スイミーの「いせえび」と「うなぎ」

絵本 スイミー をこどもと読んでた時、

 

スイミー「すいちゅうブルドーザーみたいな  いせえび……」


私 (あれ?絵はロブスターみたいだけど……?)


スイミー「うなぎ。 かおを  みる  ころには、  しっぽを  わすれてるほど  ながい」


私 (あれ?絵はウツボみたいだけど……?)


と気になりました。私がこどものころは何も思わなかったけど、そこから20年~30年生きてきて、いろいろなものを知った結果、世界を見る解像度が上がってたみたい。








スイミーの原著は英語


となると、本当にスイミーに出てくるのはロブスターなのか?ウツボなのか?を知りたいのが性。まずスイミーの原文を探ることに。


スイミーの原作は何語か?を知るために、まずレオ・レオニーさんがどこの国の人かを調べる。Wikipedia(英語)より、

Leo Lionni (May 5, 1910 – October 11, 1999) was an Italian-American writer and illustrator of children's books. Born in the Netherlands, he moved to Italy and lived there before moving to the United States in 1939, ……

オランダ生まれ、イタリア育ちのアメリカ人……とのことで、何語でもありえますね……。


いろいろ調べるとどうやらスイミーは英語版が初版みたい。同年にドイツ語とフランス語も刊行されてるもよう。


▽スイミーの派生については下記を参照

https://mehall39.wixsite.com/swimmy/locations


というわけで、以下では英語版とドイツ語版を見てみましょう。

(独語を選んだのは第二外国語だったから。読めないけど)


いせえび: 英語版・独語版では?


🇯🇵 すいちゅうブルドーザーみたいな  いせえび……


🇺🇸 a lobster, who walked about like a water-moving machine…


🇩🇪Dann sah Swimmy eine Art lebendenSchaufelbagger. 
Das war der Hummer.


日本語版スイミーの「いせえび」にあたるところは

英語版スイミーでも独語版スイミーでも「ロブスター」と呼んでいます(独語はGoogle翻訳さん曰く)


逆に伊勢海老は🇺🇸Japanese (spiny) lobster というらしいので、英語的な感覚では日本のロブスター=伊勢海老 ということらしいです。


うなぎ: 英語版・独語版では?


🇯🇵 うなぎ。 かおを  みる  ころには、  しっぽを  わすれてるほど  ながい


🇺🇸 an eel whose tail was almost too far away to remember…


🇩🇪 Jetzt nämlich begegnete er einem Aal,
der ihm unendlich lang erschien.
Als Swimmy endlich wild wedelnd am Kopf des Aales angekommen war, konnte er sich schon nicht mehr an die Schwanzspitze erinnern.


スイミーの英語版も独語版も日本語と同じくウナギと書いてます。

ウツボは🇺🇸Moray eel 🇩🇪Muräne らしいので、英語版はもしかするとウツボもウナギのうち(すもももももももものうち的な)……という可能性はあるかな?というとこですね。

スイミーの気持ちで

「いせえび」は元の英語版スイミーではロブスターで、

「うなぎ」は元の英語版スイミーでもウナギと書かれていたことがわかりました。


こうしてみると、

「日本語訳した当時にロブスターって浸透してなかったからその配慮では?」とか、「こどもが触れることのある単語に合わせたのでは?」とか大人の事情を考えてしまいますが、


私の中でいろいろと一周まわって

「スイミーは実際にそう思ったんだからそれでいいんじゃない?」と思うことになりました。


日本語版は日本のスイミーなので、大きなエビは全部伊勢海老。ロブスターなんて見たことないもん。絵からウツボと思う人もいるかもだけど、スイミーのこれまでの経験から、あれはうなぎの仲間と思ったんだよ。


ロブスターやウツボを知ってるお友達はそれをスイミーに教えてあげればいいし、さらに細かい種類が同定できる人はそれを教えてあげばいいし、学名を知ってればそれを教えてあげればいいんじゃないんでしょうか?


おわりに

スイミーのイセエビとウナギの正体が気になって、英語版やドイツ語版を調べてみました。


英語ではイセエビもロブスターの1部と表されたり、ウツボもウナギ(eel)の1部として表されたりというところはわかって、面白かったです。

(英語、海鮮系の単語の括りが雑なのでは……)


それ以外に言語による表現の違いも面白いなーと思いました。

とくにうなぎのところ。

※英語とドイツ語はGoogle翻訳のまま


🇯🇵「うなぎ。 かおを  みる  ころには、  しっぽを  わすれてるほど  ながい」


🇺🇸「尾が遠すぎて思い出せないウナギ…」


🇩🇪「今、彼はウナギに出会った、
それは彼にとって果てしなく長く感じられた。
スイミーが激しく体を振りながらついにウナギの頭にたどり着いたとき、彼はもうしっぽの先を思い出せなかった。」



各訳者さんによってそれぞれの言語に最適化されてるのだろうなと感じます。


私は日本人だからか、日本語の説明が長すぎず、短すぎず、 ちょうど良いなと感じます。

それともドイツ語くらい書いたほうが、スイミーの躍動感があってよいでしょうか?


人それぞれ、国によってもそれぞれ感じ方違うのかなと感じて面白いですね。


意味を整え、音を整え…、英語を直訳するだけではない、翻訳者の偉大さを感じます。こうやって日本で愛されるスイミーができあがってるのですね。