整備された林間コースを進む。心配された暑さはまったく感じられず、林の中は風が吹き抜けて、むしろ涼しいくらいだ。急ぎ足でさらに高度を上げていく。 

 

林間コースの合間に、木祖村の市街地が見下ろせる。先ほど降り立った藪原駅もよく見える。夏場なので木々の葉が伸びてしまい、こうした景色を望めるとは思いもしなかった。小休止して呼吸を整える。ここまで時間は順調だ。 

 

しばらく進むとそこには御嶽神社がある。参道の先には石の鳥居があるが、鳥居峠の名の由来はこの鳥居に由来するという。中山道は江戸時代に拓かれたと思われるが、この神社の歴史はそれ以上古いのに違いない。ただし、現在の鳥居は明治時代に築かれたもののようだ。 

 

この御嶽神社からは御嶽山が見えるという。薄っすらとではあるが確かにそれらしい頂が望める(写真)。10年前の噴火では多くの死者行方不明者を出す戦後最悪の火山被害となったが、今も山岳信仰の対象であり、鳥居峠に命名される前の古道も信者たちによって開拓されたと思われる。

 

御嶽神社から先は、緩やかな勾配を下っていく。峠はまだ先のようだが、一番高い場所はすでに越えているようだ。この付近には栃の木が群生していて大木が多い。木曽谷の名産にほう葉巻きがあるが、その葉とよく似ている。気がつかなかったが、ほう葉の木は登って来た藪原側の山の斜面に植生していたようだ。 

 

峠の山頂は、登山道から少し登った場所に位置するようだが、我々はもうそこには行かずに、このまま奈良井宿をめざすことにする。(写真/奈良井宿まで1.95㎞とある)

 

峠の茶屋を模した建物があり、そこで小休止する(写真)。もっと時間が掛かると踏んでいたが、ここまでおおよそ1時間20分でやって来た。もう時間内に奈良井宿にたどり着けるのは確実で、逆に早く着いてしまいそうだ。

 


中山道 鳥居峠越え Vol.4に続く