早春

―金子みすゞ―

 

 

飛んで来た 毬(まり)が、 あとから子供。

 

浮いている 凧(たこ)が、 海から汽笛。

 

 

 

 

飛んで来た 春が、 きょうの空 青さ。

 

浮いている こころ、 遠い月 白さ。

 

 

 

 

 

【金子みすゞ】

1903年(明治36年)、山口県大津郡仙崎村(現:長門市仙崎)に生まれる。

本名はテル。

大正末期から昭和の初めに活躍。

1930年(昭和5年)死去。享年26。

1982年(昭和57年)遺稿集が発見されて、世に知られることに。

「金子みすゞ全集」が刊行されたのは、没後半世紀を過ぎてからのことでした。