あなたの天皇、私の女王
東京オリンピックの年に生まれ、高度経済成長でギラギラした時代に小・中学校生活をし、バブルがどんどん膨らんでいくなかで高校・大学生活。バブルがはじけるギリギリで帰国して就職した。
ある意味、私は「昭和生まれで最も“アタリ”なコース」に乗れたラッキーな人間だ。
昭和の頃って、歌謡曲も洋楽もスカッとするような元気のいいものが多かったし、小説や映画にも元気があった。希望に溢れていて、毎日どんどん生活が良くなっていく実感がある……そんないい時代に青春を過ごせて本当に運が良かった。
一つだけ残念だったのは、昭和の天皇陛下が崩御なさったときにカナダ留学中で「外国のニュース」で知り得る範囲でしか「昭和の終焉」を体験できていないことだ。涙雨に煙る大喪の礼も、「平成」への改元も、もっと言えば、陛下のお加減が悪くなってからの「自粛ムード」とかも、全部後から聞いた話でしかない。
カナダでも「日本の天皇崩御」のニュースは大きく取り上げられ、ニュースや新聞も特集を組むほどだった。そうなると現地の日本人は質問攻めに合う。
「ヒロヒトのあとはアキヒトが継ぐの?」
「え、アキヒトって誰?」
日本人には皇太子殿下をファーストネームでお呼び申し上げる習慣がないので、ピンとこなかった。
「プリンセス・ミチコって、クリスチャンなんだって?」
「え? そんな話、聞いたことないよ。そもそも天皇家って神道のテッペンなのに、そんなことあり得るのか?」
どうやら、ご出身校の聖心女子大学が「ミッション系」と報道されたことで、カナダ人はピンポイントでそこに親近感を持ったらしい。やたらこの質問をされた。
そして一番多くて驚いたのが「あなたの天皇陛下、大変お気の毒なことでした。残念ですね」という挨拶だ。いやいやいや、うちの爺様が亡くなったわけじゃないからさ。
私はそれまで天皇陛下は「雲の上の存在」で「私の」とか「ウチの」とか考えたことはなかった。「英語だとそういう表現になるのか?」と思ったが、米国人はそうでもない。
カナダは特殊だ。今だに「英国連邦」の一員で、紙幣にもコインにも女王陛下、郵便局にも女王陛下の肖像画という「私の女王陛下」な国家なのだ。
今度の代変わりで、紙幣とかの意匠は変わるのだろうか? それはちょっと寂しいな。それこそ「あなたの女王様、本当に残念でしたね」という言葉がスッと出る雰囲気に違いない。
昭和と聞いて思い浮かぶのは?
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