柳生街道の入り口、忍辱山『円成寺』(にんにくせん・えんじょうじ)

バスで行くのは本数が極端に少ないので注意が必要です、

特に帰りの時間には。

京都から近鉄奈良駅で降りて、

12時53分のバスで40分、円成寺へ。

バスを降りて最初に確認したことは、帰りのバスの時間です。

もう、16時台と17時台(最終)に1本づつしかありません。

万が一にも乗り遅れたら……。

道は一本道ですが、とても奈良市内まで歩いて帰れる距離ではありません。

 

寺号標の立つ坂を降りていくと、正面に浄土式庭園の池の対岸に

静謐な雰囲気漂う「楼門」が浮かび上がって見えます。(楼門は通行不可)

 

『楼門』(重文)

 

本堂前から見た楼門

優れた細工が施され、眺めていると無限の時が流れて行くようです。

1466年(文正元年)に兵火で焼失、1468年(応仁2年)再建。

 

 

『円成寺 本堂』(重文)

葺き替えられたばかりの屋根は、

なだらかに、のびやかに美しい弧を描いています。

本堂内部の柱にはかすれてはいますが、

楽器を打ち鳴らしながら踊っているような、

二十五菩薩来迎図が描かれています。

本堂の屋根は、

”妻”を正面に向けた、あまり見かけない造りになっています。

ご本尊は、阿弥陀如来。

 

本堂入り口の階段の左右は、

まるで舞台でもあるかのように床が張り出しています。

「舞台付寝殿造り」という、お寺としては珍しい造りになっています。

 

 

本堂の東側には「春日堂」「白山堂」の、

まるでミニチュアのような”可愛らしい”社殿が祀られています。

 

『春日堂(左)と白山堂』(国宝)

1228年(安貞2年)、春日社造営時に春日社神主の藤原時貞から拝領。

日本最古の春日造りの社殿と言われています。

2年前に修理されたばかりのようで、

桧皮葺きの屋根も朱塗りの社殿もピカピカでした。

 

『宇賀神本殿』(重文)

春日堂と白山堂の隣りには、

覆屋に守られて祀られているのが「宇賀神本殿」

農耕や書道の神様としての信仰を集めています。

春日社造りの向拝※を唐破風にした社殿。

※屋根の中央が前面に張り出している部分で、入り口の階段上部に多く設けられる。

 

 

『大日如来坐像』(国宝)

運慶、20歳代の作とされている仏像。

過去に何度か「運慶展」で観たことがある仏像ですが、

現地で目の前で拝観できたことは感激でした。

冠をはじめ、多くの装飾品で飾られている大日如来坐像ですが、

”絶対的な仏”としての威厳を保つための装飾のようです。

(像高 98.8cm)

 

樹々に囲まれて、

葉の落ちる音までも聴こえてくるような気がする静かな円成寺、

「秋の紅葉もまた美しいだろうな…」

そんな思いを巡らしながら、帰りのバスを待っていました。