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自作の小説の公開ブログ

自作の小説の公開してみます。
誤字多いと思います。


 07

 日本式の屋敷の中、朝が弱いリノが何故か今日は七時もなってない時間に起きてリビングでテレビを見ていた。
新都の繁華街を見せているニュースには雪が結構積もっているせいか、それとも週末の朝だからか人が少なさそうに見える。
字幕には最近貧血が起きたり倒れる人が多くなっていると書かれている。
しかしリノの目に入ったのはアンカーの後ろに並んでいた繁華街の商店だったようだ。

“アーチャー、出よう。せっかく日本に来たから遊びに楽しまないと!”

どこか気になったところでもあったのか、首まで隠している甘色のニットに青いジーンズを履いていた彼女はその上に膝まで来る赤いコートを着て白いマフラーをかけて屋敷を出る。
昨日の夜にもずっと降っていた雪は夜明けになって止まり始め、朝になっては綺麗に晴れていた。
屋敷の外に出ると白い雪が積もった町とそれに反射する暖かい太陽が歓迎していた。
朝も悪くないな、と思いながら誰かが綺麗に掃除している道をゆっくりと歩く。
土曜の朝からか通行人がいない道を歩く途中、どこから見た覚えがある後姿が目に入った。
身長は180㎝くらいで短いオレンジ色の髪、紫のジャケットに青いジーンズを履いてる彼を、どこで見たっけ、と私も知らないうちにずっと見つめる。
その視線でも感じたのか、後ろを見た少年が、あ、と感嘆詞のようなものを口にする。
やっぱどこで会って居たかな?
答えが出ない。
なら聞いてみるだけ、と思っているうちに彼との距離が近くなる。

“おはようございます。前にうちの家に来ていた方ですね?”

少年は私を覚えていたみたいだ。
さて……、家?
ここに来て訪ねた人がいる家としたら―

“あ、思い出した!君、藤村組の一員だね、たしか。”

衛宮士郎、つまり爺さんが住んでいたと言う家を聖杯戦争の間借りるために訪ねた藤村組、そこで藤村大河という爺さんの知り合いと話している途中に彼を見たのを思い出した。
どう見てもヤクザの家に制服を着てる少年がいて不思議と思っていたのだ。

“はい、藤村頼雅と言います。家はどうですか?”

自分たちの家を借りているからか親切に聞いてくれる少年。

“私はリノ、リノ・エーデルフェルト。それより家かー。正直言ってなにもなくてがっかり。あ、住むのは悪くないよ。”

前回の聖杯戦争の時に爺さんたちが住んでいた家と聴いてなにがあるかと期待したけど―
うん、なにもなかった。
そりゃあ人が住まない家を整理するのは当然だった。
今リビングにあるテレビも暇つぶしのために自分で買っておいたのだ。
その後なんの得にもならない話をいろいろとしていたらいつの間にかバス停に着いた。
目的地は同じだったせいか私がバス停で止まると彼も止まった。

“どっか行くの?”

“はい、新都へ。バイトが入って。”

“そうなんだ。私も新都に行くよ。バイトはどこで?”

対話を繋ぐための質問に彼が答える。

“中華料理店です。紅洲宴歳館・泰山という。”

中華料理という言葉に私の耳が集中し、大脳がそれを覚える。
時計塔に入ってからよく会えなくなった婆さんが幼かったころに作ってくれた中華料理はそれこそ最上級だった。
手には彼が教えてくれた場所をスマホで検索し、頭の中ではすっごく期待をしながら一人で新都に向かうバスに乗る。
彼は誰かを待つようだ。


 休日の朝から友達、藤村頼雅からラインが来た。
今日一日のバイトをするけど一緒にしないかって。
それに特にすることもなかった間桐慎二はそれに応じた。
クロゼットにある白いTシャツに青いジーンズを履いて膝までくる緑色のジャケットをかけて外に出る途中、部屋から霜が出て来た。

“朝から元気だね、慎一。約束?”

どうやら二階で準備をしていた慎一の音で起きたようだ。

“うん、藤村がバイト一緒にしようって。”

“そうか、どんな仕事?”

慎一のお父さんである慎五は早く出かけるので慎一の安全を確認するのは霜の仕事になっていた。
今日も変わらずに自分の予定を聞く霜に慎一が靴を履きながら答える。

“あれ、今度新都に新しく支店を出したって言う有名な店あるでしょ?”

靴を履き終わったか霜を見て話を続ける。

“紅洲宴歳館・泰山って。”


 なぜか朝から目を覚ました円はベッドの上から上半身だけを起こし周りをきょろきょろと見回っている。
なにかを探しているのか、きょろきょろしていた円は頭を掻きながらベッドから降りリビングに向けた。

“うう、寒いー。”

冬の間、一人で住む家のリビングが寒いのは当然のこと、人も居ないリビングにまで熱を入れるにはお金が勿体ない。
それでもここの何日間は朝に起きてリビングに出たら結構暖かった。
サーヴァントでも実体化したら寒さを感じるのか、リビングに居たランサーがいつも熱を入れていたのだ。

“あ、ランサーが居なかった時は知らなかったけど……。確かに寒いな、ここ。”

円がいつもランサーが座っていたソファーに座って、なにかを思うのか目を閉じてじっとしている。
彼のことだから、きっと寒さで動きたくないだけだろう。
しばらくの間そうしていた円は風呂に入ってシャワーをして服を着替えスマホを手に持った。
その腕には今は明かりを失った、ランサーのマスターだったという令呪の痕跡だけが残っている。

“僕の聖杯戦争は終わったし、久々に遊びでも行こうか!”

電話をかけているスマホの画面には霜先輩って書いてあった。


 柳洞寺の境内に積もった雪を掻いている一人の男が居た。
彼の身長は185㎝で柔道をしていたせいかかなりの大きい体に黒髪はそれこそ坊主頭だった。
彼の名は柳洞鏡月。
柳洞寺の方丈さんである柳洞一成の孫だ。
彼は昨日の夕方から降っていた雪を整理するのに苦労をしていた。
朝六時から掃き始めた雪が積もった柳洞寺の境内は八時になった今になって本来の姿を見せていた。

“ああー、もう。週末になんだ、これは。”

方丈さんの孫である彼は自分の兄さんとは違いかなりの問題児だった。
いや、問題児っていうよりは自分がしたいと思うことをしただけだが。
学校や大人たちの目には単なる問題児だろう。
こんな性格の鏡月はなんでも行動に移す円と性格が合いよくつるんでいた。
なぜか円が結構従ってるような一年先輩の間桐霜と一緒に。
なぜ今日過去のことを思い出したか知らないが鏡月はため息をついた。

“はあ、どこ行ったんだ、円。一人で面白い人生送らないで、俺も連れてけよー。”

それに、

“うん?なんだ、僕が来るのどうしってた?その間ブッダでも被った?”

階段から登りながら話をかけたのは円だった。
その側にはその時と同じく間桐霜も一緒だった。
何にも縛らず自由そうな円。
面倒そうでもしょうがないと言うように付いてくる霜。
鏡月は瞬間高校時代に戻ったような錯覚に包まれた。
新都に遊びに行こうと言う円の言葉に鏡月はすぐにでも行こうとしたけど、さすが全生徒会長の霜、彼のおかげで寺の雪を全部片づけてから柳洞寺から離れた。
なぜか誰もいない新都に向かうバスに乗って一番後ろの席を取った彼らは左から鏡月、円、霜の順に座っている。
あんなことやこんなことを話してる途中に気がついたように鏡月が聞いた。

“円、お前さ。急に消えてどこに行ってきたんだ?電話もあんましないし。”

鏡月の言葉に円がおかしいように、

“あれ?僕、言ってなかった?ロンドン行くって言ったよな?”

それに鏡月がそんな言葉は聴いてないって言うと霜が口を開けた。

“いや、言ってたな。そうだな、あれは卒業式の日のバッティングセンターだった。まあ、バットを振ってる人に聴こえるわけないだろうけど。”

霜の言葉に円が、ほらー、お前が間違ってるじゃん、って感じで言うとそれに怒った鏡月。

“あほか?!球に集中してるのに聴こえるはずねぇだろ?!”

それに霜が嗤うように、

“集中したことしては点数がなー”

その言葉に鏡月が、クオオー、と爆発した。

“いいぞ、この野郎。先輩もへったくれもあるか!かかって来い!”

これを見て間で笑う円。

“あはははは!”

怒った鏡月に淡々と言う霜。

“いいだろ。久々に格の違いを見せてやろう。”

怒る鏡月、笑う円、無愛想な霜。
彼らはまるで八年前のその時に戻ったよう。
心の中でその状況を楽しんでいた。


 大橋を渡ったバスから降りたバス停の近くにある中華風の店の扉にCLOSEと書いた札がかけている。

“あちゃー、早すぎたか。”

それも当然なのが、この食堂で一日働くと言った頼雅より早いバスを乗って来たのだ。
リノは開店を待つかと思ったけど九時どころかまだ八時を過ぎたばかりってことを見て他の店を回るように決める。
そろそろ開始する店が並んでることろにはある程度の人がいた。
朝から商売になるのか、と思いながら朝を食べるためにラーメン屋に入る。
今から仕事に行く人たちなのか、意外と人がいる店を見回す途中、ヒーターのすぐ前に知り合いが一人、ラーメンを食べていた。
気づかれないようにこっそりと近付き、

“おはよう、それ美味しい?”

挨拶をしてテーブルの向こうに座ると、首を上げてこっちを見た彼はよくないものでも見たように、朝から辛辣に言ってくるものだった。

“ああ、さっきまで美味しかったけど。Fuck、てめぇの顔を見たら味が落ちた。どう責任取るつもりだ?Fucking金髪。”

注文を受けに来た店員さんに彼が食べてるものを指しながら、同じもので、と頼みマフラーとコートを抜いて隣の椅子にかけてから彼を見たら、甘色のUネックのニット着ていた。
それを見てから自分を服を見て自分の知らないうちに言葉を出した。

“あれ、私たちペアルックだね。”

その言葉に彼は食べようと箸で持ち上げた麺を皿に落としこっちを見つめて来た。
その眉間には皺を付けて、

“Fuck、戻ってすぐ燃やさないとだめか。”

真剣に悪口を出す彼。
あれ、そういえばまだ彼の名前も知らなかったな、と気づき彼に話をかけた。

“酷いね、それよりさ。私、まだあなたの名前知らないけど。”

“それで、なんだ?そっちの名前を知っているとこっちの名前を言わないと行けない方でもあるのか、この国は。”

“へえー、私の名前、覚えてるんだ?”

瞬間彼は言い間違ったように表情を歪めるけどすぐ何もなかったかのよう、

“浅上露だ。好きに呼べ。”

名前を教えた。
やはりこの人はからかう面白さがありそう。
彼はもうする話はないようにラーメンを食べることに集中している。
都合よくこっちも皿が運ばれてきて、いただきます、と作業に入ろうと―

“あれ?なに、これ?”

そこには醤油をベースにしたソースを使ったラーメンなのか茶色っぽい汁のラーメンの上に中華のハム、錦糸卵、キュウリ、エビ、イカなどが乗っていた。
そこまでは中華ラーメンを食べてみたから別に特別なものはないけど変なことが一つだけ。

“なんで冷やしラーメン?今真冬だよ?!”

そう、氷。
ラーメンの汁には薄氷がふかふか浮いていた。
言うまでもない冷やし中華。
彼が食べてる麺から湯気が出ないと思ったらこんなオチか―
露はなんてことないように口の中にある冷たいものを飲んで話した。

“うるさいぞ、てめぇ。それよりラーメンだ。冷たいに決まってるだろ。熱いラーメンなんてラーメンって呼べるか。”

いや、呼ぶだろ、と思うことを口に出そうとしたけど露の言葉はそこで切れず、

“そんなラーメン、心臓が凍ってる北極のエスキモーが食べるもんだろ。そもそも日本人が熱いもの食べれるわけあるか。”

とバカみたいなことを言う。

“いや、偏見って言うか、あんただけだから、そんなの。”

意図せずにつっこみを入れて、注文したから仕方ない、と一口。

“―――”

氷山の上で花畑を見た。
おお、今死ぬとしても後悔はない、と思うくらいそれはあまりにも美味しかった。
冬、外の寒気を溶かすために入る者たちのためにヒーターのすぐ前はむしろ熱い食らい、しかしだからこそこの席から食べる冷やしラーメンは味の頂点に至る!
感動している私の姿を気付いたのか向こうのラーメン先輩が仰る。

“お、感じたか?てめぇ、知ってる口だな。お前とは対話が通じるかもな。”

何故かドヤ顔な彼に笑って、ああ、そうですか?と言い、意外と言うか、めちゃくちゃ美味しい冷やしラーメンを食べながらくすくすと笑うものであった。
いつの間にか九時を超えた時刻、美味しすぎたラーメンを完食し何故かサービスで出て来たアイスまで食べた後店を出た。
どうやらさっきまで人が居なかったのは早い時間のせいだったようで、今は結構な人があっちこっち歩いている。
露はそのまま帰るつもりだったのか、

“じゃあな。”

と言い歩いて行ったけど、このまま別れても暇だったから隣について歩いたら、露が脚を止めた。

“はあ?なんだ。話したいことでもあるか?”

本来であればここで悪口が出そうなタイミングだが美味しいのを食べて安定しているのか、それとも冷やしラーメン同士になったからかはわからないけど最初とは違う反応で、つい、

“いや?今日一日ついてみようかなー、と思って。”

それこそ彼がイラっとしそうな言葉を口に出した。
それに当然と言うべきか、

“Fuck、やりたいこともねぇのか?それともなんだ、俺に惚れたか?そりゃあ残念だったな。俺はてめぇに興味ないからな。”

とべらべらと喋る露。
さっきから気付いたけど彼は意外と外見とは違って話すのが好きなようだ。
特に自分が好きなものには話が二倍になるのか冷やしラーメンの講義はなかなかのものだった。
そんな露が並べる言葉に簡単に、

“うん、私、好きだよ。あんたみたいな人。”

と言うと、

“あ、そう。”

彼はなんの感情も、表情変化もなしでそう返事して止めていた脚を進める。
私はそんな彼につき、なんの役にも立たないどうでもいい話を語り合った。


 リノが露をからかいながら歩いている時、バッティングセンターには男お人が三人。
長袖の緑と白のストライプTシャツに甘色のジーンズを着ている三人の中で背が一番高い人が一生懸命に飛んでくる球を打っている。
そしてそれを見ている二人の中の一人は黒い長袖のシャツに黒いコットンパンツ、その上に黒いコートを着ていた。
ちょっと短めの髪さえも黒い美男子は映画の一シーンに出そうなオールブラックだった。
その隣でゲラゲラと笑っている男は隣のブラックとは違いオールレッドだった。
赤いラグラン袖の服に赤いズボン、その上に着ているベストさえも赤だった。
幸いと言えばそのもじゃもじゃとした髪だけは黒だった。
霜が視線を鏡月に向けたまま、隣に居る円にだけ聴こえるくらいに言った。

“聖杯戦争は諦めたか?円。”

諦めて欲しいのか、続けて欲しいのかわからない感情のない声。
それに円も鏡月を見たまま答える。

“うーん、まあ、ね。いや、しょうがないじゃん?ランサーは負けたしさ、僕一人であがいてもね。”

それに戻ったのは昨日の誰かと同じ反応だった。

“そうか。”

短い一言にどんな感情が籠っているのか、一緒にしてはや二十年近くと言うのに円は未だに彼の感情を読めなかった。
まあ、単純に円が馬鹿なせいでもあるけど。

“うーん、昨日リノさんもそう言ってたけど、どうして聞くの?”

わからないと聞けばいい。
その単純なことを実践する円。
それに答えを知っているべきの霜は、

“そうか、その女も君のことをよく知ってるな。”

変な答えをした。
言いたくないのか、ならあえて聞かなくていいか、と思った円が話題を変えようと思った時。
後ろから自分のことを呼ぶ声が聴こえた。


 露と共に歩きながら周りになにかないかな、と見回しながら歩いていると目立つ赤が見えた。

“あれ?円!こんなところで何してる?”

円の隣にはバッティングする誰かを見ている黒が一人。
さすがは円の知り合いだからか、一色の服ってところが面白い。
そんな考えをしていたら、私の隣に居た露が彼に近づき肩を叩き、彼が後ろ向き―――
―――時間が止まった。
いつの間にか近寄って話をかけている赤など目に入らず、視野に入るのはバッティングセンター前で露と話している美男子一人。
意外とうるさい露の話を受けてくれているのか頷いたり口を動いたりしてるけど――
美男だ。
超がつくほどの美男。
まるで映画にでも出そうな顔とスタイルでなんであんなところにいるんだろ。
本当になに、あれ、なんであんなかっこいいわけ?
私はべらべら喋る円の言葉など無視して、

“ねえ、あの人誰?”

彼が気付かないように指しながらそれこそ消え入りそうな声で聞く。

“うん?あー、霜先輩?間桐霜だけど?”

間桐霜―

“間桐?え、まさか。あの?聖杯戦争の始まりの三家のあの間桐?”

まさかー、と聞く私の疑問に返った答えは、

“うん、そうだよ。セイバーのマスターでしょ?あれ?まさか、知らなかった?”

最悪だった。
うん、本当最悪ー。


 その奇妙な出会い、というかを経て追加されたバッティングを終わらせ出て来た人を合わせ五人になり小会のようになった。
まだ朝ご飯も食べてなかったのか、食べ物を売ってるカフェみたいなところに行こうと言うことになり、何故か石みたいな砦みたいなイメージで、看板にAhnen erbe【アーネンエルベ】と書いてある店に入って来た。
店の雰囲気は基本的にアンティークな感じだ。
ちょっと暗くて安定していて電灯なしで日差しだけで照明を構成し礼拝堂に似た感じがしている。
席に座ってメニューを見ると、今日のメニューってものもあった。

“ふむ、こんな高級なカフェには来ないからよくわからないけど、なにを頼めばいいんだ?円。”

円の友達と紹介していた鏡月が円に聞くと当然って感じで答える。

“そうだな、ここはやはりチャンポンかな。”

円が話にもならないバカみたいな嘘を言うと私のななめに座っている超イケメン霜さんがその甘美な低い重低音で話す。

“嘘はやめとけ、円。本人は別のを頼むつもりだろ?”

“あ、やっぱ気付いた?さすが霜先輩。”

霜さんの言葉に円が自白したら鏡月が怒ったように言った。

“またうそかよ?!マジで注文するところだっただろうが。”

それに霜さんが淡々と、

“いや、心配するな、鏡月。そんなものをこんなところで売ってるわけないから。”

当然のことを言ったけど、そこで何故か笑う露。

“いや、それは間違ったようだぜ、霜。メニューを見ろ。チャンポンあるぞ。ほお、しかも冷やしチャンポンとは。Rockだぜ。俺はこれにするぞ。”

どうやら本当に売っていたようだ。
って言うか、また食べるのか、こいつ。

“え?まじで?すごいじゃん、ここ。カフェなのにチャンポン売ってるのかよ。”

露の言葉に円が不思議そうにメニューを見ながら笑い出す。
こいつら終わらなさそうだけど、先に頼もうか、と思った時、

“そう言えばそっちは誰だ?”

まるで今気づいたように霜さんがこっちを見つめてくる。
その言葉に答えようとすると、

“あ、リノさん?衛宮とエーデルフェルトの後継者だって。”

バカな円が入り込んだ。
そしてそのまま霜さんと円が対話を続く。

‘ちっ、ちょっと黙ってくれないかな、あいつ。’

と思ったところで隣の露が話をかけてくる。

“なんだ、お前。さっきまでと違くねぇか?べらべらと喋ってただろ?”

いや、そっちの方が喋ってたから、とつい突っ込みたくなく言葉に私は静かにとぼける。

“いや、別に違わないけど。”

しかし私の視線は霜さんから放れなかったようだ。
露が私の目から視線を追って霜さんにたどり着き、はっ、と笑う。

“へえー、ほおー、そういうことか。これはRockだぜ。霜、時間があればロミオとジュリエットでも読んでおけ。”

うっ、絶対気付いてる、こいつ。
そうでなくてこんな言葉言うはずがない。

“うん?ロミオとジュリエット?敵同士に愛するって話だっけ?”

途中に円が入り込んで話す。
だからお前はちょっと黙ってくれないかな。
無駄に露の話を伸ばすな―

“ああ、それだ。読んでおくと後に役に立つかもだぞ?な?女。”

何故そこで私に話を投げる、絶対狙ってるでしょ、これ。

“さ、、さあ?なんのことがよくわからないな、私は。”

言いながら隣の露を睨む。
露はめちゃくちゃ楽しいように笑う。
他の奴らは理解してなさそうだし、霜さんはどうなのか全くわからない。
とにかくこんなカオスな状況でいつの間にか注文したものが並べていく。
冷やしチャンポン、ハヤシライス、カレー、パフェ、コーヒー。
冷やしチャンポンは言うまでもなく露のもので、その次は順番に円、鏡月、霜さん、私の順だった。
ところで……パフェ?
甘いのと全く似合わないような霜さんがそれを頼んでいることを露も似合わないと思ったのか、

“なんだ、お前。パフェだなんて……。”

指摘のような言葉に霜さんのフォローをするべきではないかと思ったけど、

“Rock!知ってるな、霜。さすが俺の弟か、ははは!やはり食べ物は冷たくないとな!”

冷たいものを好きな露の気に入ったようだ。
冷たいとなんでもありかよ、と思い、それよりなにか引っ掛かる単語が――

“えっ、弟?!”

つい叫んでしまった。

“ああ、そう。俺の弟だぞ。そんな意味で女が霜から目を離せないのも理解できなくもない。な?女。”

またしてこっちに話を投げる露。
なんだ、このブラコン。

“なのになんでこんな違うの?性格はともかく外見も全然違うでしょ?こっちは黒人に甘色のワカメ髪なのに、霜さんは白人に黒髪の超イケメンだしね。”

“Fuck、黒人じゃねぇぞ。ちょっと日焼けしただけだ。中東で長かったからな。それに髪は俺の方が父、霜の方が母ってところかな。あと超イケメンなのは同じだろ。てめぇの目は節穴か?”

“へえ、霜さんのお母さんは綺麗そう。”

“Fuck、最初と最後は無視かよ。”

その後も続く露の攻撃のような言葉を適当に越えて、霜さんとはたった一言も言えないまま店の外に出る。
一応どこに向かうのかもわからないまま歩き出してそのまま別れるのかと思ったら何故か露が呆れたって感じで、

“あほか、お前は。しょうがないな。おい、霜。”

ちょっと前を歩いていた三人の左に立っていた霜さんを呼び止める。
まあ、おまけで残りも止まったけど露が二人で話たいことがあると言うと円と鏡月はゆっくりと歩き出す。
そして何故か私を呼ぶ手振り。
それを見て近づくと、

“霜、こいつがお前のこと知りたいってよ。”

と言い出した。
恥ずかしさに顔が赤くなるのが感じられるくらい。
何言ってるの、この人!

“え、いや、その―”

素早く否定しようとする私の言葉を切った霜さんは、

“そうですか、私もあなたのことは知りたいと思っていました。”

私の心臓を狙ってきた。
それを聴き雰囲気を読めるのか読めないのかわからない露はRockを連発しながら笑うけど、あまりにも落ち着かずなにを言っているのかも聴こえなかった。
その後どうなったのかはよく覚えてないけどスマホの番号はゲットしたようだ。
さすが私、記憶はなくてもよくがんばった。
そうやってハイなテンションで午前を超え午後に過ぎていく。


 霜が露、リノとの話を終わらせて円と鏡月と合流したら円が聞いて来た。

“どんな話したの?”

“さあ、それより彼女が衛宮士郎の孫ってのは確かか?円。”

霜が確認するように聞くと円が答える。

“うん、そうだよ。直接聞いたから。”

“そうか……。”

霜が円にリノに関して何回か質問しながら道を歩き出した。


 午前九時ごろに紅洲宴歳館・泰山に着いた慎一と頼雅は仕事をしている。
午前十時に開店してか十二時ごろまではスカスカとしていたが、ランチタイムだからか午前よりは人が多くなっていた。
その忙しかった時間帯を経て午後二時ごろに慎一が店に入った人を見て行動を止める。

“どうした、慎一。”

頼雅が慎一を呼ぶと彼は頼雅に自分の代わりにお客さんの注文を頼もうと言い厨房に入った。
それに頼雅がお客さんに近づくとそこには三人の外国人が座っていた。
その中の金髪は今朝会っていたリノだった。
頼雅が挨拶をすると何故か真っ青な顔の彼女が挨拶をした。

“うん?ああ、頼雅?バイトしてるんだ。”

特に何事もなく注文を貰って厨房に入ると、そこに居た慎一がリノの方を見つめている。

“ほお、慎一。”

“うん?なに?え?どうしたの?”

何故か変な頼雅の反応に慎一が戸惑っていると、

“惚れたな、お前。紹介しようか?”

ととんでもないことを言ってくる。
慎一がこの年頃の青少年の誤解を解けるために適切な嘘を混ぜながら苦労をしたのは言うこともなかった。


 霜たちと別れたリノは最初の行く先であった中華料理店に入った。
典型的な中華料理店って感じがしている店だった。
店の中は赤と金色で飾られていて、円卓のテーブルが置いてある。
そこで知り合いと言うか、知ってる顔が二人、向き合って座り何かを食べている。
当然なように近づき隣の椅子を引き出して座った。

“こんにちは、神父さんと聖杯さん。”

座っていた二人は白髪の二人で高く見ても二十代後半としか見えない人たちだった。
服は相変わらず神父服と白いドレスのままだ。
そんな彼らの前に真っ赤な麻婆豆腐が置いてある。

“ふむ、アーチャーのマスターか。麻婆豆腐を食べに来たか?”

何故か神父はくらくらと沸く窯に入ってるような麻婆豆腐を食べていた。
それもすごい勢いで。
額に汗をかいて、水など要らぬ、一度手を止めたら二度とスプーンは動かぬ、という修羅のような気迫。
っていうより立て引きずくで食べているのではないか、こいつ。
食べるスピードが半端ない。
もしかして美味しいのか?
あのラー油と唐辛子を百年ほど沸かして合体させたあげく、私、超辛い麻婆豆腐、今後よろしくな、とでも喋りそうな料理が美味しいってことか。
中華料理は好きだけど、これはやばい、神父も危ないけどこの店もやばい。
あれ、絶対に危ない量の辛子が入っている。
そうでないと説明にならない。

“どうした、人が食べるのをじっと見ていて。頼んだらどうだ。”

食べながら神父が言う。

“……。”

気を付けながら、いや、なにに気を付けているのかわからないけど!
とにかく気を付けながら注文のためベルを押す。
初めての意図とは違って炒飯を頼んだ。
頭で何万回も計算した結果、この店の辛いものは頼めるものではない。
きっとあれは人間が食べる料理なんかじゃない。

“……。”

じっと神父の動きを観察する。
……すごい。
麻婆豆腐、残りは二匙だけ。
こいつ、本当にあれを全部食べる気か、と思い、固唾を呑んだ時、いきなり隣に座っていたレイヤスフィールが手を上げる。
そこを見ると彼女の前の皿は綺麗になっていた。

“ええっ?!うそ!あれを全部食べたの?!”

しかし彼女は神父とは違い汗一つかいてなかった。
これが聖杯の奇跡ってことか、そうでないとどう食べきれると言うのか。
驚く私を置いといて彼女が近づいた店員さんに言う。

“おかわり。”

狂ってる。
それをもう一皿食べるの?!
言葉を失ってぼっと見ているともう一つの声が聴こえた。

“こっちも同じもので頼もう。”

お前もかよ、と思っていたら神父が私を見て聞いた。

“お前も、……食うか?”

“食うか!”

きっと味覚がないことに決まっていう危険分子が二人。
知らないふりすればよかった、と思いながら注文した炒飯を早く食べて逃げようと心を決めた。


 Uネックの黒いTシャツにブルージーンズを着てその上にちょっと短めのジャケットを着た織衣が雪が整頓されている新都の道を歩いている。
行く先は中華料理店。
行く理由としては単純に酢豚が食べたかったから、それだけ、とキャスターに行って出て来た。
まあ、自分でも隠すとは思わないけど、性格上自分で直接言えないだけのことだ。
昨日初めて会った相手をただ会いたいからって理由で会いに行くって口が裂けても言えるもんか。
借りているホテルの近くだったからすぐ着いたけど入れ難くてうろうろしていると、頭の中でキャスターの声が聴こえた。

‘近くにセイバーのマスターがいますよ、ミス空小路。隠れたらどうですか?すぐ前の店の中にでも。’

誰が聴いても確実な嘘の言葉。
それを私は仕方ないと言う感じに、

‘そ、、そうですか?なら仕方ないですね。他に隠れるところもないですし。本当に仕方ないから入りますよ、キャスター。’

その言葉にキャスターは、

‘はいはい、わかりました。’

と爆笑するものだった。
ともかく店に入るとランチタイムが過ぎたのか結構からからだった。
その中で目立つ綺麗な白髪を見つけて走るように近づくと、なぜか地獄がそこにあった。
真っ赤に沸きあがるなにかをほとんど食べ終わっている二人と、その中でぶるぶると震えてる可憐な金髪の子羊が一人。
その地獄を口に運んでいたレイヤが私に気付いたのか、あ、と見つめて来た。

“こんにちは、織衣。また会いましたね。”

その言葉にこっちを見る子羊はきっとアーチャーのマスターだろうけど……。
どうして神を見つめる目でこっちを見てるんだろ。
私、神は信じないんだけど。
アーチャーのマスターの前に残った椅子に座り、ところでこの女は私がマスターってことを知っているのか、とか色々考えている途中。

“織衣、注文はしないんですか?よかったらこれ一緒に食べますか?”

彼女が食べているものを見て……、これは拒絶するべきと全身から拒否反応が起こる。
どうしよう、と悩んでいると、テーブルの向こう側の彼女が言った。

“やめたほうがいいよ。織衣と言ったっけ、あれ絶対人が食べるものじゃないから。”

その言葉に食べていたレイヤが、

“うーん……。そうですか?私は人ではないから食べれるんでしょうか?”

とただの事実を伝えただけの言葉がきっと次の結果を呼び出したんだろう。

“いいえ、私実は一度食べてみたかったんです。レイヤ、一口もらえますか?”

きっとその地獄に流れそうなものは人が食べれるものではないのに、どうして私はこう愚かになったのだろう、人ではない、と言うところに反応しただろうか。
彼女が人ではないことは彼女自身もどうも考えていないだろうけど、なぜだろう、その言葉に私の胸が痛いのは。
そんなものを考えていると、レイヤがこっちに向かってスプーンを出してきた。
いや、待って。
私はただ自分のスプーンで皿にある地獄を自分の手で口に運ぶつもりだったのに、なんで彼女のスプーンが目の前に居るのだろう。

“やはりやめますか?”

ちょっと渋っていると気が変わったと思ったのかレイヤが聞いて来た。
そう、今ならあの地獄から逃げられる、と叫ぶ理性的な頭脳とは違い、もう馬鹿になっている感性的な体は首を横に振って出されているスプーンを口に入れた。
そうして、今までの約十年間の執行者としての仕事は苦労の数にも入らなかったな、と言うことを聖杯戦争の途中である今日になって気付くものであった。


 たった一人の救世主と思った彼女は何故かその地獄を口に入れた。
見ているこっちが気絶しそうな感じ。
バカだ、バカに決まっている。
ホテルのフロントで初めて会った時は何故か彼女が最近よく発生している連続気絶事件(?)の犯人でキャスターのマスターかと思っていた。
しかし今日のこのバカげた行動を見ると普通のバカではないかと思われる。
それにしては聖杯と知っている点できっとマスターなはず、だったらあれは演じているのか?
麻婆豆腐を口に入れた瞬間、死ぬほど顔が真っ赤になった彼女はごくごくと水を飲み続け、いや、注込んでいる。
普段の織衣を知っている時計塔の奴らが見るとそれこそ地球が反対に回っているに違いないと証明しようとするだろう。
それくらい普段の織衣ならしないはずのことをしたからリノが彼女をバカと呼び続けているのは当然だった。
それにしても変に思ったのは聖杯に対した彼女の態度だった。
自分では知らないかと思うけど周りから見たら恋に落ちた少年、そのものだった。
女である私が見ても可愛い彼女を少年と言うのは申し訳ないが、実際聖杯と彼女が恋人同士だとしたらきっと彼女の方が男子に似合うだろう。
そんなどうでもいいことを考えていると側から、

“ふむ、ではお先に失礼。私は先に帰ろうとしよ。”

黙々と食べていた彼の皿はいつの間にか綺麗に空いていた。
早っ!あまりにも早いスピードで追加で出た一皿を完食して彼は店を抜け出した。
残ったのは女の子が三人。
さて、女三人寄れば姦しい、らしいが――。


 メインを食べ終わった私たちはデザートを食べている。
織衣は可愛い外見には似合わないブラックコーヒーを頼んで、レイヤスフィールはあれだけ食べてもまだ豆腐が足りなかったのか杏仁豆腐を頼んだ。
そして私はゴマ団子とウーロン茶を頼んだ。
神父が帰り、水を注いでいた織衣もある程度落ち着いたようだ。
レイヤスフィールと言ったか、聖杯の器と聴いて映像で見たロボットのような感じかと思ったら、人格を持っているからか、意外と親切な感じだった。
今も彼女は織衣を心配しているように見つめながら話をかけている。
それに大丈夫と言う織衣。

“どう考えても親密以上の何かが―”

つい口に出した言葉に織衣がこっちを見つめる。
いや、睨んでるようだ。

“なんですか?し、、親密以上の何かってべ、、別にそんなっ、じゃないから。”

反応が可笑しい、なんでそこで噛むの。
それよりかわいい、もし妹が居たらこんな感じかな。

“へえー、そうー?本当かなー。どう見てもねー。”

わざとらしい言い方。
それにどう反応するか楽しい心で待つ。

“はい、本当。本当ですって。ね、レイヤ。”

“はい?なにがですか?”

聖杯の器がこのままだと豆腐の器になるのではないかと思われるくらい麻婆豆腐の次に杏仁豆腐を食べているレイヤスフィールは聴いてなかったようだ。
それで織衣が説明しようと、

“私たち何の関係でもないよね?レイヤ。”

なんか変な言い方になっている。
本人も気付いたのか、いや、と言い出し何か表現を探すようだけど、その前にレイヤスフィールが口を開ける。

“そうですね。私たち何の関係でもなかったんですね。”

これは修羅場の予感!
レイヤスフィールに抗弁(?)しようとする織衣の先に一言。

“そうみたいね。残念。格別な関係と思っていたのはあなただけだったようね。”

笑を止めながらそう言うと、案の定織衣が戸惑ったのかすごい勢いで席から立ち、

“そんなことないよ!私もレイヤのこと特別って思っているから!”

店のみんなに聴こえるくらいの大きな声で爆弾発言をしたのだ。
遅れて気付いたように顔を真っ赤にして椅子に座って俯いた彼女にレイヤスフィールが純粋に言う。

“そうですか、よかったです。私も織衣のことは特別と思っています。”

その言葉に顔どころか耳まで赤く染めてレイヤスフィールの言葉に答えるように首を縦に振っている彼女を見ながらちょっと悪いと思いながらも可愛いと思ったのだ。
すごく恥ずかしかったのか、彼女は約五分くらいの時間が経って安定になったのか話をかけてきた。

“うう、どうしてこんなことに。わざとでしょ、あんた。”

今までの敬語はどこに行ったのか口調が壊れそれこそ敵を相手する口調で私に当たって来る。
どれくらい打解けたって感じ。

“うん、今分かった?”

笑ながら言う私んお返事に彼女が呆れたって感じで言う。

“なんでこんなことするの、ドSじゃないの?あんた。”

睨みながら言う内容があまりにも当たり前なものだった。

“なんだ、それも今わかった?それより口調、変わったね。そっちが普段の織衣?”

それに彼女が今気づいたように口を開ける。

“いや、まあ、そんな感じかな?普段と言うか、、親しい人の前と言うか、一人しかいないけど。”

親しい人の前なのに、二人?
相当人間関係が狭いようだ。
まあ考えてみるとさっきまでの冷たい言い方だったら親しくなるのも難しそうではある。
それにしても言い換えてみたら、

“私、織衣の親しい人?”

私の質問が相当嫌だったのか、彼女の表情が歪む。

“げっ、これはあまりの怒りに口調が変わっただけだから。”

酷いな、人を向かって、げっ、て。

“そう?なら仕方ないかー。親しくなるまでからかおー。”

ますます歪む織衣の表情。
何でそうなるの?!と叫ぶ彼女の言葉を無視してゴマ団子を一つ食べる。
その味はちょっといまいちだったけど、本当に織衣はからかう味がある子ね。
本当、彼女が聖杯戦争のマスターってことが残念なくらい――
結局織衣はただレイヤスフィールを会いに来ただけなのか、ブラックコーヒーだけ飲んで店を出た。
店で織衣をからかうことに夢中で知らなかったけど結構時間は過ぎていて午後四時になっていた。

“では、私は教会に戻ります。”

レイヤスフィールの言葉に織衣が残念そうに、送ってあげる、と言ってけどレイヤスフィールが断る。
それに織衣がわかったと言うより先に口を走った。

“まあ、いいでしょ?私も教会行ってみたいから一緒に行こうよ。”

まあ、店でからかったお詫びってところかな。
そうやってレイヤスフィールに同行し教会に向かう。
織衣の表情が明るいのがちょっと、いや、結構可愛かったからまたしてからかったけどそもそもこの時間を作ってくれたのは私だからそのくらいいいよね?


 いつの間にか短い冬の太陽はその姿を消して月が見えてきた。
レイヤスフィールを教会に送ってあげて、帰る道。
教会を出て私と二人きりになった織衣は答えるだけの機械になったように、自分から話をかけてくることはなかった。
答えは短く。
まあ、本来の姿ってところだろうけど―
酷いな。
それでも今まで楽しく話していた相手なのに。
まあ、楽しめたしそろそろいいか。
教会とホテルの間にあるとある公園、太陽が沈んだからか、それともそもそもあんま使わないところなのか、人の気配はなかった。
公園には私と彼女の二人だけ。
そんな公園の中で私が脚を止めたにも関わらず、彼女は何を考えているのか気付かずに歩き続けている。

“酷いなー。なにをそんなに考えてるの?織衣。”

自分の名前が聴こえ、やっと気づいたように彼女が後ろ向いた。
二人の間の距離は凡そ五メートル、サーヴァントなら一気に近づける距離。
公園の少ない電灯が二人の影を繋げている。

“あ、すみません。ちょっと他の考えをしていて―”

まあ、レイヤスフィールのことを考えていただろう。
いつの間にか口調も初めて会った時に戻っているし、それよりちょっと残念、

“家に帰るまでが遠足って言うのに、残念。私たちの遠足はここで終わりにしましょ。”

もうちょっとだけこの時間を楽しめたかったのに―――