追悼特集「私と忌野清志郎」
「才能がないヤツは大学に行け！」
と、叫んだ高校時代
By三浦友和
三浦友和◆俳優
1952年生まれ。20歳のとき、宇津井健主演のドラマ『シークレット部隊』でデビュー。『赤いシリーズ』と呼ばれるドラマや主演映画が次々とヒット、2012年秋に紫綬褒章を受章。
都立日野高校で「同級生だった」と言っても、清志ちゃんと同じクラスになったことは一度もなかった。ただ、中央線の立川駅から多摩動物公園方面へ行く「バスに乗る」という通学ルートが一緒だった。といっても、彼はほとんど毎日遅刻だから遭遇率は低かったな。
一見、おかっぱ頭の華奢な少年だけど、中学時代に結成した「ＲＣサクセション」は、当時もうコンテストに出ていたりして一目置かれる存在だった。僕も別のバンドをやっていたので「こいつがその男か……」なんて思っていたんです。
何年生の文化祭だったかな、別の高校に進学していたＲＣのメンバーが日野高校に集まって、教室でゲリラライブをやった。生で彼の歌を聞いたのは、その時が初めてでした。
当時は学生のバンドなんて、プロのコピーがあたりまえだし、フォーク系のアコースティックギターは廃れつつあった。僕たちのバンドはエレキだったけど、ＲＣは「全部オリジナルなのか。アコギとベースだけ、マイクなしでこんなに迫力があるのか、凄いな」って驚きました。
その頃彼が言った「才能のないヤツは大学へ行け！」っていう言葉に衝撃を受けて人生が変わっちゃったんですね。進学率95％の高校なのに、大学を受験しなかった。僕も音楽で食べていけるんじゃないかと勘違いしちゃった。「清志ちゃんは天才の域なんだ、彼は選ばれた人間で自分は違うんだ」と気がつくまでにけっこう時間がかかりました。
ＲＣサクセションは高３の頃から「レコードを出すんだってさ」と騒がれて、出だしは良かったけれど、アコースティックからロックバンド全盛に変わる音楽業界の過渡期で「売れない」「食えない」という時代もありました。
「金がないから歯医者に行けない」って、前歯の抜けた顔でニヤっと笑っている清志ちゃんを見て、「これから、どうするんだろうな」って、ちょっと心配したり。
そうこうしている間に僕がドラマで俳優デビューすることになった。「若者＝長髪＋汚い服」という時代なのに、「こんなヤツはいないだろう？」っていうような七三分けのマジメなガードマン役なんですよ。
清志ちゃんは「七三分け？ お前なんかもう友達じゃないよ」とか言いながらも、ドラマは見てくれる。それで、たった一言しかない僕の台詞をうれしそうに何回も何回も繰り返して言うんですよ。僕も食えない時代の清志ちゃんを心配していたけど、彼も僕のことを心配していて、ホッとしたのかもしれないな。
彼らが渋谷の「屋根裏」っていうライブハウスで人気が出て、「とうとう武道館だってよ」って頃、「やっと時代が清志ちゃんに追いついたなぁ」って思っていました。
日野高校には「日野高ＯＢ展」っていう毎年開かれている美術展があるんです。もともとは「日野高美術部ＯＢ展」だったんですが、清志ちゃんを引っ張り出すために「美術部」を取っちゃった。彼は毎年絵を出していて、僕も陶芸の作品を出して、一緒に見に行ったりしていました。
清志ちゃんは、亡くなった年も作品を出していて、髪の毛が残っていない頭に帽子をかぶって、会場まで見に行っていた。前歯が欠けたときもそうだったけど、彼はそういうところでカッコつけたりしない「さらけ出し」タイプ。最後まで、全く隠し事のない男でした。
スローバラード / 忌野清志郎
<span style="color:#000000;">https://www.youtube.com/watch?v=gWvddWYG1O0</span>
※初期の音源です
「夜のヒットスタジオ」
タイマーズ（清志郎）生放送事故（いちばんトンガっていたころ）
<span style="color:#000000;">https://www.youtube.com/watch?v=4AlYVqbyWwU</span>
※古館一郎氏には取材を固く断られました。顛末を知りたい方はWiki↓