新型コロナウイルス感染症に関する報道は、読者の皆さんも毎日接していて、それぞれが感じることや思うことがあるものと思います。時間の経過とともに、感染者の居住地域や感染者数、死亡者数が増加しており、現在進行形で予断を許さない状況ですが、それと同時に、新型コロナウイルスの性質や、感染を防ぐための方策が、修正を重ねられながら、徐々に正しく報じられるようになってきているように感じます。

 そうした中でつい最近、私が興味を持ったのが、新型コロナウイルスについて解説している米国のNBC NEWS の1本の動画です。

NBC NEWS「WHAT YOU SHOULD KNOW ABOUT THE CORONAVIRUS」

 医師であるJohn Torres博士が、新型コロナウイルスがどのようなものなのか、そしてどのような感染経路を持つものかを説明し、SARSやエボラ出血熱との比較にも言及した上で、今一般の人々が取れる対策について述べている5分間の動画です。随所にピクトグラムが用いられ、非常に分かりやすく構成されています。

 動画では、2018~19シーズンにおける米国でのインフルエンザによる死者が3万4200人に上ったことについても解説し、免疫機能を強化するという意味でも、インフルエンザワクチンをまだ打っていない人に向けて、可能な限り早期に接種するよう推奨しています。

 この動画を最後まで視聴した後に、私が行ったことは、自分が勤務する薬局に掲示する日本語で書かれた新型コロナウイルスについての情報の検索でした。ですが、直前に視聴したNBC NEWSの動画に匹敵するような分かりやすい日本語の動画を、簡単に見付けることはできませんでした。そうした中で行き着いたのが、厚生労働省が一般の人向けに作成した新型コロナウイルスについてのウェブサイトでした。

厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」

 新型コロナウイルスについて英語で検索することで、米国の放送局が一般向けに制作した分かりやすい動画をすぐに探し出せたということと、日本語の検索では適切な動画が見付けられないまま、厚労省のウェブサイトにたどり着いたという事実からは、正確な情報を分かりやすく加工し早いタイミングで公開していこうとする米国内のメディアのスタンスと、厚労省による相対的に文字中心の公的情報が情報の主体となっている我が国との違いが、鮮明に出ているように感じました。

 米国の西海岸ではアジア系の移民が、また、南部の州ではヒスパニック系の移民が、それぞれ多数住んでいて、疾病に関するコミュニケーションを言葉や文字情報だけに頼れないという事情が存在するため、ピクトグラムが多用されているといった背景が、そこにはあるのかもしれません。

 日本では、識字率も高く、厚労省が公表している資料の信頼度は間違いなく高いという一般的な認識があるため、ピクトグラムを使用せずとも読んでもらえるだろうという感覚が、作成する側に無意識ながらあるのではないかと、私見ではありますが感じています。

 ただし、日本においても日本語に不慣れな外国人が数多く暮らしています。国内で報じられている他のニュースによると、前述の厚労省のウェブサイトを、サイト内の「他の言語で読む」機能を利用して読もうとすると、翻訳された文章に誤りが多いといったことも指摘されているそうで、早急に改善されることを願います。

 一方、新型コロナウイルスに関する情報とは対照的に、私が面白いなと感じたのが、感染拡大防止に重要な役目を果たす「正しい咳エチケット」について厚労省が作成したポスターです。斬新かつ、インパクトがあるように思いましたので、早速、1部出力して、薬局の待合にある給茶機に貼りました。

 印刷の際に調整すればA4サイズでも出力可能ですので、皆さんもぜひ活用してみてください。

(清水篤司。1973年生まれ。薬剤師、宅建士、総合旅行業務取扱管理者、旅インスタグラマー。慶應義塾大学法学部、神戸学院大学薬学部卒。兵庫県在住)

連日の新型コロナウイルスに関する報道の影響で、ドラッグストアの店頭からマスクや消毒薬が消えている。そのあおりを受け、薬局にもマスクだけを求めに来局する人が増えているようだ。日々、様々な人と接する薬局薬剤師はどのような感染対策を行うべきか、感染制御専門薬剤師とICD(インフェクションコントロールドクター)の資格を持つ、えちごメディカル(新潟県長岡市)の大久保耕嗣氏に聞いた。  

――連日の新型コロナウイルスに関する報道の影響で、全国的にマスクやアルコールが供給不足に陥っているようですが。

 えちごメディカルは4店舗ありますが、全てでマスクや消毒薬が品薄、または欠品になっています。そのため、一時的に小分けにして販売をしたり、 ステロイドや免疫抑制薬、抗癌剤、抗リウマチ薬などを服用していて免疫力が低下しているような、本当にマスクが必要な患者さん に対してだけ販売をしたりしています(図1、2)。 

図1 殺菌・消毒薬の品薄の様子

図2 マスクに関するPOP

 厚生労働省はホームぺージで、一般に向けてコロナウイルスの感染予防法として、かぜや季節性インフルエンザ対策と同様に、咳エチケットや手洗い、うがい、アルコール消毒を行うよう公開しています。咳エチケットとは、咳やくしゃみが出る際にマスクの着用、ティッシュ・ハンカチで口や鼻を覆う、袖で口・鼻を覆うことです。

 無症状の人がマスクを着用しても、感染予防できるとは言えません。マスクは予防目的ではなく、感染者が感染拡大をしないために着用するものです。これは、インフルエンザウイルス同様に飛沫感染すると考えられているコロナウイルスについても同様だと考えます。

 実際、インフルエンザ陽性となり、48時間症状が続いている患者さんがいる家族を対象に、マスク着用群と非着用群に分けて検討した結果、家族がインフルエンザ様症状を示した割合は、マスク着用群で16.2%、非着用群で15.8%と有意差は無く、マスク着用による感染予防効果が認められなかったことが報告されています1)

 このほか、インフルエンザ家族内感染について、手指衛生群(マスク非着用)、マスク着用+手指衛生群、コントロール群で比較したところ、マスク着用の有無に関わらず、手指衛生群はインフルエンザの家族内感染を減らす傾向が見られたとの報告があります。また、患者さんが発症してから36時間以内にマスク着用+手指衛生を実施した場合、コントール群と比較して家庭内感染が有意に低下したとの報告もされています2)

  現段階で、マスク着用のみで、かぜやインフルエンザなどの感染予防効果を調査した報告は少なく、マスク着用単独およびマスクの種類による予防効果は明確ではありません。

 また、世界保健機関(WHO)は2020年2月4日、新型コロナウイルスについて、必ずしもマスク着用は感染予防にはならず、手洗いの方が効果的だと発表しています。一方でウイルスに感染した人は、流行を広げないためにマスクをすべきだと指摘しています。

――薬局には様々な感染症の患者さんが来局し、中には不顕性の患者さんが来局する可能性も考えられます。そのような患者さんと至近距離で向き合い、服薬指導を行うことも多いかと思いますが、薬剤師はマスクを着用すべきなのでしょうか。

 薬局やドラッグストアにおける薬剤師のマスク着用については、様々な考え方があると思います。近隣に医師の専門が呼吸器科のクリックがあれば、冬場はインフルエンザの患者さんが多く来局します。イナビル (一般名ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)などの吸入指導の際は至近距離での指導になり、患児などではむせて咳込んだりすることもあるため、マスクなどによる飛沫予防策を行う必要があるでしょう。

 しかし、マスクを着用すると声がこもってしまうため服薬指導に影響が出たり、薬剤師の表情が隠れてしまうため、患者さんの安心感や信頼感を得にくいなどの弊害もあります。そのため、薬剤師のマスク着用を禁止している薬局もあると聞きます。

 薬局薬剤師のマスク着用について、73人(平均年齢57.7歳)を対象として検討したところ、服薬指導時に患者さんの相談行動を妨げる要因となると報告されています。特に、マスクによる予防を行わない患者さん、マスクを着用した薬剤師を消極的だと感じる患者さん、65歳以下の患者さんは、マスク着用により相談意思に影響を受け易い傾向があることも報告されています3)

 このように、薬剤師のマスク着用についてはメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが正しいといったことはないと思います。近隣にある診療科や処方箋応需内容によって、それぞれの薬局、個々の薬剤師で考え方が違ってくるでしょう。

 私は感染予防として、手指衛生が最も重要であることを強調したいです。これは薬局薬剤師はもちろん、その他の医療従事者、一般の人ともにです。感染予防はマスク着用のみで過信せず、手指衛生も併せて複合的に行うことが重要です。

――一般の人は手指衛生を意識していると感じていますか。

 スーパーや病院、ショッピングモールなど公共の場に消毒薬が通年置かれていますが、使用している人はほとんど見掛けません。ただ、新型コロナウイルスに関する報道がされるようになってからは、消毒薬を使用している人を頻回に見るようになりました。しかし、まだまだ多くの人は、マスクをしていれば安心だと勘違いしているように思います。そして、手洗いとともに、体の抵抗力を高めるために十分な休養とバランスの取れた栄養摂取を日ごろから心掛けたいですね。

 現在、マスクや消毒用アルコール製剤が医療機関にも供給されなくなっているとの報道を目にしました。薬局において、より一層、手指衛生の啓蒙に力を入れていかなければならないと感じています。

 当薬局では、資料などのツールを使用して手指衛生の重要性を積極的に啓発しています。一般の人にきちんと消毒方法や、手洗い方法を指導するためにも、薬剤師は日常的に手指衛生に気を付けていなければなりません。当薬局では、薬剤師や事務スタッフの意識向上を目的として、蛍光法を用いた手洗い実習などの参加型講習会を実施してきました。

 ただ、薬局では病院と同様の感染対策を行うことは困難なので、地域で感染拡大を防ぐためにも、病院と連携して情報交換や勉強会を実施することが大切だと感じています。

 私は、2009年に新型インフルエンザが流行した際にも、今回と同じような状況を経験しました。しかし、10年以上経つと医療従事者も一般の人も危機意識は薄れてしまいます。当薬局では、毎年ではないですがサージカルマスク、ガウンおよびグローブの着脱、N95マスクを装着してのフィッテイングテストなどを実施しています。今回を機に、改めて感染対策について見直し、日常的に手指衛生などの予防を行うことの重要性を再認識してほしいと思います。

中国の大学病院や研究機関が、新型コロナウイルス(2019-nCoV)への感染が認められた患者や肺炎を起こした患者を対象に、臨床試験を相次いでスタートさせている。使用されている薬剤は抗HIV薬などに混じり、「ゾフルーザ」(塩野義製薬の抗インフルエンザ薬)や「アビガン」(富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬)と同成分の薬剤も含まれる。日経バイオテクは中国で進行中の臨床試験24本を全て詳細に調査した(2020年2月4日にアップデート)。臨床試験の中には3カ月以内に終了を予定しているものもあり、結果が公表されるかどうか、どのような結果が出るかも注目される。

 日経バイオテクは、米国と欧州、そして中国の臨床試験登録システム(ClinicalTrials.gov/Chinese Clinical Trial Registry/EU Clinical Trials Register)を対象に調査を実施。2月4日の昼時点までに米国と中国の臨床試験登録システムに、新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連の患者を対象に介入を行う臨床試験が計24本、登録されていることが明らかになった(診断技術の臨床試験は除く)。

 そのうち、伝統的な中国医学(Traditional Chinese Medicine:TCM)を施す臨床試験や、中国でインフルエンザに対して広く使われている「LianHua QingWen capsule(LQC)」を投与する臨床試験を除いた、計9本の臨床試験について詳細に分析した(表1)。TCMを施す臨床試験は介入の詳細が明らかではなく、LQCは日本では臨床現場で使われていないためだ。


表1 中国で新型コロナウイルスの患者を対象に実施されている9本の臨床試験(日経バイオテク作成)
(画像をクリックすると拡大します)

SARSやMERSに効いた薬を相次いで投与

 いずれの臨床試験も、大学病院や研究機関が研究費を拠出して実施している。そのデザインは様々だが、介入群に投与する薬剤として最も多かったのは、リトナビルとロピナビルの配合薬だった。ロピナビルは、HIVのプロテアーゼ活性を阻害して、感染性のある成熟したHIVの産生を抑制する作用機序を有する。また、リトナビルは、薬物代謝酵素のシトクロムP450(CYP)3Aにロピナビルが代謝されるのを競合的に阻害し、ロピナビルの血中濃度を上昇させる役割を担う。米国や日本では、米AbbVie社の抗HIV薬「カレトラ」(ロピナビル・リトナビル配合)として知られているもので、一部報道では、AbbVie社も臨床試験で投与されていることを認めている。

 リトナビルとロピナビルの併用療法は、過去にSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス(SARS-CoV)に感染した患者への効果が示唆されており、サウジアラビアではMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス(MERS-CoV)に感染した患者を対象に、ロピナビルとリトナビル、インターフェロンβ-1bを併用する臨床試験も実施されていることなどから、新型コロナウイルスに対する臨床試験にも用いられているとみられる。

 臨床試験の中には、抗インフルエンザ薬を投与するものも1本あった。具体的には、新型コロナウイルスへの感染が認められ、肺炎を起こした患者を3群に割り付け、バロキサビル マルボキシル、または、ファビピラビル、または、リトナビルとロピナビルの併用療法を投与するというもの。バロキサビル マルボキシルは、日本では、塩野義製薬の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」として、ファビピラビルは、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬「アビガン」(ファビピラビル)として知られている。

 さらに、ステロイドのメチルプレドニゾロンを投与する臨床試験もある。具体的には、新型コロナウイルスへの感染が認められた患者を2群に割り付け、標準療法にメチルプレドニゾロンを上乗せした治療か、標準療法を実施するというもの。ただし、SARSやMERSでの経験から、ステロイド投与には予後を改善する効果がないことや、ウイルス排除を遅くすることなどが示唆されており、定期的な全身投与には否定的な見方もある。