藤崎 慎吾
ハイドゥナン (上)
藤崎 慎吾
ハイドゥナン (下)

与那国島を舞台にして19世紀初頭の伝統で幕を開け、21世紀の地球規模の地殻変動、木星の衛星エウロパの生命存在の痕跡と壮大な物語が展開します。
19歳の共感覚の学生伊波岳志と霊能者22歳の後間柚を軸に「隠れマッドサイエンティスツ」が活躍します。
与那国の風土と科学的な描写がうまくミックスされています。
深海での戦いもディテールがよく描けている感じがしました。
上下巻合わせて1,000ページ近くの大著に様々な要素が詰め込まれているので、読むのに骨が折れるところもありますが、読みがいがありました。

恩田 陸
ネクロポリス 上      
恩田 陸
ネクロポリス 下
緻密に計算されて組み立てられているファンタジーの世界です。
日本と英国の影響を受けたV.ファーにある「アナザーヒル」。
「ヒガン」で起こる死者と生者の交わりと不思議な出来事を描き、ミステリーとファンタジーを融合させた作品となっています。
上下合わせて800ページくらいの作品ですが、登場人物がそれぞれ魅力的で、ストーリー展開も面白くて一気に読めます。
不思議な世界の中でのミステリーですが、結末は論理的に完結しています。
奥田 英朗
サウス・バウンド

元過激派の父親と家族を小学生の息子の視点で描いた作品です。
東京編と沖縄編で計500ページ以上の長編です。
父親も魅力的ですが、あっさり喫茶店をたたんで沖縄に行ってはじけてしまう母親もまた魅力的です。
年齢的には、ぼくと同じぐらいなはずなので、その頃は過激派というのはもう下火だったのですが、そういう人たちもまだ残っていた時代ではありました。
東京編では、屁理屈ばかり言って稼ぎのない困った親父ですが、沖縄に行ってからはヒーローになっていきます。
いじめや環境問題、教育問題などいろいろな要素も入っているので、下手をすると暗くなったり理屈っぽくなったりしてしまいますが、楽しく読めました。

朱川 湊人
花まんま

大阪を舞台に主人公たちが少年時代を回顧するノスタルジックな雰囲気の短編集です。
それぞれ味わいがありますが、「摩訶不思議」のぐうたらな叔父の葬儀の話は特に好きです。
「人生はタコヤキやで」とうそぶいて最期も間抜けな死に方ですが、女性に愛されるキャラクターというのもわかる気がします。
作品はすべて、ありえない話なのですが、SFというよりも都市伝説のようなタッチで(この作者には「都市伝説セピア」というそのまんまの作品もありますね)昭和40年代の日本の雰囲気がうまく出ています。

古川 日出男
LOVE

古川日出男は苦手です。「アラビアの夜の種族」も途中で断念しました。
本書は、ぼくがよく歩き回っている、目黒、五反田、白金などを舞台として、異様に細かく街の描写をしているため読んでみました。
小説の中に出てくるコンビニや公園、細道など、すべて特定できるので、ぼくはそれを想像しながら読めたのですが、この地域を知らない人が楽しめるかどうかは疑問です。
少なくとも、ぼくはこの小説の舞台が葛飾・江戸川だったらまた途中で断念してました。

東野 圭吾
容疑者Xの献身

ミステリーの醍醐味が味わえます。
鮮やかなトリックだと思います。
作者も主人公の数学者並みの論理的思考の持ち主なんですね。
ただ、ラストは残念な展開でした。
法律と友情のどちらを選ぶべきか、ぼくの答えは別でした。
全般に登場人物の葛藤のような部分があまりうまく描けていない感じはするのですが、
そこまで描きこもうとすると本の厚さが2倍になってしまうのかもしれません。

リリー・フランキー
東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

今年一番泣けた小説です。
リリー・フランキーは雑誌のコラムなどを書く軽い作家だと思っていたので、本書が書評などで取り上げられてもなかなか読む気にはならなかったのですが…。
おじさんの心にぐっときます。
ぼくの母はまだ元気なので、親孝行をしなければ、と思ってしまいました。
全国のおじさんの親孝行心に火を点けたんでしょうね。

薬丸 岳
天使のナイフ

前半は少年犯罪の被害者家族の目線からのストーリー展開で、復讐の話?でも主人公はそういう性格ではないなぁ、と思いながら読んでいたのですが、中盤以降、どんでん返しの連続で、楽しめました。
江戸川乱歩賞にふさわしい、ミステリーらしいミステリーだと思います。

桂 望実
県庁の星

予想通りの展開で、意外性はありません。ステレオタイプな登場人物にストーリー展開でした。
映画化に期待します。「踊る大捜査線」でノンキャリ熱血刑事を演じた織田裕二が県庁キャリア、柴咲コウがパート店員というほうが楽しめそうです。

相場 英雄
デフォルト[債務不履行]

日銀のエリートによって死に追い込まれた飲み仲間のエコノミストの復讐のために、主人公の新聞記者とファンドマネジャー、ハッカーらが日銀をデフォルトに追い込むという話です。
経済小説は好きなのですが、復讐の方法も含めて、ちょっとご都合主義な感じがしました。
僥倖が重ならないとムリです。
70~80年代ロックの数々が出てくるところはおじさんにとっては懐かしいところですが。