寺の境内に植えられていた『木賊』(とくさ・砥草)は西日を浴びて、
その鮮やかな深い緑色を一層か輝かせていました。
西日を浴びて輝く木賊
そのうちの数本に、
まるで「土筆」(つくし)にそっくりの「花」を咲かせていました。
木賊は土筆の仲間です。
木賊の花
「花」と書きましたが、
実際には花ではなく、6月から9月の中旬頃に出現する胞子※を出す
「胞子嚢穂」(ほうしのうすい)と呼ばれる器官です。(胞子葉群とも)
※コケ類、シダ類、菌類、藻類、原生生物など、雌雄に無関係で繁殖の役目をする生殖細胞
茎の黒い部分は、葉の落ちた痕跡。
木賊は「砥草」とも書いて、
ケイ酸塩を含む非常に硬くて粗い表面を持っているので、
木材などの工芸品の仕上げなどの研磨に使われています。
鎌倉武士に好まれたという、渋くて深みのある濃い緑色は魅力的です。
(鎌倉 山ノ内)
清少納言は「能因本※ 枕草子」の中で、
「とくさというものは、
かぜにふかれたらん音こそ、いかならんと思ひやられて、をかしけれ」
と、記しています。
残念ながら私は未だ、
風に吹かれて鳴るという、”木賊のささやき”を聴いたことがありません。
どのようなささやきなのでしょうか…。
※枕草子の写本の系統の一つ
「如意輪寺」(奈良・吉野山)の境内で見た木賊
木賊の真ん中では小僧さんと微笑んでいる蛙が耳を澄まして、
「木賊のささやき」を聴いているのでしょうか。