奥田 英朗
ララピポ

自分の意思がない女、気が弱い男など雰囲気や勢いに流されてどうしょうもなくなってしまう人物たちの織り成す話です。
ちょっとずつヤバイ方向に向かい、最後はとんでもないことになるという久しぶりの「最悪」のテイストの作品です。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」も笑えるし、「サウス・バウンド」も悪くないですが、ぼくにとっては、この「最悪」テイストがいちばん奥田英朗らしい感じがします。

村上 春樹
東京奇譚集

大学に入った頃に「風の歌を聴け」が出て村上春樹のファンになったのですが、「ノルウェーの森」以降は読んでいませんでした。
ほんとに久しぶりに読んだ村上春樹なのですが、どうもぼくには合わないようです。

重松 清
その日のまえに

私たちの世代が昔を思い出しながら、家族との関係を考えてしまう、重松清らしい作品集です。
最初の短編のタイトルは「ひこうき雲」。タイトルだけで、いろいろな思い出が浮かんできます。
「朝日のあたる家」「潮騒」「ヒア・カムズ・ザ・サン」と続き、その後は「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」となります。
自分が、配偶者が、友人が、あと余命数ヶ月となったら、と考えてみるのもたまには必要かなと思います。
まずは、生命保険とがん保険の確認と遺言かなとは思いますが(苦笑)。
看護師に託して死後に夫に渡してもらった妻の手紙には、ちょっとほろっとしてしまいました。
うまいなぁと思います。

恩田 陸
図書室の海

恩田陸さん、「夜のピクニック」は懐かしく面白かったのですが…。

本書は10編を集めた短編集です。
巻末の解説にも書いてましたが、予告編特集のような感じでした。
恩田陸ファンの方には面白いと思いますが、そんなに熱心な読者でない私にとってはちょっと物足りなかったですね。

町田 康
東京飄然


町田康の小説は語感とリズム、それと妄想がどんどんエスカレートしていくところが魅力です。
本書は、飄然と旅に出た(といっても基本的に日帰り)作者のエッセイですが、当然ながら飄然とはまいりません。
エッセイ風の体裁なので、小説のように深く考えず、ただ楽しめます。

都電荒川線から飛鳥山、鶴岡八幡宮から江ノ島、このあたりまでは、紀行的な味わいもありますが、「梅田で串カツ」あたりから、かなり暴走していきます。
串カツ関連のこだわりは、東海林さだお的な味わいもあります。
「栄光のオランダ、フランドル絵画展」から「夜のサルビア」に続く飄然の旅は、むか~し読んだウッディ・アレンやカート・ヴォネガットを連想しました。
「ロック魂」高円寺への旅、ドクロのティーシャーツに皮ジャンパー(合皮)で仕上げとなりますが、更なる飄然の旅を読みたいものです。

主人公の少女「ほう」の純真さ、特に、後半の、幽閉されている幕府の罪人の「加賀殿」との交流には涙腺が緩んでしまいます。
女引手の「宇佐」を始め、他の登場人物も、みな心やさしい人ばかりですが、政治に翻弄され、挫折感を味わうことになります。ただ、悲しい物語ではなく、限界があるなかでいかに善く生きるか、が描かれており、読後感は爽やかです。
これまでの、江戸下町人情ものも素晴らしいのですが、別の味わいがあります。
舞台となる丸海藩は讃岐丸亀藩をモデルにしたもので、この地に馴染みのある私としては、「こんな気候だったかな?」と思う部分はあるのですが、それは小説としてはどうでもいいことですね。
孤宿の人 上
孤宿の人 下