ヨーロッパの朝食で一番贅沢な飲み物は何だと思う?
グレープ・フルーツ、なんかじゃないよ。
何といっても奢(おご)りの頂上は『ミモザ』ということになる。
「ミモザ」というのは、シャンパンをオレンジ・ジュースで割ったものだ。
シャンパン、というのは嫌いな人が案外多いものだが、
「ミモザ」を作ってすすめると、
大概のシャンパン嫌いも、オヤ、という顔をして、
どんどんお代わりしたりなぞするようである。
わたくしは、飛行機に乗ったら、飲物は「ミモザ」ときめている。
シャンパンは何も一等※と限ったことはないのだ。
二等※だって、税無しの素敵に安いシャンパンが飲めるのです。
オレンジ・ジュースはタダだから、
自分で半々に割って、ま、気楽に召し上がって下さい。
※搭乗の座席で、現在ならファーストークラスやエコノミークラスなど。
ウン、シャンパンに関しては申し添えることがあった。
シャンパンの栓を、ポンと音を立てて抜くのは、
これは下品なことなのですね。
かすかにプスッという程度で抜くのが正しい。
パリに「マクシス」という超一流のレストランがある。
この「マクシス」のウェィターが、
シャンパンを、ポンと音を立てて抜いたら、
彼は即刻クビになるというからただごとではない。
―伊丹十三 著 「ヨーロッパ退屈日記」から要約・抜粋(1965年)―
あちこちで、『ミモザ』の花が満開になっています。
春爛漫の昨日、今日のような陽気の日には、
ミモザの優しく柔らかな甘い香りが心地よく流れて行きます。
イタリアでは、3月8日は「ミモザの日」だそうです。
男性から女性に「感謝」の気持ちを伝えるとともに
ミモザの花を贈る素敵な習慣があります。
この日の女性たちが、贈られたミモザの花を髪に挿したり、
服に飾ったりして街中を歩きます。
ミモザの甘い香りが漂わせながら‥‥‥。
ミモザを眺めながらミモザを飲むもよし、
ミモザを飲みながら、ミモザを眺めるもよし…。
ミモザは、ヨーロッパに春の訪れを知らせてくれる花なのです。