喫茶店の狭いトイレに入り、お世辞にも趣味が良いといえないその服を着ようと服を脱ぎました。
その時、外から父の声がしました。

「着たか?」

私がトイレに入ってすぐでした。

「まだ…。」
と言うと、父は
「開けろ。」
と言いました。

「もうちょっとやから…。」
「えぇから早よ開けぇや。」
少し苛ついた声で言われ、私はすぐに開けました。

すると父はサッと中に入ってきて鍵をかけました。
5年生ですでに身長が155㎝あった私はスポーツブラを着けていました。

父は私の胸を見ながら、
「胸囲は何センチなんや…。」
と聞きました。
「わからん…。」

子供だから恥ずかしがるのも恥ずかしい気がして私は突っ立ったままでした。

「こんなんしてるんか。サイズ合ってるか見たろ。」
と父は私のスポーツブラを裏返すようにして中の表示を見ました。

スポーツブラの中に手を入れ、父の手の甲は直接私の少し膨らんだ胸に何度もあたりました。

まるで押し付けるように…。

私は父の邪な考えに気づきました。
また喜んでしまった自分が嫌になりました。

よく考えたら、父が私にプレゼントなんて渡す訳がないのに…。私はそんなことを頭の中で考えていました。
でも、考え過ぎかもしれない…偶然父の手があたっているのかもしれないという思いも少しありました。
嫌いな人間の体は、殴ることがあっても、触ることはないだろうと思ったからです。

じっとして下を向いている私に父は
「着てみぃ。」
と促しました。

その服を頭からかぶり腕を通すと、父が服をきちんと着れるように手を出してきました。

やっぱり私の考え過ぎかな…と思った瞬間…。

父は右手で私のお尻を触り、左手は胸をギュッと握るように触ったのです。

その時の私はSEXの知識はありませんでしたが、なんだかエッチなことだ…とはわかりました。

「お父さん痛い。」
と言うと父は黙ってトイレを出ました。
私は少ししてからトイレを出て、奥の父の席には行かずに喫茶店を後にしました…。

自転車にカギを差す手が震えました。
涙が出そうでしたが、父が私を追って出てくるのではないかと怖くて急いで自転車をこぎました。

頭の中は今までにないような混乱で、大声で叫びたい気持ちになりました。
私は「そんなことわかってるから…お願いやからお母さんや結衣に胡桃が嫌いって言うのは止めて」と心の中で願いました。

ずっと可哀想と思われたくない、殴られていることなんて誰にも知られたくない…と常に気をはって生きてきたせいか、私は幼い頃から極度の偏頭痛持ちでした。

頭が割れそうに痛み、壁に何度も頭を打ちつけて紛らわせたりしていました。
今思えばおかしなことなんですが、壁にぶつけた痛みで、頭の中の痛みが和らいだような気がしていたのです。
狂ったように
「頭痛い~!!痛い~!!痛い~!!」
と叫びながら頭をガンガンぶつけるのを母は必死で止めました。
本当におかしくなったと思ったのではないでしょうか?
「薬持ってくるからやめなさい!!」
と痛み止めの薬を飲まされ数分して吐いて楽になる…これを2~3ヵ月に1回は繰り返していました。

その頃の父は、家に居場所がなかったせいか、借金を繰り返していたようです。祖母の家で暮らしていたから家賃などもかからず生活できていたようです。
大人になって断片的に話は聞きましたが、どうなっていたのか詳しくはわかりませんが、この時期に1度父は家出をしました。
私は内心、死んでくれればいいのにと思いました。
家での期間は2週間くらいだと思いますが、その間に自宅に父から電話がありました。
母がその電話をとったのですが、父は私に代われといったようです。
「胡桃…お父さんから電話やで」
と言われました。

緊張して受話器を持つと
「胡桃…ちょっと用事あるから〇〇って喫茶店まで来てくれ…わかるやろ?」
と、父は思っていたより穏やかな口調で言いました。
母に告げると
「行ってきたら?」
と軽く言われました。借金を作って家出している自分の夫です。母は私を全力で守る人ではなかったのです。
私なら絶対に子供には行かせずに自分が行きます。
「お母さんは胡桃がどうなってもエェんやな。」と寂しい思いで家を出ました。
喫茶店に着くと笑顔の父がいました。
「お前に似合いそうな服があったんや。…これ、ちょっとそこのトイレ行って着てみぃ。」
とTシャツとタンクトップの重ね着のような服を袋から出してきました。夢のようでした。父が私にプレゼント?

4年ぶりに私に向けられた父の笑顔。
照れくさいような嬉しいような…この時ばかりは私の顔も笑顔でいっぱいになりました。
「うん…着てくるわ」
父の思惑も知らずにトイレに向かいました。
5年生になると、カセットウォークマンがクラスでも流行りだしました。

でも子供にとってすごく高価な物です。すごく欲しかった私は、次のお年玉で買えるかなぁ…と思っていました。

そんなある日、珍しく早めに帰宅した父は、妹結衣にプレゼントを買ってきていました。

私が欲しがっていたウォークマンでした…。結衣はウォークマンなんて欲しがっていなかったのに。
大人になってから結衣から聞いた話では父は「絶対胡桃に貸したらアカンで。」
と言っていたそうです。
それは、私への当てつけに妹にあげたプレゼントだったのです…。

夕食時に渡されたそのウォークマンを見ても、妹も喜んではいなかったし、私も顔の表情を変えることもありませんでした。

でも下の妹美香は
「美香のんは!?…パパ美香のお土産はっ!!」
とごねていました。この日は、プレゼントされていないのが私1人ではなかったので、あまり落ち込むこともありませんでした。

でも次の日も早く帰宅した父は、下の妹にブタのぬいぐるみを買ってきていました。
結衣もどちらかというと、このぬいぐるみが良かったようで、よく取り合いの喧嘩をしていたのを覚えています。

この時私は「今日は美香のんやから、明日は私のん買ってきてくれるんかなぁ」
と期待していました…。

次の日…。

残業か、飲んでいたのか、父は私たちが寝静まった夜中に帰宅しました。
私は、父が上ってきた階段の音でめがさめてしまいました。しばらくすると、隣の部屋から父と母が言い争っている声が聞こえてきました。
「胡桃にも何か買ってきてあげてよ。」

母は、何も貰えていない私のことを可哀想に思ったのでしょう…。その後父が何て答えたかは覚えていません。
怒鳴ってはいましたが、私はその母の言葉がショックだったのです
「母が私だけ可愛がられてないのを哀れんでいる。知っているんだ。」ということが恥ずかしくて頬が熱くなり、涙が溢れてきました。

父は母と言い争った後、子供部屋に入ってきました。私は2段ベッドの上で寝ていて、下には結衣が寝ていました。
壁にかかった扇風機は私にも結衣にも風がくるように調節されていました。その扇風機を乱暴にガガッと下へ向け、父は結衣のベッドに入りました。
その音で起きた結衣は「そんなんしたらお姉ちゃんが暑い」
と言いました。
「胡桃はエェんじゃ!…お父さんはなぁ胡桃が大嫌いなんや!」
と大声で言いました…。