「書くこと」で稼げるようになるまでの二択 | ぽてなまの~と 【ときどきADHD話】

ぽてなまの~と 【ときどきADHD話】

「なまいき」で「なまけもの」な「ぽてたろう」のノートです。
日常のあれこれや、その日考えたこと、そしてADHDや発達障害についての「あるある」などを書いてこうと思います。

 

「書くこと」で稼げるようになるまでの二択

 

自分がプロのライターとして働きながら、およそ15年、プロのライター養成講座で講師をしてきた。年に2期、半年のコースに30人ほどの受講者がくる。新聞や雑誌がどんなに衰退しようと「書くこと」を生業にしたい人はけっこう多いのだ。

 

なかには今就いている仕事のスキルアップのために来る人もいるので、全員がプロ志向ではない。それにしても、そこからプロとして稼げるようになるのは一握り、さらに10年以上のキャリアを積んでいけるのはごく少数だ。

 

見ていると「うまくいく」人には2つのパターンしかない。

 

  1. 書きたいことがあり、それ以外は書きたくない。軌道に乗るまでの資金はバイトの掛け持ちなど、別口で調達するタイプ
  2. とにかく書く仕事がしたいから、どんな仕事でも断らない。仕事が来た時、体を空けておきたいので、経済的に苦しくても「書くこと」以外のバイトは一切しないタイプ

 

1つめは、自分の専門分野や好きなジャンルがはっきりしている。たとえば、退職を考えている金融関係の古参社員、自伝を出したい起業家、旅の経験が豊富で「旅行記」にこだわるOL。一級建築士だが風水の知識が豊富で「他の人にこのジャンルの文章は書けない」といった自信がある。作家性が高いのだ。

 

もしこっちのタイプなら、「仕事がないのでラーメンの食レポも書きました」という話は、キャリアの足しにならない。編集者にナメられるだけだ。「私ならこういう記事が書ける」「こういう書籍が出せる」と、出版社にバンバン企画を出して、早く世に出るべきである。

 

2つめは、どんなにくだらない仕事でも、ジャンルがバラバラでもいいから「とにかく書く仕事をください」というタイプ。「これが書きたい」という大志はないが、書くことが好きで、それで飯が食いたいのだ。

 

●専門は勝手についてくる

後者は、スタート時点では「特に専門はありません」と言うが、好奇心が旺盛で「あれもこれも面白い」と嬉しそうに語るタイプが多い。

 

将来プロになったとき「専門がない」というのはデメリットなのだが、3年も雑食ライターでやっていると「この前の話に関連して」とか「この前の記事が面白かったから」とか、勝手に専門がついてくる。

 

私は後者の典型例だ。最初は「学長スピーチの文字起こし(録音を文字入力したもの)を受け取って、段落に切って、見出しを入れるだけ」という1件5000円の仕事でも大喜びで受けていた。ラーメン屋特集やおばけ屋敷特集など、千本ノックのような取材もやった。

 

英語ができるので、映画のプロモで来日した俳優や監督、作家、医師などのインタビューを足がかりに、海外取材を任されることも増えていった。

 

そのうち、英語の論文を原語で読めるところを買われて、5年目ぐらいからは医療・健康系の専門ライターで「あ、食品についても書くんですか?」みたいなポジションに落ち着いた。周囲から勝手に専門を決められちゃったような感じだ。

 

そこからは雑談の中で「歌舞伎、オペラ、バレエ大好き!」的なアピールをして、バレリーナのインタビューや歌舞伎座の舞台裏潜入ルポなど「ギャラもらっていいんですか?」な仕事でも声をかけてもらえるようになった。

 

●プロのライターに必要なのは文章力よりも…

プロのライターって、実は「文章がうまい」必要はほとんどない。必要なことがわかりやすく伝わる程度であれば全然問題ないのだ。正直なところ、アメブロを徘徊していると「この人はプロ顔負けだ」と思う書き手がゴロゴロいる。

 

一方、プロのライターとしてどうしても必要なのは「人の話を聞く」資質、「人から話を引き出す」資質の方だと思う。いわゆるコミュニケーション能力だ。どんなに文章がうまくても、旨いネタが揃っていなければ読み物として「商品」にはならない。

 

●書き手冥利に尽きること

仕事でお金をもらって書いているときは、正直なところ年賀状に「おめでとう」と書くのさえ億劫だった。そんな私が一銭にもならないブログを始めて一番感謝しているのは「読んでくれる人が確かに存在する」という手ごたえだ。

 

プロになって、電車の中などで通りすがりの人が「たまたま私が書いた記事を読んでいた」という経験は2回しかない。

 

健康雑誌のスタッフライターを10余年やっていて、私はずっと花粉症担当だった。全国で花粉症の人は、ここ数年増えて約2割。8割の人は花粉症の記事には興味がないからページも開かない。

 

発達障害全体だとちょっとわからないのだが、私が属するADHD族は全国民のほぼ1割だと言われている。9割の人にスルーされるテーマだ。

 

私のブログを読みにきてくれる人のなかには、当事者どころか「周囲にADHDは全くいない」という「9割側」の人がけっこう多い。しかも、そういう人が「いいね」を残してくれたりする。すごい応援されている気持ちになるし、勇気が沸く。これはブログならではの「書き手冥利」で、本当に本当に、心から感謝している。