法華寺の隣り、と言ってもいいような近さにあるのが、
『海龍王寺』です。
法華寺とゆかりの深い光明皇后によって、
731年(天平3年)に創建されました。
開基は、唐に渡った留学僧の玄昉(げんぼう)。
『海龍王寺 本堂』
暴風雨の中、唐から日本に無事に帰り着いた僧・玄昉にあやかって、
旅行者や留学の安全祈願に訪れる人も多いと聞きました。
『五重小塔』(国宝)
創建時の遺構である西金堂(重文)に安置されているは、
高さ4.5mの「五重小塔」。
薬師寺の三重塔に様式が似ているなど、
当時の建築技法を知る重要な資料として国宝に指定されています。
ご本尊は、鎌倉時代作の『十一面観音立像』(重文)で、
光明皇后自らが刻んだと伝えられています。
『十一面観音立像』(重文)
金泥と極彩色に彩られた、きらびやかで装飾が際立つ十一面観音立像。
(高さ94センチ。 ネット画像から))
『不退寺』は809年(大同4年)、
平城(へいぜい)天皇が退位後に過ごし「萱(かや)の御所」を
孫の在原業平※(ありわらのなりひら)が「不退転法輪寺」として、
寺に改めたのが不退寺です。
「業平寺」と呼ばれることもあります。
※平安時代の歌人で六歌仙の一人。(825~880年)
『不退寺 山門』(重文)
寺号表には、「不退轉法輪寺」と刻まれています。
山門は、切妻造り本瓦の四脚門で鎌倉末期の建築。
境内はこじんまりとしていますが、
四季の花が絶えない「花の寺」としても知られています。
ご本尊は、『聖観世音菩薩立像』
『聖観世音菩薩立像』(重文)
木彫りの一本造りで、全身が胡粉※(ごふん)地に極彩色の花文装飾を施した、
ふくよかで端正な姿をしていました。
業平自作の像と伝えられています。(高さ190センチ)
※牡蠣(カキ)、ハマグリ、ホタテなどの貝殻から作られた白色顔料。
近接して建ち並ぶ、
法華寺の十一面観音立像(国宝)、海龍王寺の十一面観音立像(重文)、
不退寺の聖観世音菩薩立像(重文)は、
「佐保路の三観音」と呼ばれています。