大所川発電所は、大正12年(1923)電気化学工業株式会社が同社青海工場に電力を供給する目的で運転を開始した。この2年前に創業した同工場にはその年に小滝川発電所も建造されている。平成27年(2015)同社の社名変更に伴い、デンカ株式会社になって管理している。(写真/建屋外観を写す) 

 

先ほど見学してきた取水堰から延長1635.2㍍(総延長2,300.3㍍)の導水路を流れ、縦16.67㍍、横4.55㍍、高さ4.85㍍の上部水槽から延長320.89㍍の水圧鉄管1条を流れ、コンクリート擁壁の中にあると思われるY分岐で2条に分かれる。  

 

大所川発電所は、有効落差146.36㍍を流れ落ち、2台の水車で発電機を回転させ最大出力9.800kW(以前は8,400kW)、常時出力3,300kWの電力を生む。(写真/創業当時のものと思われる門柱の銘板) 
 

 

発電所建屋の横の敷地には、かつて事務所や倉庫だったと思われる木造の建屋が点在する(写真)。以前は有人で管理されていたはずで、宿直業務もあったのかもしれない。 
 

 

発電所建屋を挟んだ反対側に変電設備がある。写真右の送電鉄塔はデンカ大網送電線No.5送電鉄塔。姫川右岸にある同社大網発電所から送電されている。それがこの変電設備で大所川発電所の電気と一緒になる。 

 

変電設備の横には大所送電線の送電鉄塔がある。「1号線」とあるが「2号線」は存在しない。この路線はNo.34送電鉄塔まで続き、この先にある同社小滝川発電所の電力と接続してデンカ青海工場をめざす。ちなみにデンカと黒部川電力の発電所の周波数は西日本側の60Hz。これも東日本側の電力会社に移管されなかった理由と思われる。 

 

■ 大峰峠の大所送電線>>>

国土地理院の地図に放水路は記載されていないが、水力ドットコムによると放水路の総延長は208.5㍍とある。垂直に流れ込めば、そんなに長い距離は必要ない。それではどこだ。そう考えている内に下流側に勢いよく放水している口があることを思い出した。過去の写真を探してもその口の写真が見つからないが、大糸線のために撮影した動画に、僅かに映っていた(写真上)。おそらくここが大所川発電所の放水口だと思われる。放水位標高は242.81㍍。 

 
【地図】 


国土地理院の地図で位置関係を整理してみよう。木地屋川取水堰は実際に現場を踏んでいないので推測ではあるが、おそらく間違いないだろう。ここから大所川取水堰の上流へ導水しているはずだ。JR大糸線平岩駅付近にはデンカの水力発電所が3基あるが、姫川の左岸は新潟県、右岸は長野県である。従って同社大網発電所と横川第二発電所は長野県小谷村に位置する。 
 
【参考文献】 
■ 一般社団法人日本化学工業協会
SDGs 事例集 デンカ㈱の事例: 自社工場向けの「水力発電」>>>
■ デンカ株式会社
環境保全 気候変動対策の推進>>>

 


大所川発電所 END