2022年8月11日(thu)

今回、初めて地熱発電所を紹介するが、今後、取り上げる機会は少ないと考え、とりあえず「ダム/水力発電」のカテゴリーで扱わさせていただくことをご承知願いたい。 


 

福島県奥会津に柳津西山地熱発電所はある。火山地帯の地下数㎞のところにあるマグマ溜りで温められた熱水を地下約1,500~2,600㍍から生産井で取り出し、約165℃の蒸気の圧力でタービンを回し発電している。(写真/発電に使用した水を冷やし蒸気を排出する集合型冷却塔) 

 

柳津西山地熱発電所は昭和61年(1986)東北電力と三井金属鉱業株式会社100%出資の子会社・奥会津地熱株式会社が共同調査を開始。平成4年(1992)電源開発調整審議会の承認を経て翌年着工し、平成7年(1995)運転開始している。(写真/タービンや発電機が設置されている本館)

 

こうして満を持して最大出力65,000kWで運転開始された柳津西山地熱発電所だったが、平成29年(2017)30,000kWに変更されている。発電所は無人で必要に応じて東北電力秋田火力発電所から遠隔操作されているが、管理は発電所近くに社屋を置く奥会津地熱が担っている。(写真/本館の入口にある銘板) 



柳津西山地熱発電所では、発電所へ導かれた蒸気でタービンを回すシングルフラッシュ方式という発電方式が用いられている。他にどんな方法があるのか、今の私の知識ではおぼつかないが、こうしたタービンなどの機器を設置すると当然、騒音が発生する。ここは山の中にあるからあまり問題ないと思うが、低騒音型の機械を採用するなど工夫がなされている。(写真/65,000kWを出力していたタービンが野外に展示されている) 

 

発電所にはPR館が併設されていて、地熱発電所の仕組みを学ぶことができる。以前の東京電力テプコ館のように制服を着用した女性がいて、質問にも応えてくれる。しかし、雪深い会津地方の故、12月末から3月末までは休館するようだ。

 

 

PR館にある地下の模型(写真)。発電所近隣には自噴型の温泉が立地しているが、熱水をくみ上げたり還元する地層は温泉の層よりも深いため温泉に悪影響を与えない。地熱発電所を計画すると必ず温泉の関係者から心配の声が上がるようだが、熱源はバッティングすることはないと繰り返し説明している。 

 

 

使用後の蒸気は「復水器」で凝縮し温水にして冷却塔へ送られる。再び復水器の冷却水として循環使用される。発電で使用された熱水や冷却排水は、還元井により地下深部へ戻される。(写真/敷地の近くでは、剥き出しの輸送管がみられる)


 

蒸気に含まれる非凝縮性ガスは集合型冷却塔から空気と一緒に拡散し排気している。柳津西山地熱発電所は、火山性ガスにより単位電力量あたりのCO2排出量が比較的大きいのだという。地熱発電は再生可能エネルギーのホープだが、こうした面もあるのだと理解する。

 

 

発電された電力は、東北電力ネットワーク柳津西山線(仮称)No.1送電鉄塔(写真左)から同湯谷川線に接続している。当たり前のことだが、送電線は水力発電であれ地熱発電であれ、関係なく電気を運んでいく。

石炭・石油・LNG(液化天然ガス)といった化石燃料を必要としない100%国産で賄える地熱発電は再生可能エネルギーの注目株だ。地熱資源量は2,347万kWが見込まれるとされるが、現在は2.2%が発電されているに過ぎない。地熱発電が、なぜ進まないのか疑問に思って書籍にもふれた。しかし、最近、地熱発電のことは以前より報じられるようになってきている。11月30日には、中部電力グループが東芝グループと組んで、初めて手掛けた中尾地熱発電所を、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷で運転開始している。今後の行方が気になる。