エッフェル塔の日 東京タワーにはなかったもの | ぽてなまの~と 【ときどきADHD話】

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「なまいき」で「なまけもの」な「ぽてたろう」のノートです。
日常のあれこれや、その日考えたこと、そしてADHDや発達障害についての「あるある」などを書いてこうと思います。

今日はエッフェル塔の日 

東京タワーにはなかったもの

 

ADHDの人間にとって「社会人デビュー」、つまり最初の就職は高いハードルだ。私も例外ではなく、もがけばもがくほど会社内で「使えない社員」のレッテルが確定的になり、叱られ、バカにされ、「私ってこんなダメ人間だったっけ?」と腐る日々が続いてた。

 

会社から“おつかい”に出されるデザイン事務所が東京タワーの近くにあって、いつも根元からタワーを見上げ「私には才能があったはずだ」「今の会社でダメなら次へ進め」と自分に言い聞かせていた。

 

塔は根元から見上げた姿が一番力強く美しいと思う。

 

 

本格的に退社を考え始めた頃、広告のコピーライター養成講座やプロのライター養成セミナーなどに片っ端から参加し、なんとか「個性を外に出す」方法を見つけようと暗中模索していた。会社では残業もせず、社内のキャリアアップの足しにもならない講座に通う私は「才能シンドローム」と、物笑いのタネだった。

 

その頃通っていたコピーライター養成講座の会場が東京タワーの根元にあるビルの1室だった。定時で退社した後、疲れ切った体と気持ちひきずり、ライトアップされたタワーを見上げる。「今に見ていろ」と心に刻む。東京タワーは私の野心の象徴だったのだ。

 

これだけタワーにパワーをもらえるのだから「なにかお守りが欲しい」と考えた。希望はデスクの見える位置に飾っておけるスノー・グローブ。球形のガラスに水とチャームが入ったもので、振ると雪がふる、よくある土産物だ。これが、当時の東京タワーの隅から隅まで探しても見つからない。売店の人に聞いても「見たことがない」と言われ、あきらめていた。

 

それから約10年、初めてのパリは仕事の出張だった。私は件の会社を辞め、フリーランスのライターとして稼げるようになっていた。

取材の合間、時間のない中、現地のスタッフが凱旋門、オペラ座、ノートルダムと案内してくれる。といっても、車から降りもせず車窓からの「見るだけ」観光だ。

 

車が公園の角を曲がると、いきなり間近にエッフェル塔が姿を現した。

「そうだ、あそこにないだろうか」

ふと、そう思って停めてもらい、土産物店が並ぶ小路に走った。目指すスノーグローブは、いちばん垢ぬけない狭い店の一角に並んでいた。大小4種類あったのを全部買った。東京タワーに感じたギラギラの野心はなかったが、エッフェル塔には「かくありたい」と思わせる気品と洗練がある。

 

 

小さなエッフェル塔が閉じ込められたスノーグローブを揺らすと、パリの思い出と一緒に「このままでは終われなかった」あの頃の気持ちが舞い上がり、心がざわつく。

 

 

エッフェル塔、登ってみたい?

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