヤ笑い、手を伸ばして最後のお菓子を持っては自分の口に入れるリノ。
そのあと遠坂家で聴こえた大きな声は誰のものか言うまでもないだろう。


 太陽がその位置で午後十二時を知らせる時刻。
織衣が森を離れるとそこには一つの城があった。
その城はおとぎ話で出そうな大きな古城だった。
周りの風景とは異質であるそれはドイツで地を含めて丸ごと取り外して持ってきたものだ。

“うわ、エルメロイ爺には聴いていたけど冗談じゃないわね、これ。”

織衣はきょろきょろと城の入り口を探して入った。
城に入って真っ先に入ったのは城の大きさに合う大きいホールと高い天井だった。
巨大なシャンデリアが吊られた天井の下に一人の少女が立っていた。

“どうしましたか?協力の魔術師がこんなところまで。”

白いドレスのような服を着た少女は腰まで流れる白髪にその肌も雪のように白かったけどその眼だけは血のように真っ赤だった。
その可憐な姿を見たら誰もが綺麗と思うだろ。
そしてそれは非情な執行者である織衣さえも逃れなかった。

‘モニター越しで見た時よりやばいんですけど、魅了の魔眼か何かですか?!’

ちなみにレイヤスフィールの眼は普通の眼だ。
魅了とかは使えないのだ。
そうやって少しの間黙っていた織衣は、はっ、と気を戻した。

“あ、あなたがバーサーカーのマスター。レイヤスフィール・フォン・アインツベルン、ですね?”

“既に調べてから来たのではないですか?空小路織衣。”

“へえー、私の名前は知ってるんですね。時計塔の奴らは情報管理をどうしているのか。”

織衣が軽く時計塔の悪口を言うと何故かレイヤスフィールのほうが彼らをかばう。

“彼らを責める必要はないです。こちらの情報探索者が優れただけですので。”

“あ、そうですか?”

レイヤスフィールの話に織衣がどうでもいいように適当に答える。
しかし人ではないレイヤスフィールにはわかりにくかったようだ。

“はい、彼ならきっと時計塔の地下、鏡の部屋に閉じ込められた「屈折」さえも取り出してくるでしょ。”

無表情で自慢するような内容を話す少女だった。
織衣は、さすがにそれは過言ですね、と思いながらも無駄な話が続くのも意味がないかと思ったのか本題に入る。

“ぶっちゃけ言いますけど、協力しませんか?レイヤ。”

“レイヤ?”

レイヤスフィールには協力の方よりそっちのほうが気になったようだ。
織衣の言葉を繰り返すレイヤスフィールを見て織衣が話を続ける。

“あ、長かったので略しましたがいやでしたか?では―”

“いいえ、そう呼ばれたのは初めてでしたので私とは思っていませんでした。レイヤ、、いいですね。”

無表情に答えて何回もレイヤと言う名を呟いた。

‘まじですか、可愛すぎますけど。’

そう思った織衣だが表情には出さずにもう一度聞いた。

“それでどうでしょうか?”

“協力ですか?”

少女が何を考えているのかわからない無表情で聞いてくると織衣は微笑んだ。

“はい。こちらで助けますので一緒にセイバーを倒しませんか?”


 太陽が熱い午後三時ごろ、新都のどこかの部屋で二人の男性がテーブルを間に向き合って椅子に座っている。

“どういうことで来ましたか?”

主であるような男が来訪者に聞いた。
彼が出す雰囲気としては招待されてなかった客のようだ。
客は主人よりちょっと低いがそれでも結構大きな身長で黒いスーツを着ている。

“おほほほ、隠す必要はないですよ、アサシンのマスター。私は全てを知っていますから。”

“ほお、そうか。なら改めて聞こう。なにしに来た、キャスター。”

“それにしても審判役のあなたがマスターとは面白いですね。あ、用事でしたか?そうですね、どこから話せばいいんでしょうか……。”

二十代くらいに見えるアサシンのマスターは神父服を着ていた。
彼の髪色は自分の信仰心のよう清廉な白色で坊主頭とは言えないが結構短い髪形をしている。

“話を聴いてくれるのが仕事ではあるが、できれば短くしれくれたら感謝しよ。他のマスターにバレるにはまだ早いからな。”

キャスターが話を長引きそうな前振りをすると神父が事前に遮断した。
それにキャスターが頷いて、口を開けた。

“お、そうでした。一応隠していますよね。なら簡単に言いましょ。神父さんはバーサーカーが倒れたら困りますよね?”

キャスターがバーサーカーのマスターと神父の協力関係に関して話した。
それを聞いた神父は驚いたような表情を出して、すぐに彼特有の圧倒的な雰囲気が一層濃くなった。

“どこまで知っている、キャスター。いざとなったらここで死んでもらうぞ。”

周りの空気を潰す圧力。
相手を見るだけで圧倒する目線。
普通の人だったらその雰囲気に圧倒されなにも言えないだろうけど腐ってもサーヴァントなのか、なんの抵抗もなさそうにキャスターが口を開ける。

“それは困りますね。私がここで死ぬと私のマスターがバーサーカーのマスターを壊してあなたの勝利への道も塞がりますが大丈夫でしょうか?私がここで生きて帰ると神父さんも勝つ可能性が上がりますよ?”

“まるで未来でも見るように言うな。いいだろ、話が逸らしたが要件を聴こう。”

神父としてもここでキャスターを倒しても無意味だと思ったのか話を聴くことに決めた。

“まあ、簡単な話です。こちらからバーサーカーを手伝ってセイバーを倒しますので、セイバーを倒すまではアサシンが私とマスターを襲わないようにしてもらいたい。どうですか?簡単でしょ?”

キャスターの提案はすごく簡単だった。
セイバーを倒すのに協力するから自分たちを狙うな、と。
どう見るとキャスターの助けなしでセイバーを倒せばいいだけのこととも思えるが――

“よかろう。しかしお前たちが手伝えるものが何がある?”

神父は意外と簡単に受け取った。
キャスターの方はいつでも倒せると言う自信とセイバーが結構強いサーヴァントと言うところが神父の心を動かしたんだろう。

“それはバーサーカーの方に聞けばいいでしょ。今頃私のマスターがそっちについているはずなんで。では、口だけの契約もなんですし。ちゃんとした契約をしましょうか。破った場合、一個分の令呪を消費するってことでいいですか?言峰神父。”

“ああ、そうしよ。”

キャスターが契約を終わらせ教会を出ると入った時とは違って空が暗くなっていた。
彼が空を見つめる。
自分だけに見える何かがあるのだろうか、結果がよかったみたいで安心したようにため息をつく。

“ふう、これで一先ずマスターがアサシンに殺されるのは止めましたが、いつまで隠せるのかが心配ですね。おほほほ、まあ何とかなるでしょうね?”

空を見ていたキャスターは視線を下し近くの森を見つめる。
そしてそのまま霊体化してその場から消えた。
彼が見ていたところには一匹の鳥が座っていた。


 キャスターが出た部屋に神父一人だけ座っていた。

“アサシン。”

“はい。”

神父の呼ばれに出て来た男は軍服を着ていて顔には白い仮面を被り頭には軍帽を被っていた。
その服の厚さを見ると寒冷地の軍人と思われる。

“今すぐアインツベルン城に向かいキャスターのマスターを確認し報告しろ。”

“はい、マスター。”

アサシンが消えた後神父はキャスターとの対話を思い出した。

‘キャスターか……。なにを企んでいるかはわからないがこちらの動きがバレているのは確かだ。慎重に動かないと。’

神父は目を閉じ思いに沈んだ。


 間桐家のリビング、そうでなくても太陽の明かりがあまり入って来ないこの家は今みたいに曇った時にはあまりにも暗くなる。
それなのに電気は付けてなくて暗すぎる所に黒の霜が居た。
彼は黒いタートルネックに黒いズボンを履いて中央に置いてあるソファーに座っている。

“キャスターのマスターは神父か。”

その呟きに霜の頭の中にセイバーの声が聞こえてくる。

‘ふむ、審判が選手になったのか。やつも結構水火の中もいとわないタイプなようだな。’

セイバーに驚く気配はない。
それは霜も同じだった。
霜が初めて神父を会ったのは一年前。
今回の聖杯戦争の準備で派遣されたと言う彼を見た時、霜は彼から圧倒的な威圧感と言葉には表現できないなにかを感じた。
それが自分にとって毒になると判断した霜はその後から神父を会うのを積極的に避けて、聖杯戦争が始まる前に使役魔を入れといた。
教会を使役魔で監視するのはルール違反だが、神父の不正よりは軽いほうだろう。

‘どうする?すぐにでも行くか?’

“まだだ。時を待つ。”

セイバーは不正を嫌いな霜がすぐにでも攻撃に行くのではないかと思ったけど、今までの戦いを見て完璧なタイミングを待つのがこの男の性格だと改めて気付いた。


 太陽が雲に隠れ、夜かどうかわからないくらい暗くなっている。
その暗い森の中で古い城だけが光を発している。
そんな城のサロンに人間じゃない二人が紅茶を飲んでいた。

“彼女は結構面白い人だったな。君は感情がないと聴いたがそうでもなさそうだ。”

三時間くらい前までここに居た織衣と話していた彼女は普段の無表情とは違う表情をしていたのだ。

“そうですか?よくわかりませんが私を見ていたあなたがそう言うのならそんなものでしょう。私が私の顔を見てはいないですから。”

彼は自分を見つめる彼女の顔が一瞬だけ笑ったように見えた。
おかしい。
召喚した時、きっと何かが間違ったことに違いない。
そうでなくては感情がないという彼女が笑うはずがない。
しかも首をかしげる彼女の行動は彼女がもう単純な人形ではないことを示している。
そうとしても彼女と私の間になにも変わることはないだろうけど。
そういう変な考えをしてる途中彼女が手に持っているのが目に入った。

“キャスターのマスターが渡したのはなんだ?”

それは内部に水が流れるような動きがありすぐにでも落ちこぼれそうな赤い石だった。

“あ、あなたなら喜ぶでしょうね。賢者の石のようです。”

彼女の言葉に彼は驚いたってことを隠せないくらいに驚いた。
錬金術師たちの永遠な課題。
それは最後に至らなかった者によっては達成しべきの目標なのだ。

“まさか聖杯に不老不死の体を手に入れ果たそうとした結果物が戦争の途中に手に入るとは。さすがはキャスターで召喚される者。既にその果てに着いているのか。”

自分も知らないうちにキャスターが羨ましそうに語ってしっまう。
彼女は自分の手に持った賢者の石から目を離せない彼に聞いた。

“やはりキャスターが羨ましいですか?”

いくら感情がないと言え、彼の行動を見たら誰でもわかるだろう。
彼女の質問に男が言い訳をするように言った。

“いや、聖杯を手に入れればいいだけの話だ。他人の成功を羨んでも意味がない。”

違う。
嘘に決まっている。
他人の成功が羨ましくないわけがない。
可能であれば彼の皮を被り彼になりたいくらい。
そんなことを思い化け物になった自分を自虐していると、彼女は、

“そうですか。私としてはよかったです。もしあなたが成功していたらわたしがあなたと会うことはなかったでしょう。そしたらわたしは本物の化け物を召喚しこの広い城に一人だったでしょうね。”

そう話したのだ。
その言葉に、全ては雪が溶けるように消え去った。
ああ、眩しい。
あの時と同じだ。
あの時も今のように外には雪が降っていた。
雪が降っている夜、召喚され始めて彼女を見た時と同じく、ここを見ながら話す彼女があまりにも眩しい。
きっと天井から輝くあの光のせいだろ。
そう、きっと光が眼鏡に反射したせいなのだ。
そうでなくても彼女と私の間になにも変わることはないだろうけど。


 アインツベルン城の森から抜け出しホテルに着いた織衣はセイバーの位置を探すためにモニターがある部屋に入った。
そこには彼女を待っていたのかキャスターが座っていた。

“遅かったですね、ミス空小路。話はどうでしたか?”

織衣は濡れた髪を解け、タオルで拭きながら返事した。

“いや、途中に雪が降りましてね。バーサーカーのマスターとは協力することになりましたよ。どうせいつか倒す敵を先に倒すだけで賢者の石が入って来るもんだから拒絶する理由はないでしょ。”

織衣の言う通りバーサーカーのマスターであるレイヤスフィールの立場では拒絶する理由はなかった。
結局いつか倒すはずのセイバーを賢者の石を貰って先に倒すだけ。
それを考えた織衣だから一人で城に入り込んだのだ。

“バーサーカーが昼になったら単純な魔術師ってところも大きかったですけどね。”

危険がなかったわけではない。
もしバーサーカーが夜の姿のままだったらさすがに織衣でも一人で城に行くことはなかっただろう。

“セイバーを倒したら動きますか?ミス空小路。”

織衣はキャスターの質問に答えが決まっていたかのように返事する。

“はい、賢者の石も完成したし、アサシンの動きだけ把握しておくと敵のマスターを倒すのは朝飯前のようなもんでしょう。”

レイヤスフィールに賢者の石を渡したけど机の上にはもう一個の石が置いてあった。
レイヤスフィールに渡したのはキャスターを召喚する時に使ったもので、今彼女が持っているのは本来キャスターが持っていた賢者の石だ。
それはレイヤスフィールに渡したものより質の高い魔力の石だった。

“それにしても結構楽しそうでしたね、面白かったんですか?”

“え、なにがですか?”

キャスターの質問に織衣が理解できないように聞くとキャスターが微笑みながら言った。

“バーサーカーのマスターですよ。私と話す時とは全然違いましたよね?そうですね、まるで友達みたいでしたよ。”

“はあ?いや、あんたは変なことばかり言うから。レイヤはこっちの話聞いているだけだから楽なんだよ。誰かさんとは違ってね。”

“おほほほ、そうですか?いや、よかったです。もしバーサーカーが倒れたら彼女を救いに行くとか、のことはないでしょうね?”

“いや、当たり前じゃん、そんなの。私が他の人を救う人に見えるの?”

それを最後に織衣はモニター前の椅子に座ってモニターの中のセイバーを探し始めた。
その後ろに立っていたキャスターは小さい声で呟く。

“あなたの言う通りになればいいんでしょうけどね、ミス空小路。”

しかし織衣の耳に入ったようで彼女が後ろを向いてキャスターを見つめた。

“え、なんですか?なんて言いました?”

それにキャスターは微笑み、

“いつから、レイヤ、って呼ぶようになりましたか?友達の間の愛称ですか?ミス空小路。”

そう言うと、織衣は頬を赤くしてキャスターの脚を蹴り始めたのであった。


 普段なら太陽が消え夕焼けになるごろ、夕焼けの代わりに雪が地上を染めていた。
ただ地上に降りる前に途中で雪を攫う者が一人。
おでこに二つの角が生えた彼女は雪を見て普段よりもテンションがさらに高くなってるようだ。

“マスター、雪だぞ、雪!雪だるまでも作ろうか?”

その高いテンションとは違い彼女の側には機嫌が悪そうな人がいる。
露は黒いワイシャツに厚いブルージーンズを着てその上に膝までくる灰色のコートを着ていた。

“Fuck、雪で遊んでる場合か?なんの対処もないのにさ。おい、ライダー。聞いてるか?”

露の話を聴いているはずのないライダーは雪に心酔していた。
もうすこしで光輪車に雪だるまができるかも知れないと思う露だった。
しかし露の考えは間違っていたようだ。

“イグルーでも作ろうか?マスターよ。意外と暖かいと言う知識があるぞ?”

ライダーのバカみたいな言葉に露が諦めたように、

“ああ、そうですか?勝手にしてください。Fucking姫。”

そう言うと、それを本気で受け取ったライダーがわかったと返事したが、露にとっては幸いだろう。
どこかで魔力の放出が感じられた。

“この魔力の質、サーヴァントか。行くぞ、ライダー。”

露の言葉にライダーの顔に失望した表情が現れた。

“どうせ行っても見ているだけだろう?ここでイグルーでも―”

“Fuck!馬鹿な話はやめろ。イグルーなんて聖杯戦争が終わってから作れ!”

“おお!では一緒に作るぞ、マスター。”

“Fuck、好きにしろ。”

そうやってライダーと露が乗った光輪車は魔力を放出しているサーヴァントを向かって走り出した。